第76話 魔族領で話し合います!
☆☆☆ジエイミの話
ジエイミに話があると言われる。いったい何の話だろうか……
「……お邪魔虫はクールに消えるぜ」
それ漫画のセリフだろ……。空気を読みオトザは出て行ってくれた。
「――話とは?」
「……エクシリオさん。少し魔族領を歩きたいのですがお時間はありますか? そこで話します」
あるかないかで言ったら、この後も魔王の仕事は控えている。
だけど、オトザに押し付けたり、後で頑張ればどうとでも予定は変えられはずだ。
それに話を聞いておく必要もある。一応彼女の前では最強の勇者であるし、
「――構わない。それではさっそく向かうぞ」
「はい!」
そうして、自分たちは魔王城を出る。
「ワン!」
懐かしい。自分が追放したフェルフェルではないか! やっぱりモフモフで可愛いな。しかも能力の影響で巨大化しているし。
「わんわんモフルン丸さん!」
え、何だその名前。わんわんモフルン丸? マジョーナじゃないんだから。
「エクシリオさん。これに乗って移動しましょう」
マジかよ、移動手段だったのか! 追放した相手だぞ自分は、乗せてくれるのかなぁ……
「ワン! クゥ~ン!」
しかし、自分のことを覚えてくれていたのかすりすりしてくる。クソ可愛いな……え、めちゃ自分に懐いているじゃん! でも飼えないんだ! 責任もてないので!
フェルフェル改めわんわんモフルン丸に乗り魔族領を駆ける。ジエイミは前に乗り自分はその後ろで振り落とされることはない速度が出ている。
自転車の二人乗りみたいな感覚だ。
「こうしてエクシリオさんと普通に話すのっていつぶりですかね、とても長く感じます」
言われてみれば全然ジエイミと話していなかった。結局彼女を救出後も自分は魔王軍へ向かったし、救出時も普通の会話はしていない。となると……伯爵別荘の一件以来か?
思い返せば長い道のりだったな。死にたくない一心で転売したりアイドルをやったり、勇者を演じたり、魔王を演じたり。
沢山の相手を利用してきたし、沢山の出会いがあった。
そして今、ジエイミは勇者であり、魔王は自分だ。戦わずに済む選択肢を選んだ結果であり、争いはじきに終わるだろう。
「――まともに会話をしたのは氷山へ向かう馬車ではないだろうか,、あの頃のジエイミはドビーやマジョーナにさんざん言われていたな。だけど今こうして成長した」
ドビーに関しては追放することが目的だったのだが、まぁそれは置いておく。
「一度追放されたりもしましたけどね……だけど、エクシリオさんはずっと私を気にかけてくれました」
「――俺だけはジエイミの才能を見抜いていた。あの時からそれぞれの立場は大きく変わってしまったな……」
「ほんとにそうですね。まさか私が勇者になって、エクシリオさんが魔王になるなんて思いもしませんよ。でも戦うことにならなくてよかったです」
それはこっちのセリフだと言いたい。本気で戦えば確実に負けて死ぬ。
「――だって私ではエクシリオさんを超えることができませんから」
「――もうとっくに超えているよ」
そもそも自分はジエイミと同じ場所に立てないのだ。彼女は本当の勇者であって、自分はどうあがいても本物になることはない。
ジエイミの信頼は自分にはあまりに不相応だ。もう……いいんじゃないかな。
「……え?」
オトザと話した時に自分の考えは纏まっていた。どうせ戦いは終わるんだ。もう強がる必要もない。もう……自分の正体を偽らなくたっていいんだ。
だから……ジエイミに全てを打ち明けようと思った。
「――自分は――」
――ブゥゥゥゥンッ!
「――ちょっと待ったぁぁぁぁ!」
そこに高速で移動する物体が通り自分の声は搔き消された。もちろん正体は一人しかないだろう。メルだ。
「はぁ……はぁ……間に合った」
「――メル。どうしたというのだ。今はジエイミに――」
すると、自分の方に近づきミミ音で囁く。
「……彼女に伝えない方がいいよ」
……どういうこと?




