第99話 勇者。占います。
☆☆☆VSジエイミ
なんでジエイミまで占いに来てるんだよ! 一番まずいじゃん!
「……!」
メルは咄嗟の判断でローブに入り込んだ。
「(ちょっと! 何してんだよ! くすぐったいから! 脇腹ダメ!)」
周囲から見られていないことを利用して後ろから抱き着かれる。
「(なんかビドちゃんだった頃思い出すね……懐かしいな。昔は立場が逆だったけど♪)」
なんで緊急事態なのに思い出浸ってんだこいつ。言われてみれば最初に出会った時はこんな感じのことがあったな。一人芝居だったのだけど。
「あ、あの……占っていただけますでしょうか……」
ローブで自分達の姿はバレていないようだ。声を変えるのは得意だ……だけど、バレたら気まずすぎる。
「はい! 何のお悩みですか?」
「……あれ、この声どこかで聞いたことがあります……」
え、なんで気付くの? 結構声色変えたつもりだったけど……やばいやばい!
「(私がやる!)」
後ろに隠れているメルにとんとんと背中を叩かれる。
「(頼むぞメル! いけぇ!)」
アイコンタクトでメルに切り替えた。
「気のせいです」
「あれ、今声変わった気がしますね、女性の方でしたか……」
「最近声変りがひどくて、それで一体何のご相談ですか?」
「あ、そうですか……その」
あ、信じてくれた。ジエイミめちゃ素直だ。
「私の悩みは恋愛相談なのですが……」
「「!?」」
なんて最悪なタイミングだ。まぁジエイミの悩みなんてそれしかないと思っていたが……これを自分が聞くのは違う気もするし……恥ずかしい。
「(やっぱとんずらしないか、流石にこれはやばいだろ!)」
メルに合図を送る。しかし無視された。
「(ふふふ……よし……チャンスだ)」
不敵な笑みを浮かべる……あっこいつ……もしかして!
「私にはお慕いしている人がいます。その方はとても優しくて、それでいて非力で……そして可愛くて……かっこよくて……とにかく素敵な人です」
照れる。
「……それほど素敵な人であるが故にライバルもいまして……」
本人がいないと思っているが、目の前にいるんだよなぁ。ライバルの方も。
恐らくこの後メルが取る行動は一つだ。猿でも分かる。だから――
「――今すぐ諦め――びゅっ! ぶば! ぴゃああああああああ!」
メルの鼻に指を突っ込んだ。これは強さとか関係なく普通にむずむずする。
しばらくメルは立ち直れないだろう。結構奥まで突っ込んだし。
「ど、どうかしましたか? 占い師さん?」
「持病が悪化しまして……どうぞ続けてください」「げほげほ!」
このままではメルがとんでもないことを言いそうなので自分が喋ることにした。
「あれ声がまた変わって……それどころか二重で声が」
「持病で声変りが激しくて~声変り病なんですよ~」「げほげほ!」
高音ビブラートで喋る。一言一言声を変えて喋るしかない。
相変わらずメルは咽ている。
「そうですか……ずっとせき込んで大丈夫ですか?」「げほげほげほ!」
流石に違和感を覚えている。
「ドラミングというモノがありまして『リズムを刻む』ということは、他人の考えを共有するという点で効果的なのですよ」「げほげほ!」
「これは占っている時に出る副作用みたいなものですから気にしないでください。それに『咳き込む』というのは占い繁盛の『席混む』と掛け合わせておりまして、とても縁起が良いモノなのですよ」「げほげほ!」
多少無理がある言い訳をした。
「わ、分かりました」「げほ!」
ジエイミ。それでいいのかよ……後いつまで咳込んでるんだよ、ワザとだろ。
「さて、あなたが抱えている悩みですが、問題点が見つかりました」「げほ!」
「問題点……?」「げほげほげほ!」
「まず、恋愛に関する問題は相手の理解不足から始まります……」
とりあえず、一般的なことを言うか。
「相手の理解不足……ですか」「げほげほ!」
咳のせいで声が聞き取りずらい。
「(さすがにワザとやってるだろ)」
「(バレたか)」
メルは流石に黙った。これでようやく普通に占えるな。




