表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/160

第8話 奴隷買いました!


☆☆☆情けない男の末路


馬車に乗り街から街へ移動していく。


転売で稼いだ資金はまだ遊んで暮らせるほどない。


次の街につく頃には何か稼ぐ方法を考えなくてはならないのだ。


いい商売方法を見つけなければ……いいや、先人の記憶を紐解けば簡単に出てくる。


そもそもここは異世界なんだ。元居た世界では当たり前のことが当たり前ではない。


あちらの世界では二番煎じのものですら、こちらでやってしまえば天才と評される。


確かにステータスはゴミであるが、自分だってチートの現代知識があるのだ。


魔王を倒すとか大それたことはできないが楽に生きる方法ならいくらでも考え付く。


そう!


「異世界に著作権はないんだな! はっはっは!」


笑みが止まらないな! 好き放題やらせてもらう。


馬車が街へ着いたようだ。今度はここを拠点にして稼ごう。


自分はある人気の少ない路地裏に入る。


すると地下道に繋がり、そこにあった扉を叩く。


「合言葉は?」


知らん!


「う”う”う”!」


活舌悪く低音に言う。


「入れ」


それでいいのかよ合言葉。


扉が開かれ中へ入ると胡散臭いおっさんがいた。


「ようこそ奴隷販売店へ、戦闘奴隷から愛玩奴隷までお客様の求める奴隷たちが揃っていますよ。私はレイド・レイクと申します」


そう、奴隷を買おうと思った。異世界と言えば奴隷は鉄板だ!


エクシリオ・マキナは死んだ。


ペルペッコ・モンタージュも死んだ。


だから今の自分は……


「スシデウス・ヤスモアキだ」


名前なんて何でもいいのだ。どうせやばくなったら逃げるのでいちいち考えられるかってんだ。


「どちらの奴隷も探している。基本言うことは絶対服従で逆らったりせずに文句も言ったりしないあとは絶対に裏切らないやつだな。愛玩奴隷の場合未経験に限る。あと絶対に裏切らない奴。見た目に関しては自分の趣味もあるので見てから決めるが……三人は欲しいな、戦闘奴隷は強ければなんでもいい、あとは(以下略)見た目がいい奴だな。うん。見た目の良い奴。結局はそこに行き着く。あと絶対に裏切らない奴」


引いているな。正直自分でも引くこれはめっちゃ早口で言ったし。


「安心してくれ、金ならあるぞ?」


金貨をちらつかせると商人の目が変わる。現金な奴め


「上物をお探しですか……まずは戦闘奴隷からですね」


檻を覗くと目が死でいる奴隷ばかりだ。


「先代勇者の死により、国の情勢が崩れておりまして多く回収できたのですよ」


っげ、また自分のせいでこんなことになっているのか……勇者に頼りすぎだろこの国。まぁいい。


「この獣人族の少女なんてどうでしょうか? 若干反抗的ではありますが、見た目はそこそこです。それに戦闘力も高いです。この隷属の腕輪を使えばいうことも聞きます」


ケモミミ娘来た! そうやあネコミミつけてたメイドさんは元気かな……


見るとそこそこかわいいがこちらを睨んでいる。こっわ……かなり反抗的じゃん。あと目は死んでいない。


「君は強いのか?」


ケモミミ娘に話を掛ける。


「うるせぇ! てめぇ殺すぞ!」


「彼女はほんとに歯向かわないのか?」


「えぇ、そこは安心です。隷属の腕輪があれば」


「こっち見てんじゃねぇよ! 殺すぞ!」


めっちゃ敵意向けてきているじゃん。


「……ほんとに?」


「大丈夫ですって隷属の腕輪ありますから!」


そこまで言うのなら……ちょっと心配だけど。


褐色の肌に小柄な体系にケモミミ。恐らく犬か狼か狐の類だろう。凶暴性からしたら狼だな。


「殺す殺すと抜かす割に、今君は自分を殺していないじゃないか? それは自らを守るために君が見せている虚勢に過ぎないことは分かるかい?」


「あぁ? うるせぇんだよ! 知らねえよそんなことはよぉ!」


「そんなに敵意をむき出しにしていると自らの価値すら下げていくだけだって。自分は君を買おうと考えている。少しは媚を売っておいた方がいい」


調教全然できてないじゃん。この子どうなってんのここの奴隷。


「それはあたしが決めることだ。てめぇはあたしを手なずけられるたまか?」


商人は頭を抱えている。


「隷属の腕輪あれば本当に大丈夫なんだよな?」


「はい」


「他にもこんな奴ばかりなのか? であれば少し考えさせてもらうが……」


「いえ! 彼女が少し特別なだけです! それよりも愛玩奴隷の方を見てみましょう」


無理やりに愛玩奴隷の場所へ連れていかれる。


「ご主人様ぁん! 私を買ってください! お願いします!」


奴隷の生活環境がいかに悪いのかよくわかる。あまり好みじゃないアレな女性に声を掛けられるのだし。


「処女か?」「いいえ」「じゃあいいです」


ごめんなさい、お断りします。


「ちょっとおおおお! 何がダメなのよ!」


無視して奥へ進んでいくと、檻の中に一人の酷く落ち込んだ少女がいた。


「こちらです。彼女は先日捕まえてきたばかりの新鮮な少女です。お客様の提案にピッタリだと思いますね……未経験ですよ?」


「……あなたは」


暗い表情をしているが、顔は非常に整っている。


「彼女は裏切らないか?」


「だから隷属の腕輪があれば大丈夫ですって……どんだけ気にしてんだこの人」


流石にしつこいのか呆れられている。金貨ちらつかせなければ追い出されていたな。


「君はここから出たいか?」


「ここを出ればもっと辛い目に合うって他の子が言っていました。あなたは酷いことをする人ですか」


「少なくともここはそういう目的の店だ。ダメな相手に拾われればここより地獄になるのも必然」


ボーイミーツガールもののおっさんポジの真似をして喋る。あのポジションかっこいいよね!


「君に問おう。光が欲しいか? 暗い夜空の中で輝く一番星のような光が」


「光……」


彼女に手を伸ばす。


「君に可能性を感じたんだ。夜に星を輝かせる光となれるよう。ここから出たいか? 君自身が決めるのだ」


なんて中身がないのだろう。だけど意味深なことを言えば相手が考えてくれる。


「私は……出たい。出たいですここから!」


「あぁ、歓迎しよう」


「ではでは商談の方に……」


持っていた金貨をかっこよくばらまく。


「これでいい」


「え? ですがこんなに頂いてよろしいのですか? 銀貨どころか金貨まで」


え、結構するもんだと……思ったより奴隷って安いのか?


今のなし! って言いたいけど格好がつかない。というより、目の前の彼女に失望されるのは今後のことを考えて避けねばならない。


「少なくとも自分は彼女にそれ以上の価値を見た。だが、今度またここを利用することがあるかもしれない。その時に適当な奴隷を貰うことにする」


商人は金貨拾いに夢中になっている。


「は、はい! お買い上げありがとうございます!」


その後、いろいろな契約をすることとなった。



☆☆☆新居にて


結局自分は戦闘要員を含めた三人の奴隷を連れこの街の新居へ……うん。


目の前にあったのはいかにも幽霊が出そうな曰くつきの一軒家。


窓も割れ蜘蛛の巣もある。


「……おいマテ! てめぇ! なんでこんなところに住むんだよ! 常識考えろって!」


褐色ケモミミ少女の『イルミル』獣人族で戦闘能力も高い奴隷である。


相変わらず口は悪いが、いかんせん見た目が良いため結局、買ってしまった。


どうやら、新居が気に入らないみたいだ。


「君達にはここで共同生活をしてもらう」


「ふざけんなよ! なんでこんな家に!」


いくら曰く付きと言えど、拒否しすぎだろ、前板奴隷商の方が衛生環境悪かっただろ。


もしや……こいつ幽霊怖いのか?


「わ、私は大丈夫です。スシデウス様の言うとおりにします……」


愛玩奴隷として買った『コルルナ』顔が非常に整っていて優しい性格である。


「ほれ見ろ、コルルナはこの場に適応しているぞ? 世界において最も生き残るものは何か? 力が強いものではない。どんな環境に適応できるものなのだ」


「あ、ありがとうございます。スシデウス様! コルルナは! ご期待に沿えるように頑張ります!」


そしてかなり自分のことを信頼している。金貨バラマキ効果が発動しているのだろう。


「うふふ……スシデウス君。お姉さんのことを忘れてない? ここに住むのは構わないのだけども」


そしてもう一人。奴隷の中で最年長の美人『アルシュル』


お姉さんムーブを出しまくる、少しエッチなお姉さんだ。正直に言えば一番好みである……え? お前の好みは聞いていない? 失礼しました。


「ほら、二人は平気みたいだぞ。イルミル。君だけだ。ここに住みたくないと抜かすのは」


「嫌なもんは嫌だ! 大体まだ私はてめぇが主と認めたわけじゃないからなぁ!」


「もしかして……イルミルさん。怖いの?」


コルルナが首をかしげる。


「は? はっ! 何が! 全っ然! 怖いくないし! お化けとか! そんなの倒せばいいだけだし! 馬鹿じゃないのコルルナ!」


うん。過剰な否定は肯定となるのだと知らないんだな。


「あはは、そうだよね、幽霊っ――」


「幽霊って言うんじゃないよ!」


そこかよ……イルミルめっちゃ面白いな。


「あはは……とりあえず外でそんな話してても埒が明かないから、中に入って早く掃除しましょっ」


アルシュルがまとめてくれる。さっすが年上!


自分を先頭に中へ入る。相変わらず薄汚れた部屋であるが、格安で購入できたので文句は言えない。


「凄い……結構広いですね!」


「この家は以前住んでいた人が自ら命を絶ち、その後住んでいた人たちからは夜中に悲鳴や異音が聞こえたり天井に顔があったりして逃げたらしい。だから格安で購入できたんだ」


事故物件。ラップ現象とかシミュラクラ現象など、動物の鳴き声を勘違いしているだけだろう。


異世界の人間にはそういうのは科学的に証明できないから曰く付きの物件と片付けてしまっている。


「う、嘘よね! そ、そんなこと言われても怖くねぇんだよ……え、嘘だよね?」


「それよりも早くこの場所を綺麗にしないと、ゆっくり休めなくなるよ~」


そうして全員で新居の清掃に一日を使う。アルシュルとコルルナがほぼ動いてくれた、イルミルは役に立ってない(戦闘奴隷だし仕方がないが)


「終わりました~」


コルルナが体を伸ばしている。


どうやらここは風呂があるらしく水魔法を使える奴いれば……


「使えねぇよ水魔法。私は土属性だけだ」


「ごめんなさい! スシデウス様!」


「ごめんね。お姉さんも魔法はちょっと」


まぁ仕方がないか。風呂があればなぁ……


「自分は少し用事があるのでここを離れる。戻ってくる前に汚れを落としておくように」


そういい自分は家を後にする。


なぜか、その時に三人の顔が不安そうになった。



☆☆☆交渉



服飾屋の看板を見かける。閉店間際で人も少ないだろう。


今の自分には奴隷と新居を買ったせいで資金が尽き欠けている。必要最低限しかないのだ。


扉をたたき入る。


「あら~いらっしゃい~」


男の高い声が聞こえる。


「失礼する……!」


ガタイの良く長く派手な髪色をした男。


「あら、いい男ねぇ~あなた~」


そう、オネエだである。


「少し話がしたいのだが今は大丈夫か?」


「えぇ、ちょうど閉店しようかと思っていたの……商談ね? あぁ、私はポポよ」


「スシデウスだ」


裏へ案内されるとかなりたくさんの衣装があり、どれも精密に作られている腕は確かなようだ。さすがはオネエ。


ソファーに腰を掛けた。


「自分はあるプロジェクトを立ち上げようと思っている。そこであなたの協力を願いたいのだよ」


「報酬はどうなのかしら」


そう、ここが肝心のところだ。上手く交渉できなければこの時点で自分の計画は終わりになる。


「今の自分では成果に見合う報酬を用意することは出来ない」


「あら、ならばこの話は」


そう来るのは想定済みだ。事前に用意していたデザイン画を机に置く。


「だからこれを見て判断してくれ」


オネエはデザイン画をいやいや手に取ると表情が変わる。


「あら! 何よこれ! 凄いデザインじゃない! このスカートもこんなの見たことないわよ!」


「貴方を職人として見込んで話をしたい。この衣装のデザインを見た素直な感想は?」


「素晴らしいの一言に限るわね。袖や裾、そのほか全てを見ても新鮮よ! 今すぐにでも型紙を起こしたいぐらいよ!」


これは自分の元居た世界で流行っていた衣装を思い出しながら描き起こしたデザインである。


こちらの世界で新鮮に映っている。そして何よりこのデザインを見せている相手。


『オネエ』


どこの分野でもオネエは有能である。味方に入れておいて損はないのだ。


だからこの衣装を作りたいと思わせることが出来たならば成功である。


「この衣装を完成させたいと思いませんか? 想像してください……身に纏った少女の姿を……」


「作るわ! お題はいらない! むしろこの衣装を作るために私はこの店を始めたのかもしれないわ!」


計 画 通 り



☆☆☆初めての……



オネエとの交渉を終え新居へ帰ると、明かりはついていない。


光魔法で部屋を照らす。意外と便利な魔法である。


「お、おかえりなさい、スシデウス様」


コルルナが気まずそうな顔をしている。衣類もシンプルで清潔な寝間着で、掃除をしていた時の汚れももうなくなっていた。


「あぁ、待たせたな。食事はもう済ませたか?」


「はい、でもよろしかったのですか? 私達にまでちゃんとした食事を用意してもらって」


今後のためにも味はともかく栄養ある物を食べてもらわなくてはならなかった。


「とりあえず、自分は身体を綺麗にしてくる。もう寝室で休んでいろ」


「は、はい……」


何か震えているようだが……あぁ、恐らく曰く付きの物件だからだろう。幽霊が出ると本当は恐れていたんだ。


「安心しろ、まぁ最初は怖いんだよなこういうの、でも入っちゃえば一緒だろう?」


そもそも幽霊やお化けなんてものは迷信で……


「は、はいスシデウス様のご命令とあらば……」


そう言い残し、コルルナは三人の寝室へ消えていく。


その後簡単に水で汚れを落とし、自分の一人部屋のベッドでゆっくり体を休めた……明日から本番だ!


カタカタ……カタカタ……


嫌な音がする。そう、自分は大事なことを忘れていたのだ。


そもそもここは異世界だ、元居た世界とは常識が違う。


幽霊やお化けは非科学的な存在であるが、魔法という概念がある時点で非科学的なものは証明されていた。


『タスケテ……』『コロシテヤル』『ユルサナイ』


どこからもなくそんな声が聞こえてきた。


そして自分の横に何かしらの気配を感じた。


あー、あー。これは『居る』やばいな……


『出ていけ……出ていけ……』


女性の低い声。目を開くとそこには足のない女がいた。


『出ていけ……ここから、出ていけ!』


怨念に満ちたような〇子みたいな女だ。


「うるせぇ! 家賃払え! とっとと成仏しろ!」


光魔法を浴びせる。


『ああああああぁぁぁぁ!!』


幽霊は光が苦手なのか消えかけた。このまま成仏……


あ! だめだ! 幽霊成仏したらここ曰く付きの物件じゃなくなる。家賃が元の値段に戻ったら今の自分では払いきれない! すぐに光魔法を解除する。


『!!ぁぁぁぁああああああ』


すると幽霊は元の姿に戻った。


『立ち去れ……立ち去れ……』


「まだ懲りないみたいだな。光魔法!」


『ああああああぁぁぁぁぁ』


光魔法を解除!


『ぁぁぁぁぁぁあああああ』


結構楽しいこれ。


『立ち――』


光魔法を唱えるため構えると喋るのをやめる。そして手を下すと……


『――去れ』


すぐに発動! すぐに解除!


『ああああぁぁぁぁああああ』


少しの間遊んでいたが、とうとう幽霊の方が根を上げたみたいだ。


『立ち去らなくても良い……だからもうそれやめて……』


「自分はこの家にお世話になる、スシデウスだ。今後は夜中にそんなことするな、迷惑だから」


流石にビビる。光魔法が効かなかったらさすがに積んでいたし。こっちも幽霊になるところだった。


いや、自分は一回死んでるから幽霊か? まぁどうでもいい。


『だ、だけど……私は人が憎いから、騙されて捨てられて……かつて私の大事な――』


「知らねえよ、そうやって怨念バラまいてるから成仏できないんだよ。自分は格安で済めればそれでいいんだ。金払ってんだぞ分かってんのか?」


『ひどい……聞いてくれてもいいじゃん』


大体幽霊になる奴なんて暗い奴ばかりなんだ。少し脅して開き直れば勝てる。


どんな怨念や憎しみも生きている人間のが上なのだよ。


これで幽霊問題は解決だろう……コルルナの不安は取り除けただろうか?


☆☆☆翌日


目が覚め、リビングへ向かう。するとアルシュルが朝食の準備をしていたが、作業をやめてこちらへと


「おはよう、アルシュル。ゆっくり休めたか?」


「スシデウス君! 昨日はどういうことなの!」


機嫌が良くない。いったいどうしたというのだ?


「お姉さんは、すごく緊張していたの! 怖かったんだから! 他の二人も!」


「あぁ、だからその件については完結した。出てこい花子!」


存在感の薄い幽霊が姿を現す。


『あぁぁぁ……立ち去らなくていいです』


「え、誰これ幽霊?」


「成仏するとここの家賃が上がるから、ペットとしてこの家で飼うことになった。名前は花子だ。危害は加えない」


『ぁぁぁぁ……よろしくお願いします』


アルシュルはため息をついた。


「ちっがーう! そういうことじゃなくてね!」


怒りの原因はそれじゃない、しかしこの子奴隷なのにどうしてそんな主人に歯向かうような……


「スシデウス君。私達は何?」


「愛玩奴隷だ」


「そう! じゃあ何をするの?」


そこでようやく自分の勘違いに気付く。そう、昨晩のコルルナの反応もだ。


愛玩奴隷。つまり、『そういうこと』をする奴隷のことだ。


そのため容姿が良いものが取り揃えられている。自分は決して『そういうこと』をするつもりで買ったわけじゃない。


「ちょっと待て、アルシュル。前提が間違っているのだよ! 落ち着いて話を聞いてくれ!」


「嘘よ、コルルナから聞いたわ。『安心しろ、まぁ最初は怖いんだよなこういうの、でも入っちゃえば一緒だろう?』と」


……確かに勘違いされても仕方がない事だった。


まぁ、プライドにこだわっても仕方がないので素直に謝った。


「ごめんなさーい!」


その後イルミルとコルルナを連れてくる。


「どうしたんだよ~ねみぃんだよこっちは」


「お、おはようございます。私じゃお気に召しませんでしたか……」


コルルナは酷く落ち込んでいた。


「いいか、落ち着いて聞いてくれ。まず昨晩のことについては多大な勘違いの元に生まれた数奇なる誤解だ。素直に謝ろう」


頭を下げる。


「まず、自分は君たちを愛玩奴隷として愛でるのではなく、別の目的のために買ったのだ」


「別の目的? お姉さんは分からないわね」


ここでようやく自分が考えた計画を話す。


「君達には華麗な服を着て大衆に歌と踊りを披露してもらう。そうだな、いわゆる……吟遊詩人をしてほしいのだよ」


そう、金を稼ぐ方法のため奴隷を買ったのだ。


生憎この世界には娯楽という文化は少ない。それに信仰の対象もほぼ勇者なのだからどうにかなる。


「あぁ? そんなん無理に決まってんだろ! 他のやつ雇えよ! あたしには向いてねえんだよ!」


「私も……でも歌なんて歌ったことないし。踊りだって」


「あら、面白いことするのね! お姉さんは歓迎よ!」


アルシュルは乗り気なようだ。


「辛い道のりになるが、それでも得られるものはある。それは夢だ。いや、夢だけじゃない。自らの夢を他人に与えられる仕事なのだよこれは」


「でもなんであたしらが!」


「今、世界は悲しみに満ちている。それは空も海も大地も証明しているだろう。そんな世界に必要なものは何か? そう! 星だ! それも誰よりも早く届けさせる一番星。それは歌であり踊りであり総括する全ては感動である! 大衆に感動を与えるのが君達の仕事なのだ!」


自分がやることは一つ。この三人を輝かせることだ。


「人はそれを『アイドル』と呼ぶ!」


「「「アイドル?」」」


そう、異世界でアイドル活動をして、お金を稼いで満喫してやるのだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ