表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/160

第65話 バイバイ

◇◇◇現実と向き合うこと


エクシリオの声は聞こえていた。何度も私を呼び掛けてくれたこと。


言葉をかけてくれた。私が誰よりも優れていると、一人じゃないと。


それは……私が言ってほしかった言葉でもあった。


エクシリオは、私を助けるために命の危険を顧みずにここまで来てくれたのだ。


だけど私は……この辛い現実を受け入れることはできない。


そして今、エクシリオによる特殊な力が働きエルちゃんの存在は消えかかっている。


『なぁ、メルよ……妾は間違っていたのか?』


心の中に直接エルちゃんは語りかけていた。


「間違ってなんかないよ」


すぐに答えた。


『……だが、妾が重荷を押し付けたから、メルは現実を受け入れられなくなった。もしあの時に、願いを託していなければ……幸せに生きられたのではないか?』


心配そうに話を掛けてくれる。


「もし、私がエルちゃんになっていなかったら。きっとすぐに死んでいたと思う。だからよかったんだよ……これで……でも……」


やっぱり、それでも終わりは訪れる。


私はきっと現実に帰りエクシリオと話し……エルちゃんを嘘と認めてしまう。


だって、エルちゃんはもう死んでいて……戻ってこないのだから。


「嫌だ……エルちゃんを……嘘にしたくないよ」


『……メル……ごめん。妾がもっとうまくやれていたら……』


エルちゃんは申し訳なさそうだった。


『メルとやりたいことがあった。好きなもので笑いあったり、楽しい時間を過ごしたり……お主の描いた漫画だって読みたかったのじゃ!』


「私だって……いやだよ……でも、エルちゃんはもうじき消えるんでしょ! 分かっている。私は……本当に弱虫で……何かに縋らないと生きていけないんだって……」


だけど、目が覚めればエクシリオがいる。


「それでも……エクシリオはそんな私を認めてくれるって……彼がいれば立ち直れるって……でも、そうなる私が嫌なんだよ、立ち直っちゃったら……エルちゃんが大切じゃなくなる証明なんだよ!」


だって、私の大切はエルちゃんからエクシリオに変わろうとしている。


その事実がどうしようもなく怖い。


『そんなものは……メルが、妾のことを忘れてくれなけばよいのじゃ……ちゃんと妾が大切だと認めてくれた事実だけがあればいい』


「……エルちゃん」


『……一度でも姉妹喧嘩がしたかったの……』


そろそろ、彼女は消える……そんな時に何を言ってるのだろうか、確かに私達は仲良しで一度だって喧嘩をしたことがなかった。


こんな時だからこそ……なのかな。


「じゃあ、今からしようか、最初で最後の姉妹喧嘩」


そうして喧嘩は始まった。


『あぁ……お主は本当に弱いのじゃ! メルよ! それにいつも一人で絵を描いて……誰かと会話をするのじゃ! もう少し信用してみるのじゃよ』


「……うるさいよ! エルちゃんだって、後先のことなんも考えないで行動しすぎなんだよ! 仲間をみんな信用していつか裏切られても知らないんだから!」


……


それから少し口論するが、言いあえば言い合うほど、私達はやっぱり双子なんだなって思う。


これは嫌なところじゃない。好きなところなんだ。


「ごめん!」『すまん』


そして私達はすぐに仲直りをする。


『喧嘩はええのぉ~! 仲直りが出来るのじゃから』


「うん……」


もう時間はない。だけど全部言えた気がする。


「……私。強くなれないかもしれないけど……エルちゃんの分も生きれないかもしれないけど。それでも……大切な者を見つけられたんだ……」


『……』


「私達は双子だ。だから……これからは自由に生きたいって思うんだ」


これは私に対する宣言だ。


「だから……背中を押してくれると……助かる……お姉ちゃん」


涙が止まらない。でも、もう消えているその意志は私の心にだけ残っている。


『……行け。そして幸せになるのじゃぞ。メル』


そうして私は……現実へと戻されていく……


「バイバイ……エルちゃん」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ