第66話 心の決着
☆☆☆鼻水祭り
「……エクシリオ」
そうして、メルが戻ってくる。
「戻ってきたか」
恐らく彼女の中で決着がついたのだろうか、瞳には涙が溢れている。
このままでは絶対に号泣するな……泣かせてやるか……
「うん。さっきの会話全部聞こえてたよ。でも……私はエクシリオが思い描いているような……凄い存在じゃないんだよ……エルちゃんの方がずっともっと」
「それは知っている。彼女だって別に悪い事をしていたわけじゃない。ただ、自分はメルと話がしたかっただけなんだ」
「……でも、エクシリオは、エルちゃんを嘘にしようとしていて……」
やはり、エルを消した自分に対して良い感情を抱いていないな……なんか言い訳を考えなくては……
「だから、何度も言うお前はエルを偽っていた。それは胸パッドと同じなんだ」
やべ、間違えた……
「……?」
「だからな、ま、うーん……ありのままの姿を見せることだ。そう、ありのままの姿見せるんだ。これが一番大事なことなのだよ。嘘は確かに良いものだ。だけど、メルのやっていたことは一生嘘のままなのだ」
だめだ。まだメルは納得していない。適当すぎるもんな。
「……だから、その嘘を、本当にする方法がある」
メルは自分よりも断然賢い……つまり、彼女に見つけてもらうしかない。他人任せだ。
「嘘を本当にする方法……それは皆に嘘を信じ込ませることじゃないの……」
流石メルすぐに考えがつく。だがこれでは今までと変わらない。
「確かにそれも一理ある。だが、嘘とバレてしまえば終わる。自分は既にヒントを出しているだ。今までの行動を思い出して考えてくれ」
「じゃあ……どうすれば……まさか! 漫画?」
よし、それで行こう。全く思いつかんかった。
「え? ……そうだ。何のために今までソレを描いてきたんだ? 君が幼い頃に描いた魔王伝説を新しくする。それは君にしかできないことだ。エルの生き様を漫画にまとめることが出来れば、それは物語として魔族領に広めることが出来る。つまりは、本当になるということだ!」
「……もしかして、エクシリオって、私と会った時には気付いていたの?」
そ ん な わ け な い だ ろ !
「え? ……そうだ。あの部屋でマントに隠れた時同じ方向から声がしていた。つまりそれはエルとメルは同一の存在だと認識した。だけど、その場で伝えては心が耐えられなくなると判断し打開となるための漫画を描かせたのだ」
苦しい言い訳だ。
「メルのアルシュル好きも、姉好きから来ている物だと気付いていたぞ。だから、アルシュルに会わせたのだよ……お前はお前が思っている以上に一人じゃないんだって」
「……エクシリオには敵わないな……まさかそこまで気付いてたなんて」
納得してくれたようだ。
「だから、その妄想を現実に変えるのはメルだ。確かにエルはいないのかもしれない……嘘なのかもしれない。だけど、物語にしてしまえばそれは本当の物語だ!」
「そう、だね……でも……ちょっとごめん」
力が抜けたように自分に抱き着く。
「うわぁぁあぁぁん! あぁぁぁぁあ!」
メルは号泣する。そして大量の鼻水を擦り付けられた。
だけど……今回だけはまぁ、仕方がないだろう。
辛い現実を受け入れて前に進もうとしているのだ。
どんなに言い訳を並べても姉のエルはもういない。それを受け入れるには泣くしか方法がない。
漫画を描いたってエルが戻ってくるわけでもない。
生きた証を残すだけだ。
「……エルちゃん……エルちゃん……!」
泣き続け服が鼻水でべとべとになる……でも今回ばかりは我慢しよう。
これが、始まりだ。彼女が前向きに生きれるように自分も全力で頑張ろう。
「私……頑張るから。エルちゃんの生きた証をこの世界に残す! だから……絶対に忘れない……忘れないから!」
それが、メルの決意だった。




