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いつのまにか、懐かれました。懐かれた以上は、私が守ります。  作者: 水無月 あん


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13話 1か月後

よろしくお願いします!

そして、ルドが従者になって1か月がたった。

今や、ルドのいなかった生活を忘れるくらい、ルドのお世話に慣れきってしまっている私…。


今日は、仕事がお休みのアール兄様。

護衛のみんなと一緒に訓練をするというので、混ぜてもらった。


訓練中、そばで控えているルド。


ふと、ルドを見ると、いつも目があう。

もしかして、ずっと私を見ているのかな…?

何がおもしろいんだろう? よくわからないけれど、私を見る大きな目がきらきらしている。


そして、訓練を終えたとたん、私のところに、ルドがすっとんできた。


「お疲れ様です」


そう言って、いつものように、ふっかふかのタオルを差し出してくれる。

汗のすいとりもよく、肌触りがすごい。

シュバイツ商会おすすめの一品だそう。


「それ、いいなあ。ルド、俺にも!」

アール兄様や護衛のみんなが、わいわいとルドに声をかける。


すると、素早く、私の背後にまわったルド。


「こら、ルドに一斉に近づくのはやめてって言ってるでしょ! はい、散って散って! ルドを怖がらせないで」

と、みんなに注意する。


ルドは、私を盾にするようにして言った。


「アール様や他の皆様には、そちらのボックスに用意してあります。よかったら、どうぞ…」

そう言って、私の背後から手だけだして、ベンチのほうを指し示す。


ルドが手で示した先には、タオルと飲み物が入ったボックスが用意されていた。


みんながわらわらとボックスにむらがっていく。


私は振り向いて、ルドの顔をのぞきこんだ。

「大丈夫?」


ルドはこくこくとうなずく。顔色は悪くない。


「すみません。ご心配かけて…。皆さんにはだいぶ慣れてきました。怖くなるような色の人は誰もいませんし」

と、申し訳なさそうに言うルド。


「なら、良かった。みんないい人たちだから、ゆっくり慣れていけばいいからね」

と、声をかけた。


ルドは、訓練の場で、みんなに一斉に話しかけられて、気持ちが悪くなったことがあった。


ルドが言うには、護衛の人たちは、明るく力強い色をまとっている。

怖くはないけれど、みんながいっぺんに集まってきたから、色があふれて、目がちかちかしたそう。

それで、気持ちが悪くなったみたい。


屋敷で働く人たちには、ルド本人の了承を得て、ルドの事情を話している。

だから、みんな、一斉に話しかけたりしないように、気づかってくれている。


なのに、アール兄様も護衛のみんなも、ルドを見ると、どうしてもかまいたくなるらしい。


「ルドは、懐かない小動物みたいなんだよな。どうにかして手懐けたくなるというか…」

そう語ったのは、アール兄様。


「なんか、小さい生きものみたいで、かわいいんです。俺、小動物が好きだし、かまいたくなるんですよね…」

と語ったのは、護衛のジル。


2人の意見に、うなずく護衛のみんな。


その言葉通り、逃げる小動物に、近寄りたがる大男たち。それを追い払う私。

という図が、ここ最近、訓練の場で繰り広げられる光景になってきた。


アール兄様が私の背後にいるルドに向かって、タオルを手に声をかけた。


「いつもタオルや飲み物を用意してくれて、ありがとうな、ルド。すごく助かる…。だが、なんというか、マチルダのタオルとの差がすごいな。そっちは、すごいふかふかで、こっちは薄っぺらいぞ…」


確かにね…。見ただけで差があることがわかるよね。


ルドは、かぼそい声で言った。

「すみません…。でも、ぼくはマチルダ様の従者ですから。皆様はついでです…」


ブハっとふきだすアール兄様。


「ついでって…。そこだけ、はっきりしすぎだろ?」

皆も一斉に笑い出す。


その薄っぺらいタオルで汗をふきながら、アール兄様が、私を不思議そうに見た。


「そういえば、マチルダ…。最近、赤色が好きになったのか?」


「え? 赤色? 急になんで、そんなこと聞くの?」

意味のわからない質問に、私は、とまどいながら聞き返した。


「いや、だって、…。こうして、マチルダを全体的に見ると、急に赤色の比率が目立ってきたというか…。ほら、リボンも赤だし、そこに置いてる赤いかばんも、マチルダのだろ? それに、シャツのボタンも赤になってるし…。ほら、今、ルドから渡されたタオルも赤だ! 俺たちのは白のタオルなのに」


あ、ほんとだ…。言われてみれば、私自身も赤色を目にすることが多いような…。


「でも、これ、全部ルドが用意してくれたものばかりだよ。そっか、ルドは赤色が好きなんだね。ルドの髪の色と一緒だしね。うん、きれいな色だもんね。好きなのもわかるよ、ルド」

そうルドに向かって言うと、嬉しそうに微笑み返された。


「へえ、ルドが用意したものか…。ふーん…」

なんだか、妙な顔をするアール兄様。


と、その時、お父様の姿が見えた。

あれ? 今日は、訓練の場に来ないと聞いていたけれど、どうしたのかな?


「みんな、注目してくれ!」

お父様の声が響いた。



読んでくださった方、ありがとうございます!


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