第59話 四天王はパラダイムシフっちゃう!
◇◇◇推しとの出会い
『在感抹消装置』を使い人間領へ足を踏み入れる。ちなみにトークビドウは魔王城に『威圧感倍増装置』があればどうとでもなった……元々喋らないし。
魔族領と違い人間領は活気に満ちていた。異なる種族であるから文化はとても新鮮である。
エクシリオの情報を求め、カクセイラン王国の街を歩いていると、聞きなれない音楽が流れていた。
「……これは」
なんだろう。明るくテンポの速い曲調は、この国の吟遊詩人だろうか、しかしなんて心地よい音楽だ……
自然と音楽の流れる方へ向かうと、人間が三人舞台に立ち踊っていた。周りには数人の男性が賑わっており、この音楽に対し合いの手を送っていた。
「「「ラブラブハートをあげちゃうゼット~」」」
完璧なダンスと歌。衣装だって華麗で私の理解をとうに超えていた。
「これは……なに……」
声を漏らしてしまう。この熱気、そして三人の輝く美しい姿に私は目を奪われてしまう。
音楽が鳴りやむと観客は雄たけびを上げた。
そして真ん中にいる少女が喋り出した。
「どうも! ユーシャインです! 私はコルルナです!」
勇者イン? これが彼女達を形成するメンバーの名前だろうか……流石は勇者信仰が根強い国である。
「愛してるよーコルルナちゃーん!」
突然活気に満ちた男性が告白をする。え……本当にナニコレ。
「ありがとうございます! 私もファンの皆様が大好きです!」
「みんなー盛り上がってる? お姉さんだよ!」
……凄く胸が大きい女性が、ものすごく胸を揺らしている。
なんだこれは……本当に……私にはないモノだった。
男性たちに負けず劣らず私は彼女の胸の虜になっていた。
「アルシュル姉さ~ん!」
姉さん……姉さん……凄い胸だ。特に胸が凄い。胸だ。
「はーい! お姉さんだよ~! てへぺろちょんま!」
てへぺろちょんまとは、一体何なのだろう。さっぱり分からない。
「おい! アルシュル! そんなに胸揺らしてないで早く次の曲行くぞ! 嫌味かよ……貴様ぁ!」
獣人の少女は小柄であり、胸もそんな大きくない。なんだか親近感が湧く。
「あら~イルミルちゃん~かわいい~」
すると、アルシュルという女性は、イルミルという獣人に抱き着いた。
「がががが! 放せぇ~」
なんだか姉妹みたいだ……いいな。
すると、次の曲が流れ始める……私はエクシリオという目的を忘れただただ、彼女達に夢中になっていた。
やがて歌は終わりサイン会が開かれるらしい。どうしようめちゃ行きたい……
軍資金はある程度用意してきたが、思ったより高値である……これは一人しか行けない。どうしよ……飯を減らせば行けるかな?
一番気になる胸の大きなアルシュルのサイン会に行くことに決めた。
私はマントを被っており、魔族であることもバレてはいけないので、そのまま行く。
やはり、胸のせいなのか並んでいるのは男性が多かった。
「あら、初めましてだよね……お姉さんのとこ来てくれたんだ! ありがとね!」
満面の笑みを見せられる。とても良い匂いがしたし、めちゃ顔綺麗だ……やばいやばい……近くで見たら凄い胸だ……どうなってんの……やばい。ほわぁ!
「あ……あっ……あっ……」
緊張で何も言えない。私にとってルーちゃん以外と会話することなどなかったから。どう喋ればいいのか忘れていた。
「大丈夫。お姉さん待ってるから落ち着いて落ち着いて……お名前は?」
このサインには私の名前を入れてくれるらしい……流石にメルというのは不味いので、ビドにしておこう。
「ビ、ビビ……ビドです……」
「ビドちゃんね! これからもお姉さんたちのユーシャインの応援よろしく!」
そして、他のファンには書いてなかった、ハートマークを付けてくれた。
「あっ……あ、あ、ありがっとうございます、すすすす!」
かなりの小声だけど言えた……だめだ私。ユーシャインに釘付けだ!
完全に本来の目的を忘れていたことを魔王城へ帰ってから気付くのであった。
◇◇◇推し活
それから私はビドちゃんに人間領の偵察と嘘をつき、ユーシャインのライブを見に行っていた。
そんなある日のことだ。私の部屋でルーちゃんが人間領のポスターを見せてきた。見るからに武道大会のポスターである。正直戦いにはあまり興味がなかった。
「ビドちゃんよ! どうやら、この武道大会に勇者が出場するらしいのじゃ!」
「確か今の勇者ってジエイミ・メダデスだよね? へぇ……」
ジエイミ・メダデス……実力は確かであるが、いまいち存在感がない。確かラースムドウに一度敗北したとか……でも、あの減速魔法は厄介だし、仕方ないか。
やっぱ彼女は大したことない。
「妾見に行きたいのじゃ今の勇者がどれだけの実力なのか気になるのじゃ!」
「危ないし、普通にばれたら大変だから、それも部下に任せてルーちゃんはどっしりと魔王城で構えていてほしいよ」
「嫌じゃ、嫌じゃ! そろそろ妾も活躍したいのじゃ!」
「はあ……大体ね……こんな武道大会なんか物騒なのは……ほわぁぁぁあ!?」
ポスターをよく見るとユーシャインの文字が見える。あれ、これもしかして休憩時間にライブやる感じなのかな……行くに決まってんじゃん!
「よし行こうルーちゃん。それまでに全力で仕事を終わらせる!」
「およ、急にどうしたのじゃ……?」
今のジエイミ・メダデスなら、ビドちゃんは簡単に勝てる。だけど……不可解なエクシリオ・マキナの存在が、その一手を阻止する。
もしかしたら、彼の行方は未だ掴めていない。いったいどこで何をやっているのかも不明である。だから……ルーちゃんが公の場に出ることを避けた方がいい。
ルーちゃんの実力を確かめるためにジエイミを捨て駒にしている可能性だってある。彼
「た、確かに勇者の情報を得るのは大事だし! もしもの時は四天王に戦わせる! ルーちゃんは絶対に出しゃばらない! それでいいね!」
「怖いぞ……ビドちゃん……」
ルーちゃんは納得してくれた。




