第57話 彼女が四天王になるために
◇◇◇新たな名前!
魔王軍へ迎えられることとなりエルちゃんの権力で四天王を務めることとなる。
どうやら独断行動をした四天王の一人『刻焉のオルグエンドウ』が、とある人間によって倒されたらしい。
私が四天王をするにはあまりに実力がない。決定的に魔力量が欠けているのだ。そのことをエルちゃんに告げても、ガハハっと笑っていた。
「それでも、妾はメルに四天王をやってもらいたいのじゃ」
でもエルちゃんは私に四天王の座を与えた。
「う~んでもなぁ……私じゃ務まらないって。ほんっと雑魚だよ? びっくりするぐらい弱いよ!」
万が一にも私が双子の妹であることがバレてはならない。顔を見られるのも不味いので常にマントを被ることにした。
声からも特定されかねないので私は喋らない。
私の部屋でエルちゃんとマントのデザインを考えていた。できることなら威厳があるようなものにしたい。
私は一枚の絵を描き上げると、エルちゃんは驚いていた。
「これがお主の姿か! かっこいいなぁメルよ!」
「これからは、その名で呼ぶのもやめといたほうがいいって、何か別の名前で呼ばないと……」
両親に私の存在が知られれば、確実に排除しようとする。魔王は二人もいらないのだ。
どう考えても私が魔王になれるとは考えられない。ただエルちゃんの傍にいたいだけで魔王軍に入った。
「どうしてじゃ? 二人きりの時ぐらいはいいじゃろうに? なぜだめなのじゃ?」
最強で無敵な魔王にも弱点が存在した。
私の姉は思ったより馬鹿であった。恐らく、駆け引きなどせずに簡単に勝ってしまうから、考える必要がないのだろうけど……そこは私がしっかりしなければ……
「もし、この会話が聞かれていれば、私とエルちゃんの関係が勘繰られてしまう……だから、隠す必要があるんだよ」
「……? そしたら殺せば良いじゃろうが。口封じじゃ!」
だからこそ、私は彼女の参謀役となることにした。
「もし、それが全体に広まっていたとして、全員殺したら魔王軍が終わっちゃうから!」
「それもそうじゃ! メルは賢いのう!」
すると、エルちゃんは頭を撫でてくれた。
「もっと撫でて……えへへ……」
「よしよしよし」
髪をわしゃわしゃされる。
「わはは~! くすぐったい!」
私とエルちゃんは仲が良かった。一緒にいられなかった時間が二人の絆を強くしたのだと考える。
「やっぱかわいいの~メルは!」
抱きしめられると凄く気持ちがいい。
「エルちゃんの方が可愛いって……私なんかと違っていつも笑顔だし」
「でも、妾といる時は、メルも笑っておるじゃろ? なら同じじゃ……だって」
そう、私達は双子だ。
「この世でただ二人きりの姉妹なのじゃから!」
「うん。私もエルちゃんが大好き……ずっと傍にいたい。ずっとずっと!」
私はエルちゃんを抱きしめる。何としてもこの姉妹の絆だけは守らなくてはいけない。
決意をしたのがこの時だった。
魔王軍も一筋縄ではいかない。先代魔王派の配下だっているはずだ。エルちゃんを狙う連中を排除しなくては!
恐らくエルちゃんは誰のことも疑わない。必要がないからだ。だけど……どんなに強い彼女であっても身を亡ぼす危険がある……それが裏切りだ。
しかし、私に力はない。あくまで秘密裏に行動する必要があるのだ。
以前『存在感抹消装置』を作っていたが、もし、エルちゃんの様に強大な力を形だけでも再現できるのなら、力を得られるのではないだろうか……
「あ!」
そこで閃く。エルちゃんの魔力を再現し、その強大な威圧感を保存できるとすれば……私にも強い四天王を演じることが出来る!
「どうしたのじゃ?」
「エルちゃん……私は四天王になる。名前は……『トークビドウ』何も発することなく誰もが恐れる最強の四天王。それがこれからの私だよ!」
頭の中で無数の思考が巡り出す。その魔力。その特徴。全て憧れのエルちゃんの物だ。
『威圧感倍増装置』を私は作ることにした。
「最強の魔王エボルーテ・ドロプス。最強の四天王トークビドウ。それが、魔王軍での私達の関係だよ」
「トークビドウ……何か凄い名前じゃな! でもどうやって最強の四天王にするのじゃ?」
そこは私に任せておけばいい。騙すのは得意だ。
「だから、これからは『ルーちゃん』と『ビドちゃん』と呼び合お?」
「ビドちゃんか……可愛いらしいの」
「これからはルーちゃんって呼ぶね!」
これが私が四天王になる前の流れであった。
◇◇◇四天王沈黙のトークビドウ
王の間で私は四天王としてのお披露目が開かれることになる。
私は巨大なマントと威圧感倍増装置を羽織り歩く。
「いくら先代が死んだからって、全く使えない奴を寄越すのはやめてほしいよなぁ~俺が殺しちゃおうか?」
彼は不沈のジャークゲドウ。人間族の不幸を好む変な奴。
「……ほほう、無能力ですか……いいや、これは力を隠しているだけ……それも相当の実力者ですね」
影縫いのアークジャドウ。私の能力見破られているけど勘違いしてくれてよかった……
「歩くの遅いな……俺だったらもうすでに終わっている」
時減のラースムドウ。何かと忙しいと聞いている。
「さぁ、これが妾が認めた新たな四天王! 名を『トークビドウ』じゃ!」
そして、全員の視線が向いた瞬間に威圧感倍増装置を発動させる。
「「「「……!」」」」
これはルーちゃんの魔力を元に作ったため、彼女と同等かそれ以上の威圧感を発生させる。ぶっつけ本番だ!
その異常な威圧感に四天王も驚きを隠せていない。
「……先ほどの言葉撤回する。すまなかった」
ジャークゲドウは頭を下げる。
どうやら、上手く働いたらしく、周りは私に対する恐怖で支配されていた。
気分が良い。ここにいる誰にも私は勝つことができない。それが事実なのに、誰一人私に歯向かうことが出来ないのだ。
こうして私は孤高の四天王『沈黙のトークビドウ』として君臨した。




