表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/160

第87話 最弱を知りたい

☆☆☆最弱の理由


「「「「「――――――!」」」」」


『ヒト族』であるという事実に今日一番周囲は騒然とした。


『人間族』ではなく『ヒト族』というのはどういう意味だ。


大衆は自分を見る目が変わる。まるで希少品を見るような顔だ。


「ヒト族……?」「え、あのヒト族か……?」「そんなのいるのか?」


「もうとっくに滅んだかと思った!」「うわぁああ!」


「だってヒト族っていないはずじゃ」


反応も自分がヒト族であることに対してである。魔王や勇者ではない。


「う、嘘……ですよね……エクシリオさん……エクシリオさんが……『ヒト族』だなんて……そんなこと……」


振り返るとジエイミは失望すら超えて涙を流していた。


しかし、自分には何一つ理解できない……そもそもヒト族と人間族の違いが分からないのだ。


「だって『ヒト族』は……この世界の『最弱種』ですよ……そんなわけないじゃないですか! それに彼らはもう滅んだって……」


まるで自分だけが取り残されている感覚。まるで自分がこの世界の存在じゃないような……いや、本当にこの世界の存在じゃないんだ。


だから、この世界の常識に気付くことが出来なかった。


あぁ……なんとなく理解した。つまり、ここにいるのは『人間族』であること。


そして自分は別の『ヒト族』らしい。『最弱種』『絶滅種』ということになる。


だから大衆も存在しないはずの生き物がこの場にいれば唖然とするのも納得がいく。


メルは自分が別世界の存在だと気付いた。自分の人種がヒト族であることも突き止めたのだろう……


そして、その真実はメルの口から告げられたことにより真実味を増す。最弱であることを証明されたのだ。もう何もすることはできない。


そういうことか……ジエイミと二人きりの時にそのことを告げていれば、まだその影響は少なかったかもしれない。しかしメルの邪魔が入ったことにより打ち明けられなかった。


つまりメルはあの時から、この計画を考えていたのか……


「エクシリオさん! 何か言ってください! そんなはずはないって! そしたら……私は信じますから! エクシリオさんのことを!」


言葉が浮かばない。メルの目的はどういった理由か分からないが、


『自分の立場を地に落とすこと』だ。


自分が嘘で築き上げてきた信頼を木っ端みじんに打ち砕く。


一番この事実に衝撃を受けているのは目の前にいるジエイミだ。おそらく……大噓つきとでも言われるだろう。


大衆からも非難の声が聞こえているが、耳には入ってこない。


「……全部本当のことだ……俺は、自分は……《《最弱》》だ」


「……嘘……です……よね?」


だけどそれは、どうあがいても変えようのない事実だった。


△△△ヒト族


これは、かつて初代勇者と初代魔王が戦争していた太古の御伽話。


この世界には大きく分けて二つの種族が支配していた。


種族の繁栄力に長けた『ヒト族』。圧倒的な力に長けた『魔族』。


彼らは仲が悪く常に争いを起こしていた。しかしヒト族では魔族に敵わない。


か細い腕。ひ弱な魔力。ヒト族は魔法を使えるものこそ希少であったのだ。


必ずと言っていいほど負けるのはヒト族であった。


そんな時。初代魔王はヒト族を滅ぼし、この世界の全土を魔族のものとするべく侵攻を開始する。


ヒト族は抵抗むなしく次々に殺されていく。このままでは絶滅してしまう危機を感じた時にヒト族からある男が立ち上がる。


『初代勇者』『エグネイト』である。彼は人並み外れた力と魔力を持ち、魔族を次々に倒していく。


魔族と戦っても力負けせず、魔法の打ち合いにも負けない。まさしく一騎当千。最強の勇者であった。


しかし、そんな彼には大きな秘密があった。


エグネイトは《《ヒト族》》と《《魔族》》の間に生まれた《《混血種》》である。


ヒト族と魔族の混血は、当時の世界では異端とされており、生まれてくること自体が禁忌であった。


エグネイトは運よく生き延びてヒト族の中で過ごしていく。そして成長していく中で自分が誰よりも優れていると察した。


しかしエグネイトは自分が混血種であることを知らなかった。それは周りにも一人の天才としか扱われてこなかったのだ。


『どうしてヒトは弱いのか? このままでは滅んでしまうではないか』


そこでエグネイトはある考えにたどり着く。


『より多くの子孫を残すことができれば、そのあと生まれてくる子供たちは自分と同じく優れている者である。そうであればヒトは滅びることを止められる』


そうして、エグネイトは沢山の女性に自分の因子を残した。


すると、ヒト族の中であれだけ希少だった魔法を使える子供達がみるみる生まれてくる。それは勇者因子がヒト族に影響を与えるからだと考えられた。


やがて、その子供たちも自分たちの因子を次の世代に託していく。


それを繰り返し続けたことにより、勇者の因子はほぼすべてのヒト族に行き渡ることとなった。


そして今、この世界を支配しているのは《《ヒト》》と《《魔》》の間にいる存在。《《人間族》》である。


絶滅を危惧した純血種は少数派となり辺境の地へと追いやられていた。


気付いたころにはもう遅く追放されるだけであったのだ。


ひ弱な彼らは従うことしかできずに、ただひっそりと村で暮らすこととなる。


そうして時は流れ、ヒト族は絶滅したとされていた。この国には人間しか存在しないのだと、それが常識であった。


カクセイラン王国にある『モブコザ村』は、数少ないヒト族を集めた村であり。


いわば、閉鎖的限界集落のようなものだった。


それも長らく時間が経つうちに、モブコザ村の存在自体を忘れられていった。


つまり、ヒト族は勇者の因子を受け継がない存在であり、魔族の血も流れていない。最もひ弱な種族。この世界の『最弱種』である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ