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第60話 真実を知ること

◇◇◇勝ち取る信頼


信じられないことが起きた!


まさか、エクシリオ・マキナが魔王軍に入ったのだ!


『ストローク・エシリク』と名乗りマスクをつけているがどう考えてもエクシリオである。


採用したのは……オトザ。どうして気づかないんだよ……今すぐにでもクビにしたかったけど、オトザもエシリクも魔王軍に貢献しているのも確かだ。


特にエシリクは新入りを一晩で実戦導入できるくらい優秀な教官だった。特に理由もなくクビにするのは間違っている。


都合が良いのも事実だ。未知数で理解不能な男であるエクシリオ・マキナがあちらから姿を現した。


リスクを承知で彼を知ることが出来る。


そして、エクシリオに気を取られていた私は今までで一番のミスを犯してしまう。


私がユーシャインに囲まれている妄想を絵に書き綴った本を落としてしまったのだ。


最悪だ! 流石にアレを部下に見られては言い訳が出来ない! とりあえず落とし物として届けられていないかチェックしないと!


そしてその本はエクシリオに拾われてしまう。表情から察するに見られているし……


完全に終わった! 私は死ぬべきだ!


とりあえずバラされないために私の部屋へ連れ込み脅しをかけて質問した。


だけどエクシリオは喋れば喋るほど、思ったよりもずっと普通の人だった。


それどころかとても話しやすく私が暴走しても彼は宥めてくれる。ユーシャインにも精通しており、今までできなかった分思い切り趣味を語ってしまう。


本当はこんなことをしてはいけないのに楽しかった。


そして異性であっても緊張しないのは彼が私よりも非力であるからだ。正直弱すぎてびっくりした。めちゃ気分がいい。


彼の態度を見るに自分が相応以上に評価されているのをあまり良く思っていない傾向がある。気恥ずかしいのだろうか?


つまり私と同じように……最弱でありながら最強を演じているタイプだ。とても親近感が湧いた。


彼はとても優秀であり、私には想像のつかない発想がどんどん出てくる。あの漫画の件だってそうだ。


とても面白いし興味深い話をよくも考えつくものだ。


妄想力なら誰にも負けない自信があった私が敵わないと思ったのは正直悔しかった。


だからこそ、エクシリオならルーちゃんを魔王の宿命から解放できるのではないだろうか、そんな希望を抱いてしまう。


そう、エクシリオは魔王軍を変えようとしていた。確かに彼の頭脳には無数のアイデアが眠っている。物語の『続き』を利用して魔王軍を支配しようする。荒唐無稽な作戦を彼は成し遂げようとしていた。


そしてユーシャインをプロデュースしたスシデウスも彼なのだ……本物の天才である。


もしかすればエクシリオなら、古くから続く宿命。勇者と魔王の仕組みを変えてくれるのではないだろうか、ルーちゃんを救ってくれるかもしれないのだ。


だからこそ、エクシリオに私達の秘密を打ち明けようと思った。


◇◇◇回想が終わり現在へ


私はルーちゃんを説得する。彼の協力が得られればこの魔王軍は必ず変えられるのだ。


ルーちゃんにはなんとしても『精神干渉装置』を解除してもらう必要がある。


このままではエクシリオは廃人になってしまう。もしかしたら、まだ、耐えているかもしれない。


「……ルーちゃん。聞いて! 彼はエクシリオ・マキナ。元勇者であり、魔王軍の参謀役で……」


「既に知っておる。所詮非力で無能な雑魚じゃ。ただ少し頭が回るだけの役立たずなのじゃ!」


「違うんだよ! ルーちゃん! もしかしたら……戦わなくていいかもしれないんだよ……人間領と魔族領の問題は平和的に解決できるんだよ!」


そう、エクシリオは人間領でユーシャインを作り、魔族領で漫画を作った。


恐らく彼の狙いは娯楽による争いの終結。魔族領でアイドルライブを行い。人間領に漫画を売ること……その発想に至った彼が今この場で倒れてしまっては、全てが終わりになる。


「そんなものを望んでおらぬ……妾は勇者ジエイミ・メダデスとの闘争を望む……そして勝利し……人間領も支配する! 妹ならばわかるじゃろう!」


「分かってるよ……ルーちゃんの考えていることなんて全部……」


ルーちゃんは私に似て不器用なのだ。ただ敵を滅ぼす方法しか思いつかない。私だって同じだった。


「……戦うことが嫌だって! でも他に方法がないからそうしているだけだって! ルーちゃんは優しいって! 彼ならきっと……一番犠牲の少ない方法で解決できる! エシリクにはその力があるんだよ!」


だけどルーちゃんは頑固だ……いくら説得しても頷いてくれない。


「えぇい! うるさいうるさい! だとしても、エクシリオは必ず妾達の秘密に気付く! そうなれば全てが終わる!」


「だからもう! 魔王でなくたっていいんだよ!」


それが、私の本心だった。ルーちゃんに魔王をやっていて欲しくない。


☆☆☆その一言で世界は変わる。


ガヤガヤしている。


実は……とっくに意識を取り戻していた。


目覚めると会話が始まっていたので起き上がるタイミングを失いずっと寝たふりをしていたのだ。


大体の事情は先ほどの会話を聞いてて察する。


魔王エボルーテ・ドロプスと四天王トークビドウは双子の姉妹だ。


そしてビドちゃんの目的は自分を利用して、ルーちゃんを魔王の座から退かせること。


そもそも、なんで自分が勇者と魔王の争いを終わらせるとか、大層な理想を掲げていることになっているのだよ……意味分からない。


自分は死にたくないから仕方なくやっていただけなのに、どうしてこんな話が大きくなっているのさ……


しかも、ビドちゃんに対する自分の評価が過剰に高いし……


――――だけど問題はそこじゃないんだ。


正直に言えば閉じ込められた精神世界での地獄が余程マシである。


現実世界がよっぽど辛い。ずっとこのまま寝たふりを続けたかった。


でも……起きなければならない。だって、彼女に言わなければいけない一言があるから……


ちょうど今、意識を取り戻したかのように起き上がった。


「ありえない……あの精神世界を抜け出したのか!? そんな奴は今までにも一人もいなかった!」


めちゃ驚いているし……あの精神攻撃は別人記憶だしそんな効いていない。でもそこは問題ではないのだ。


「流石……私は信じていたよ! よかった~エクシリオ……」


ビドちゃんも笑顔を取り戻した。


「……」


言い出せない。言ってしまえばきっと……終わってしまう。


――彼女にどうしようもない真実を突きつけてしまうのだ。


「――さっきから」


この状況を自分はまだよく理解できていない。だって……


「《《どうして一人で会話をしているんだ》》」


「え?」


そうだ。


《《この場には自分とビドちゃんしかいない》》。それが現実だった。


「な、何を言っているのエシリク? ルーちゃんはそこにいるでしょうが! バッカじゃないの!」


「気でも狂ったか! エクシリオ! 妾はここにおるぞ!」


彼女は魔王の言葉も喋っている。


「ねえ!」「ねえ!」


所謂一人二役を彼女は演じていた。


さっきからずっと……自分は彼女の独り言を延々と聞かされていたのだ。


「え……そんなことって……ありえないありえないありえない……」


彼女は一体……なんなんだ?

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