第91話 リアリティショーのクズ男
☆☆☆男として最低
「え、あ! え、エクシリオさん……え!? あわわわわわ!」
「あ、あっーそう言えば、この前描いた漫画なんだけど、あ、ああーっ! あの展開ないよね!」
その言葉にジエイミとメルは顔を赤くする。
特にジエイミは酷くて顔を押さえていた。
メルの方も露骨に話題を逸らしている。バレバレだよ……
正直言葉に出したくなかったが図星だ。空振りならとんでもない自意識過剰だろう。これで自分はもう後戻りはできない。
二人の好意気付いたと宣言したのだ。始まった。あとは進むだけである。
そこで緊迫した空気が変わり、予想にもしなかった発言で大衆もどよめいた。
「え? こいつらヒト族に恋してんの?」
「嘘?」「え、でも魔王と勇者を手にかけているこいつって何者……?」
誰だって、勇者と魔王が取り合う男について興味が湧くだろう。
それもこの世界では珍しい絶滅したはずの最弱種ヒト族だ。
かなり方向は変わってしまったものの、軌道修正はまだ間に合う。
「自分は勇者ではないし魔王でもない、だけど少なからず人間側と魔族側の事情を知っている」
「歴史とは所詮過去の遺物である。ここにいる皆は勇者と魔王の戦いを本で読み知ることで、その二つの本質を理解しているつもりになっていただけなのだ」
空気を掴むように演説を始める。
「なぜ勇者と魔王の戦いがここまで続いてきたのか、なぜ勇者と魔王が戦わなければならないのか! 考えたことはある者はいたか!」
この世界で当然のように扱われていた勇者と魔王。だけど、その争いには大きな理由があったはず。常識だったものが全て覆されるとすれば……
「世界が常識と信じていたものが実は違うことなんてよくあることだ。何しろ自分の存在が常識を覆している!」
聞くところによれば、ヒト族は絶滅したとされているらしい。
「誰かから語られた言葉で真実を信じるのは間違いだ。勇者とは何か? 魔王とは何か? それを決めるのは皆の心だろうに!」
「だから! これから起こることが全てだ。勇者と魔王の生き様の真実を知り、そして心で判断しろ!」
「「「……」」」
自分の意見に一同は驚嘆する。
つまり、これから起こる勇者と魔王の戦いを文面ではなく映像に残し公開するのだ。
場所は広場などが良いだろう。多くの民に勇者と魔王の物語を紡がせる。
「我々は殺し合いをしているんじゃない! 違った方法で決着をつければ良いんだ! 別のルールを提示する!」
言わなくてはならない……ジエイミに、メルに……クソみたいな一言を……
「二人には自分のハートを奪い合って貰う。自分を落とした奴が勝者だ!」
「「……え!?」」
割と最低な発言をしたと自覚している。どんだけ自意識過剰なんだよ……
彼女たちに自分を取り合えと言っているのだ。
これもリアリティショーのためだ……
「「「「うおおおお!」」」」」
一同も盛り上がりを見せた。
「「えええええ!」」
若い女性が感性の声を上げる。やはり他人の恋路に興味津々だ。
「めちゃ面白そうじゃない? そんな戦い?」
「でもこいつは女の敵だけどね……普通に最低だよ」
自分でも分かっている。生憎批判が自分に向かうのも計算済みだ。
「だから……二人とも、全力で自分を惚れさせてみろよ」
生きてて絶対に言うとは思わないことを叫ぶ。
「「「「ぶううううううう!」」」」
大衆はブーイングを飛ばす。そりゃそうだろう。
だが、この空気はとても気持ちの良いものだった。
広場の大衆は皆。自分の定義したリアリティショーに釘付けだ。
大ブーイングの中、最後に自分は叫ぶ。
「……自分は《《お前》》の存在に気づいたぞ! いつまでも《《お前》》の思い通りにはならない!」
ジエイミへのフォローもしておく。存在しない黒幕に対し、適当なことを言い放っておく。
黒幕なんて適当にでっち上げとけばどうにかなる。
「これが……自分の選択だ!」




