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第97話 占い師。なりました!

☆☆☆お悩み相談


かくして自分は占い師の真似事をしている。


女性は重たい口を開いた。


「彼の浮気が発覚しまして……」


「――別れるべきね」


メルが即答する。君関係なくね?


「大体。一人の女性に絞れない時点で男として最低でしょ! そうやって他の女にも優しくしているから浮気なんかすんのよ! どちらか選びなさいよ!」


……めちゃ耳が痛い。いや、これ遠回しに自分のこと言ってないか?


「……でも、彼とは結婚を前提でお付き合いをしていまし――」


「――別れた方がいい! もしその後結婚しても女遊びやめなかったらどうするの? 傷は浅いうちに他の人を見つけるのがいいよ!」


だからなんでお前が答えてんだよ……


「で、ですが……」


メルが喋ろうとしたところを自分が制止する。


「……あなたは、ここに来たということは悩んでいるということですね? 別れるべきなのか、このまま結婚するべきか」


「はい」


「……彼の浮気はどうして発覚したのですか? 詳しく聞かせてください」


すると、女性は語る。


彼は心の優しい青年であり、いつも誰かを助けるために動いていたそうだ。まぁ私情が挟んであるので誇張している可能性もあるが。


ある日、暴漢に絡まれているところを助けられたことがきっかけに、交際は始まったらしい。異世界ってやっぱそういうのあるんだな。自分とは無縁だけど。


普段からとても仲の良い恋人同士であったが先日、彼が別の女性と酒屋から出るところを目撃していたそうだ。そのまま彼は泥酔した女性と宿屋へ入っていく。


彼女はそのショックで自宅へと帰宅してしまったそうだ。


彼は少し後に帰宅しこのことを問い詰めても『酔っていた女性を介抱しただけ』というあからさまな言い訳をしていたそうだ。


彼とは喧嘩になり、家を飛び出して数日間会っていないらしい。


表情を見るに明らかによりを戻したい空気が漂っている。いや、これは浮気が悩みではない可能性もあるな。


「なるほど……辛かったのですね」


「はい、ほんとに苦しくて……それで私はどうすれば……」


「まず、疑うのは、彼が本当に浮気をしていたかどうか、そこから考える必要があります……あなたは彼とその女性が宿屋に入ったところしか見ていないのですよね?」


「いや、百パー黒よ。大体酔った女を宿屋に連れ込んだのなら、もう浮気ですって言っているような――」


流石にうんざりする。


「――商売の邪魔すんなら帰ったれ!」


「はい。ごめんなさい。怒鳴られるの良い……」


メルはこういうの期待していたのかしょんぼりしながらもにやけていた。Mかよ。


「はい。ですが、それでもう浮気確定でしょう……あの人は誰にでも優しいから」


「……貴方は彼を優しい人と言いました。それならば、この可能性は考えなかったのですか? 『酔っていた女性を宿屋に連れて介抱しただけ』と」


「それは……」


「貴方の帰宅後すぐに彼は帰ってきたのですよね、浮気をしていた場合なら朝帰りだってあり得る。明らかに前提が間違っているんですよ。そこに矛盾を感じましたね……水晶がそう言ってます」


水晶を魔法で光らすと、表情が少し動く……あ、これは……大体分かったぞ。


「《《彼が本当は浮気していないことを知っていて私に相談しましたね?》》」


「……!」


図星であったようだ。


「え、どういうこと? 彼浮気していなかったの?」


メルは気付いていると思ったが……そうか、あんま興味ない相手のことだから深く考えていなかったんだな。


自分に対しては異常なくらい察しがいいのに。


「あなたは泥酔した女性に対し嫉妬心を抱いただけだ。彼が浮気をするはずがないと知っていて女性のことを問い詰めた。それはなぜか? あなたは『彼の優しさ』を独り占めしたかった。違いますか?」


「……はい」


「それを踏まえたうえで、あなたは彼と仲直りがしたいと……」


「流石は占い師です……全てお見通しというですね」


認めた。まぁインチキ占いなんだけどな。あくまで必要な判断材料から最適解を導いてるだけに過ぎない。


「まず、彼の魅力は誰にでも優しく振舞うことです。そういった心の素晴らしさをあなたは好きになったのですよね」


「はい。ですから……その優しさを私は一人占めしたいのです。どうすればいいのですか!」


知らねーよ。本人に直接聞け……とは言えないな。


「例えば彼が道端で血だらけで倒れている人を見つけました。助けなければその人は死んでしまいます」


たとえ話を持ち出すとしよう。


「はい」


「しかし、あなたとの約束で彼は急いで、その人を見捨てあなたのもとへ向かいました。そして、その人は見捨てたことにより死んでしまいます。ですが、目もくれません、あなただけに優しいのですから仕方がないですね」


「……!」


「道端で泣いている子供も、荷物を重たそうに持つ老人も、彼は助けません。その優しさは全てあなただけのものですから……」


「……それは、違い……」


「そんな《《あなたにだけ優しい彼》》を『好き』でいられますか? 誰にでも優しいというのは彼の魅力です……もしその魅力をあなたが拒むのなら、それは恋心の原点すら否定することと変わりありません」


「……じゃあ……どうすれば彼と……仲直りできるんですか!」


泣きだしそうになっていた。そんなに思い詰めていたのか?


「素直に伝えることですよ、喧嘩のいいところは仲直りができることです。一度気持ちをぶつけてまた繋がれば、より強い愛情に目覚めることでしょう」


「……そう、ですね……ありがとうございます。さすがは占い師です。彼ともう一度……仲直りしてみます!」


全然違うけど。


「あとはあなた次第です。占いというのは、数多廻る運命に対し『勇気』で一押しするためのお仕事ですから」


「ありがとうございました~~~!」


そういい女性はウキウキで帰っていった。



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