第75話 でっち上げでした。
☆☆☆部屋にて
人間領と魔族領の和平会談が終わり自室に戻ると通常モードへシフトチェンジする。
「あー疲れた……魔王やるのかったるい……」
オネエに作らせていた〇ト装備一式をちゃんと着てくれていた。ジエイミの勇者装備は似合ってるし、めちゃ可愛い。
恐らく、あの凛々しい姿も自分が人間領を離れている間に成長した結果だろう。
だけど、ジエイミには悪い事をしたと思っている。なにせ……
――『黒幕』というのは何の根拠もないでっち上げだからだ。
争いを終わらせる方法。それは互いが互いの不利益になる存在が出てくることだ。
要するに『共通の敵』を用意することができればその間双方の争いはなくなる。
存在していない黒幕を作り上げられれば、それは長くの間続く。
メルにだけは黒幕の真実を話してある。意外にも反応は良く、協力してくれるらしい。
……しっかしメルは相変わらず何を考えているのか分からない。
自分の正体に気付いていながら、何もしてこない。普段通りに振舞い仕事だって以前より優秀だ。
本来なら自分は異質な存在にも関わらず、拒絶反応というものはないのだろうか?
その後もメルのおかげで魔族領どころか人間領にまで漫画を広められたし、魔族領も漫画家という破格な給料の就職先が増えたため貧困問題も解消されつつある。
漫画の力を利用し、人間領と魔族領の間にも貿易ができるようになったので資源不足も解消されるだろう。(メルの提案)
ジエイミは明日にも書状を王国に届けてくれる。争いもこれで終わるはずだ。
もし、何かあればジエイミが対応してくれるだろう。
自分は魔王をやりながらスローライフを過ごすか~
☆☆☆コイバナ
「エクシリオちょっといいか?」
ドアがノックされる。オトザか、
魔王になってから彼は忠実な駒として働いてくれている。
魔王軍は働き方改革を行なったため休みも増やした。働きやすい職場になっているはずだ。
オトザとは友人のような関係になっている。
しかし、怪しいと思っているのも確かだ。なんか……めちゃ裏切りそうじゃない?
だから二人きりのこの状況も若干ひやひやしている。
「それで……どうなのさ、ジエイミとは?」
「……なんのことだ?」
え、本当に何のことだ?
「いやいや、決まっているだろう。コイバナだよ。エクシリオはどっちを選ぶのさ」
「……は?」
つまり恋愛ってことか?
「いや、ジエイミとはそういう関係ではない。ただ元勇者パーティーの仲間だ」
「おいおい。ほんとかよ? 一応魔王なんだからさ、後継ぎのことも考えないといけないだろ? ジエイミなのか? メルなのか?」
自分の恋路を楽しんでるだろ、修学旅行の夜かよ……見回りの先生が来ない分話を逸らせないので悪質だ。
それに後継ぎって……流石にな……
「そもそも自分は辛うじて魔王をやっているだけだ。恐らくネタバレを使って支配しているが、それも漫画が完結すれば意味がなくなる。結局自分の時代はどうあがいても長くは続かないさ、その間に魔王軍を変えられれば良いんだよ」
「だろうがさ、メルはどう見ても脈ありだと思うぞ? 顔だって可愛いし、エクシリオぐらいだろあんなに懐いているのは」
「……マジで言ってんの? メルだぞ?」
「あぁ、魔王軍の中でも普通に人気あるんだぞ? ファンクラブがあるほどな」
え、そんなものが出来ていたのか?
確かに見た目は可愛い。魔王軍の中でも随一の美少女であることは認めよう。だが、
「……メルと付き合って別れた時想像してみろ。絶対に刃物持ち出すぞ?」
あいつはメンタルがすこしヘラってる女だ。絶対に別れ話持ち出した時点で刺される。それかリスカだ。刺されてそのまま病院に行く体力など自分には存在しないし、確実に死ぬ。
「なんで別れること前提なんだよ! じゃあ、ジエイミの方がいいのか? 確かにあちらは儚げな美少女であるが!」
お、分かってるじゃん。あぁいうのは自分のタイプである……だが、
「どうしてそんなに自分と女をくっつけたがるんだよ! カプ厨かよ」
「カプ厨……?」
あ、説明してなかった。
「漫画で何でもかんでも二人組に纏めたがるめんどくさい奴らのことだ」
「……あ、確か、ラースムドウ様そんな感じだったな」
ラースムドウはカプ厨である。くそどうでもいい情報を得た。
改めてジエイミのことを考えてみる。
確かに彼女は自分に好意を抱いてくれているのだろうことは気付いている。
だけどそれは、勇者エクシリオ・マキナだ。自分じゃない。
「ジエイミは理想の勇者像を抱いている。けどそれは本当の自分じゃないんだ。恐らく彼女が思い描いているのは最強の勇者。だけどそんなものは幻想にすぎないことは分かるだろう」
「まぁ、ゴミみたいに弱いもんな」
事実だけどイラつく。
「正直、本当の自分を知れば彼女は失望する。なにせ信じていた理想の勇者が村人以下の雑魚なのだから……だから、今の距離でいい。あまり深入りして正体に気付かれるのは避けたい」
……メルの様に、彼女に関しては自分の正体が知られたのはプラスに働いた。
別世界の知識はとても価値のあるものだ。だからこそ泳がされている可能性がある。
だけどジエイミに関しては明らかに別世界の存在だと知られれば、今までのままではいられなくなる。
そうだ。変化を恐れているのだ。
「はぁ……相変わらず臆病だね、魔王軍を変えようとしたときのエクシリオはどこへ行ったのか」
「慎重なぐらいがちょうどいいんだ。あと絶対に面白がっているだろうオトザ」
「バレたか」
「当然だろ……他人の恋路を楽しむのは勝手だが、外野から見ているのが一番だぞ」
「はいはい、忠告はしましたぜ。それじゃあ俺は見る専に徹しますぜ……」
話が終わりオトザは部屋を出る。
「エクシリオさん!」
すると扉は乱暴に開かれた。
「うわぁ! びっくりした! って……勇者?」
ジエイミ……一体何故自分の部屋に来たのだろうか。切り替えないと切り替えないと……
「――どうした? ジエイミ」
「話があってきました……」
一体何の……?




