第77話 修羅場です!
☆☆☆修羅場
彼女に伝えない方がいい。それは一体どういうことなのだろうか?
「――どういうことだ?」
「さっきそこはかとなく訊いてみたんだけど。『勇者が弱いなんてあり得ない』んだって。もしバレれば絶対に幻滅されるよ?」
幻滅される……だけど自分は真実を話そうと……
「どうしてあなたがここにきたの!」
するとジエイミはあまり良い顔をしていない。それどころか怒りを露にしている……彼女が怒る? 見たことがないぞ。
「いやいや、大きいワンコに乗っている楽しそうな二人組がいたからちょっと見に来ただけだって~『エクシリオ~』私も混ぜて混ぜて~メルちゃんハグ! えいえい!」
自分の腕に抱き着いてボインボインと胸を当ててくる。全然嬉しくないそれパッドだもん。
「――な、なにをするんだ」
「いいじゃんいいじゃん! 私達の関係なら当然だよ!」
ジエイミに見せつけているのは明らかだ。すると――
「エクシリオさんから離れてよ!」
ジエイミが自分とメルを突き放す。
「あら、野蛮だね……めちゃ野蛮! ジエイミめちゃ野蛮!」
「いきなり男性に抱き着く方が野蛮だと思うけどね。はしたないと思わないの?」
「だって、全て見られちゃったもん……今更そんなこと恥ずかしくもなんともないんだよ~ふふふ!」
誤解を招く発言はやめろ。手を出していないだろ。確かにパッドであることも知っているが……
「……エクシリオさん! どういうことですか! あ、失礼しました。いやそんなはずはないですよ!」
全力でジエイミを煽っている。というかこいつら仲が悪いんだな。考えてみれば憎しみ合う勇者と魔王だったしそれも仕方ないか、
ジエイミが敬語喋っていないなんて、初めてだぞ……かなり気が立っている。
「あら~もしかして不安なの? まぁ~仕方ないもんね~だってジエイミ・メダデスは『エクシリオ』のこと――」
「――いい加減にしろメル。一緒に行動をしたいのならそう言えば良いだろう。どうして言い争いになるのだ。これでは魔族と人間の和平に影響が――」
流石に見てられないので口をはさむ。一応ジエイミの前なので魔王の体裁は保っている。普段なら『うるせぇバァカ! 殴るぞオラァ!』と脅していることだろう。
「エクシリオさん少し黙っててください! これは私と彼女の喧嘩です! 正直に言います……私は彼女のことが大嫌いです!」
えーーー! ジエイミに怒られたぁぁ!
「あれ~いいの? 彼の意思に反しているよ~」
殴り合いの喧嘩になればどう見てもジエイミに軍配が上がる。それを分かっていて全力で煽っている……どういうことだ?
「こうやってねちねち言ってくるのなら、一度どちらが上かを示さないと……そうだ……あなたは元魔王だ……そうすれば……!」
異様な魔力の放出を感じる。これはやばいぞ……正直自分では止める自信がない。
「やっぱり野蛮じゃない。言い負かせないからって力で解――え」
すぐジエイミは目にも止まらなぬ速さでメルに接近し剣を抜き……
「――やめろ!」
その言葉でジエイミは止まる。
「……あ」
ジエイミは我に返る。
「ひょえぇぇぇぇぇぇ!」
するとメルはその場でひざまずく。確実に今の攻撃を食らっていれば死んでいただろう。命拾いしたな。
「エクシリオ……さん。あの違います……こ、これは……あ、私……エクシリオさんに酷いことを! ごめんなさい!」
すると、ジエイミは血の気が引いたのか、冷静に今の状況を分析しだした。今にも泣き出しそうになる。
「――いったん落ち着こう。とにかく落ち着こうジエイミ」
「あ、あれ~ジエイミちゃん~まさか暴力~」
メルはなんでいじめっ子みたいになってんだよ。それが作戦か?
「――出禁にするぞ。とっとと帰れ」
追加の煽りはキャンセルだ。
「すいませんでした~~~~~!」
メルは土下座し、すぐにこの場を立ち去る。
「ごめんなさい! 私……エクシリオさんに!」
「――気にはしていない。誰だってミスの一つくらいはある。俺は気にしていないのだからそう自分を責めたりするな。あれはどう考えてもメルに非がある。だけど……こうも感情的になるなんて珍しいな……一体どうしたというのだ」
「はい……さっきエクシリオさんは彼女を庇ったのがすごく嫌で……その、私よりも彼女の方が大事なんじゃないかって思いこんでしまって。もちろん無為な争いを避けるための判断だと分かっているのですが……ごめんなさい」
……嫉妬? え、本気でメルと自分がそういう関係だと思ったってことなのか?
「――すまない。嫌な思いをさせて、勇者と元魔王が争いになれば和平の道は遠のくと考え、止めたのだが……」
「……では、メルとは何もないのですよね……良かった……まだ可能性は残っていたんだ……あ!」
ジエイミは失言をしてしまう。さすがにこれで難聴は出来ないだろう。
「あ……その……エクシリオさん! あぁぁ! どうしましょう!」
顔を真っ赤にして照れてるし、これもう自分のこと好きって言ってるようなもんじゃん。クッソ可愛い……なんだこの生き物。
だめだこっちも照れてくるじゃん……やばいやばい。表情で悟られてはいけない。
「――き、気にするな」
メルとの関係を彼女に誤解なく伝えるとなると、確実に自分の正体を言わなければならない。
「――ジエイミが思っているような関係ではない。そうだな……ある目的のために行動を共にしているだけだ。それにメルは少しアレな性格をしているだけで、根は悪く……悪いな。ジエイミにちょっかいかけただけだろう。うん、そうだ」
あいつの性格が良いなんて嘘でも言えない。
こういえば納得してくれるだろうか。メルの警告がなければ自分が危なかったのも確かである。
やはり、ジエイミに幻滅されるのは嫌だ。
「――やはり、仲良くは出来ないか?」
「はい出来ません」
即答されました。




