第89話 逆転の一手
☆☆☆解放から見えてくる景色
「……ご、ごめんなさい!」
ジエイミは気が動転していたことを反省し頭を下げる。
まだ痛みは残るが何とかジエイミの拘束を解除できた。
それほど本音が効いていたのだろうか……
だが、次だ……自分をこの状況に陥れた元凶のメルと対面する。
久々に怒鳴り散らしたせいか心がすっきりした。
逆切れというモノも案外悪くはない。
状況は最悪だ。だけどなんだろう。こうも清々しくなっているのは、
自分が最弱種であることが全員にバレて解放された感覚だ。
もう自分は強がる必要はないのだと。
気持ちに踏ん切りがついた。冷静になって見えてくることもあるのだ。
「ずっと騙していたのに、随分と都合のいいことを言うね……『君』はどうすることもできないよ」
「……自分が、この状況を想定していないとでも思ったか?」
虚勢を張る。もちろんメルにはお見通しだろう。
「あぁ~私にその虚勢は通じないって分からないの? 『君』もそこまで馬鹿じゃないよね」
「ああ、完全に出し抜かれたようだ。どうあがいても自分ではお前の思考を上回ることなど不可能だ」
「……」
メルは何も言わずに腕を組んで頷いた。
「――だから『お前が想定外の行動をしてくること』を想定していたさ」
「……どういうこと? 言ったもの勝ちでしょそんなものは、信じないよ」
流石に欺けないか。
「なぜ、今まで自分がアイドルや漫画を作ってきたのか? 分からなかったのか?」
「それはあなたに力がないから、それ以外で生き残る方法を模索した。つまりは娯楽。エンターテイメントを作り自分の居場所を探していたのでしょ?」
正解だ。やはり理解されている。
「自分はこの世界に無数のエンターテイメントを持ち込んだ。特に漫画の力は世界に影響を与えただろう。どれもが素晴らしい物語だ」
「それはそうね」
『あなたが作ったわけではない』とでも言いたそうな顔をしている。その通りだ。
「しかしそれは『作られた物語』だ。本当に存在するものじゃあない。フィクションだ」
「……?」
流石のメルもこの会話の意味に気づかないようだ。恐らく彼女の思考は加速しているだろう。
「本当のエンターテイメントはどうして生まれるのか知っているのか? 教えてやろう」
「……何が言いたいの。もう抗うのはやめて素直になろうよ」
やはり懸念があるか、メルは完全に自分の心を折ったつもりでいるだろう。
自分の人間性を掴んでいるとすれば、周りからの拒絶。そして、バレることを何より恐れていたジエイミからの拒絶はものすごいダメージになる。
それでも自分の心をへし折れるほど、彼女に心を理解されているつもりはない!
やけくそ作戦だ。もう自分でもどう転ぶかわからない。
「大衆よ! なぜ物語に焦がれるか! なぜ楽しいと! 面白いと感じるのか!」
誰も答えようとしない。
「それはリアリティだ。君たちは『フィクション』の中にリアリティを感じ、己が体験したかのように引き込まれていく」
これには自分でも勇気がいる。
「ならば、もしそれが、『フィクション』ではなく、『ノンフィクション』だとしたら……その興奮はどれほどのものになるか? 想像してみるといい!」
「「「「「―――――!」」」」」
大衆の空気はこっちに向く。誰だって新しいものに対する誘発は考えていただろう。
「え……何をするつもり……? ダメよ! もう君は詰みなの! これ以上どうあがいたって……悪くなるだけだよ!」
お前がこの状況を作り出したというのに、何を白々しい!
「ダメ! 彼の言葉を聞いてはダメ! 嘘しか言わないんだよ! 信じちゃダメだって!」
今から言うことは恐らく彼女の知識にないことだ。だから、必ず彼女の計画に綻びが生まれる。
自分はエンターテイナー……自分はエンターテイナー。何度も脳裏に言い聞かせる。
この最悪な状況だって利用する。全てだ……そうしないとメルを出し抜くことは不可能だ……!
「もし、『勇者』と『魔王』の『リアリティショー』がここにあるとすれば!」
そう、元居た世界で一大ブームを引き起こしているアレだ。
「「「「リアリティショー?」」」」




