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第78話 めんどくさい女

☆☆☆メルの部屋にて


その後ジエイミとは当たり障りのない会話をする。


やがて書状を届けるためジエイミはわんわんモフルン丸にまたがり、人間領へと戻っていった。


恐らくこれで争いは終わるだろう。さてと……さっきのことについて問い詰めなければならない。


メルの部屋に入る。


「……入るぞ」


「あ! 自分君! あの女捨ててこっちへ来たんだ! さっすが~分かってる~」


彼女は『自分君』と呼ぶ、何度もエクシリオにしろと言っているがこれだけは聞いてくれない。


「だからその呼び名やめろ……さっきはどういうつもりだ」


「どういうつもりもなにも、私とあの子は明らかに価値観が合わないじゃん。ほら、前描いた漫画でいつもうじうじしている主人公いたでしょ。イタリ・チンジくん『ロボに乗りません!』ってやつ。あんな感じのやつ見ているとイライラしてくるんだよ」


あの作品に関してはうじうじするのは仕方ないだろ。周りの大人がクソだから、特に親父が……じゃなくて!


「仲良く出来そうにないのか?」


「うん。どうせジエイミにも話したのでしょ? 答えも私と同じだ」


流石はメル。完全にお見通しだ。


「それに仲良くしろと言われて仲良くしても、それは本当に仲良くなったとは言わないもんね」


「確かにそうだが……流石性格がひねくれているだけあるな」


……


「あ、褒めてる? やった~自分君に褒められた~頭撫でて撫でて」


「流石メルだ。全くどこまでも無防備なやつめ、だがそんなところ、自分は嫌いじゃないぞ?」


「うふふ~~~……」


「メルは本当にかわいいな。顔も可愛いし性格も良い。何よりとても美少女だ。無性に抱きしめたくなる」


「え? 自分君やっさしぃ~~~! いやん! ハグが強いよ!」


……


「……いや、撫でてないだろ」


全部メルの一人芝居である。相変わらず妄想が激しい奴だ。


「自分君に撫でられる妄想で十分なんですよ~だ。あぁたまらない。本当にやってくれてもいいんだよ?」


「……目の前でそういうことやられると反応に困るからやめろ」


メルは自分に近づき上目遣いでどや顔をする。


「困らせているんだもん。悪い? それともうざい? 殴りたくなった?」


どういうことだよ困らせたいって、頭湧いてんのか?


「自分を困らせてお前に何の得があるんだよ」


「気持ちよくなれる」


「……佐渡島め」


S姦(サドがしま)ともいう。


「サドガシマ? なにそれ自分君がいた世界の地名だったりするのかな?」


なんで分かるの……?


「あ、その表情は図星だ……あ、目を反らしてる! あれ~もしかして知られたくないことだったのかな? 私にはお見通しだよ~自分君?」


割とポーカーフェイスは得意なはずなのだが、彼女の洞察力はやはり異常だ。まるで全てを見透かされているような瞳をしているのだ。


つまり、彼女と会話すれば会話するほど、自分という人間を知られていく……普通に怖いし、ビビる。だけど……なんだろうか変な気分になる。自分ってMだったっけ。


「あ、照れてる照れてる……きゎわわ……自分君きゃわわ」


目がハートになっていた……口論になっても自分に勝ち目がないことが分かってきた。


「……分かった自分の負けだ。認めるよ」


「じゃあ、ご褒美にもっと自分君のこと教えてよ! 聞いてもいつもはぐらしているじゃん……そんなに隠さなくてもいいじゃん!」


「自分がいた世界の知識なら教えているはずだけど」


「確かに別世界の知識も魅力的だけど。私は世界ではなく君のことが知りたいんだよ」


「それなら、お前が考えればいいだろ。何のためにその頭はついて――って、おい」


メルは自分の手を掴む。振りほどこうにも力は彼女の方が上である。


「お、おい……」


彼女はにやりと笑い、耳元で囁いた。


「……実は、押しに弱い事知っているだよ?」


「なっ!」


図星を突かれ、声が漏れてしまう。彼女は手の力を緩め、離れた。


「今日はこのぐらいで勘弁しておいてあげるね、自分君」


今の自分の顔を見たくない……なんなんだこいつ……ほんとに。


自分は逃げるように彼女の部屋を立ち去った。


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