第58話 トークビドウの心の中
◇◇◇四天王の物語
それから私は四天王として、ルーちゃんでは気付けない魔王軍内の障害を秘密裏に取り除いて行く。
噂が広まるにつれ、私は最強の四天王と呼ばれるようになった。
根も葉もない噂で満ちていき、誰もが最弱な私を恐れていく。
「あちらにいるのが最強と言われるトークビドウ様だ。威圧感がやはり違う……」
嘘で作られた最強。だけど皆が信じているのならそれは本当なのではないだろうか。
他の四天王ですら怖気づいている。ただ唯一私を恐れないのは真実を知るルーちゃんだけ、私はこの関係がとても心地よく感じていた。
職務の合間に絵を描いている。元々妄想を抱くのが好きだった。
最初に描いたのは魔王戦記。紙に纏め上げ一冊の本にした。
最強の魔王であるルーちゃんは人間達をバッタバッタと倒していく。最後は勇者に打ち勝つハッピーエンド。とてもすっきりする話だ。
私はの頭の中には無数の世界が広がっている。素敵な異性と付き合う話だったり、優秀な部下達の話だったり、だけどそれは空想に過ぎない。
どうせ、私みたいなの面倒な相手を好きになってくれる異性など存在しない。
トークビドウとして生きるからには、そんなものを望むは間違いだと分かっている。(なにせ男って設定だし)そもそも私はルーちゃん以外と話すことだってできない。
誰にも気づかれない様にしていたのだけども、ミスで部下に本を見られてしまい『十二の刺客』の噂が広まってしまった。
どうにも本当にいるものだと勘違いしてくれたらしく、更に私は恐れられる存在となる。
正直妄想を見られたのはめちゃ恥ずかしい。何度も部屋で悶えた。
◇◇◇魔王伝説
この魔族領には魔王伝説が存在する。私は魔王城の書庫でその物語を改めて読み漁った。
「……」
この物語は最後に勇者と相打ちになり魔王が死亡する。
そして、勇者が誕生した時代は必ずと言っていいほど、同じ結末を辿っていく。
「……大丈夫だよね」
少しの不安が私を押し寄せた。
ルーちゃんは最強なんだ。私が信じないでどうするんだ。
私にとってルーちゃんがこの世界の全てだ。あの時救ってくれたから、今こうして四天王として生きていけている。ずっと……ルーちゃんは私を想ってくれた。
私もルーちゃんを想っている。それほどまでに双子姉妹の絆は強い。
でも、少しだけ私は考えてしまう。
もしルーちゃんと私が何にも縛られない普通の少女として生まれてこれたなら、どれだけ幸せだっただろうか……
魔王として振舞っている時に時折見せる切なそうな顔。
ルーちゃんは本当は優しくて、戦いが嫌いな少女なのだ。
でも、魔族のみんなのため、そして私のためにずっと努力をしてくれている。
魔王であるからビドちゃんは数奇な運命に巻き込まれてしまった。勇者と戦う宿命を背負って生まれてきた。例えいくらルーちゃんが強くたって、この先失うものは出てくるはず。
いくら心配の声をかけてもルーちゃんは『大丈夫じゃ』と言う、それが魔王だから。
絶対にへこたれないことを私は知っている……ルーちゃんは強いんだから。
◇◇◇エクシリオ・マキナ
しばらくの時が経ち、人間領では勇者の存在が現れたとの情報を耳にする。
名を『エクシリオ・マキナ』どうやら、アークジャドウがダンジョンで戦ったらしいが、未知数な力に怯え逃げてきたらしい。
彼曰く『ステータス隠蔽』をしており、見たことのない魔法を使うらしい。
そして本来ならあり得ないほど弱いステータスをしており、それが不安を煽ったのだろう。まさか勇者がそんなステータスなわけがない、何もかもが未知数であると……
『異質な勇者』とアークジャドウは語った。
『最強』の勇者ではなく『異質』な勇者。そこが私にとっての不安材料だった。
単純に強いだけの『最強』ならルーちゃんが負けるはずがない。
だが、何をしてくるか分からない勇者となると対策が浮かばない。常に相手の出方を伺うしかないのだ。
私にとって、エクシリオ・マキナという勇者はただただ、不気味な存在であった。
しかし、少しするとエクシリオ・マキナは突如魔王軍に襲われ死亡したとの情報が出回る。
――――そんなはずはない。真っ先に疑った。
魔王軍の行動はおおよそ把握していたが、エクシリオ・マキナを倒したとの情報は一つもなかった。
だからこそ、これはエクシリオ・マキナによる死の隠蔽であると考えるのが妥当だ。
なぜ、彼はその行動を取ったのか……やはり理解できない。
その後、『ジエイミ・メダデス』という少女が彼を引き継ぐ形で勇者になったと聞く。彼女は歴代でも最強の勇者と言われているが、ただの最強なら恐れることはない。
それよりも、死亡したとされるエクシリオ・マキナを恐れていた。恐らく裏で何かを操っているはず。
その頃、裏で繋がっていた勇者機関ですら、彼を制御できていなかったらしい。
彼を判断するにはあまりに情報が少なすぎる……一度私は人間領に出向かなければならないと判断した。
私は大抵の相手を見ただけで理解できる。これは辺境の村で生き残るために必要だった能力だ。できなければあの場所で何回も死んでいたに違いない。
理解できない相手を恐れてしまう。無知こそが私の恐怖なのだ。
だからこそ、エクシリオ・マキナを私は理解する必要がある。




