第56話 魔王の正体は……!
◇◇◇謁見の間にて
私の名はトークビドウ。魔王軍四天王である。
エシリクがルーちゃんに呼ばれたとの噂が魔王軍に広まっていた。
ルーちゃんに呼ばれる原因は一つしか心当たりはない……私は、彼が向かったとされる謁見の間へと向かう。
ルーちゃんとは魔王であり、私と古くからの付き合いがある大切なお方。そして数少ない魔王軍のユーシャインファンである。(なお、イルミルちゃん推し)
恐らく今回の漫画? というモノを描いたのがいけなかったのか、魔王軍は確かに今変わろうとしている。その変革をルーちゃんは良く思っていないのだろうか……
目的の場所へ辿り着くと、大きな扉を開ける。
エシリクは気を失って倒れている……
「エシリク!」
「誰が入って良いと言った。例えビドちゃんでもそれは赦されぬ行為じゃ!」
玉座にルーちゃんが座っている。今の彼女は完全に魔王モードだ。エボルーテ・ドロプスとして私と会話している。
「エシリクに何をしたの! ルーちゃん!」
「ずいぶん此奴の肩を持つではないかビドちゃん。だが、此奴はこの魔王軍を変えようとしている悪しき者。生かしてはおけんだろう。だから精神世界に閉じ込めてやった。ビドちゃんの作った装置でなぁ!」
これは……『精神干渉装置』相手を仮死状態にして、理想の世界と地獄の世界を見せる拷問用具。
この装置を使用した人間は廃人になるのみ。完全に心を壊す装置だ。エシリクが……耐えられるわけがない……例外はなく壊れてしまうのだ。
「どうしてそんなひどいこと! エシリクは私よりも非力なんだから、ルーちゃんならどうとでもできたのに! 心を壊さなくたっていいでしょ!」
「そんなの決まっておるじゃろ……簡単なことじゃ」
すると、ルーちゃんは強く気を失っているエシリクを睨みつけた。
「……妾の《《大切な妹》》を誑かした……赦すわけがないのじゃ!」
そう、私とルーちゃんは《《双子の姉妹》》だ。魔王エボルーテは私の大切な双子の姉である。
「ルーちゃん……」
◇◇◇双子の姉妹
私は先代魔王の双子姉妹の妹として生まれた。姉は『エル』そして私は『メル』と名付けられる。双子は後継ぎ争いを回避するため、後に生まれた妹を殺す風習があった。
しかし、私には魔王としての才能がなかった。本来備わっているはずの魔王の力は私の分も全て姉に引き継がれる。だから私には魔力も戦闘力もなかった。
『失敗作』『出来損ない』両親は私に失望していたらしい。
そして姉は歴代でも類稀な才能を持つ次代の魔王として両親から大切に育てられた。
そのせいかおかげなのか、生まれてすぐに私は殺されず、魔族領の辺境の村に捨てられてしまう。なんてことだ。めちゃ可哀想……私。
魔力もない私の居場所はどこにもなかった。誰に拾われたか分からないがすぐに捨てられたことだけは覚えている。
数年が経っても周りからは雑魚や無能だと言われ続けた。
だけど、何とか生きてきた。沢山酷い目に合ったし、痛い目にもあった。
でも私は人を騙したり、物を作るのが得意だった。幸せな世界を妄想し、そのためには何が必要なのかを考え、魔力を封じ込める技術を開発した。
元々魔力が込められた魔石というものもあったが、特定の魔法を使うまでには至っていない。
私は魔力を封じ込めることにより、少ない魔力でも保存が効く、装置を開発する。
盗みを働くために『存在感抹消装置』を開発した。その効果は絶大で誰も私に気付くことがなくなった。
こんな非力な私でもこの最悪な世界で生きていく方法を見つけることが出来た。
それからは痛い目に合うことも無くなり、盗んだりして食を繋いだ。
だがそんなある日のことだった。
「やっと見つけたぞ……」
存在感抹消装置を使っていても気付かれる、今までそんなことはなかったはず……盗みがバレた? 逃げないと……捕まればまたひどい目に合う!
「ど、どどど、どうして、わ、わ、私に気付いたの……貴方は……あれ?」
私と瓜二つの顔をした少女。豪華な衣装を纏い大きなマントを覆っている。恐らく高貴な存在であると一目でわかった。
「あ、貴方は……私?」
「妾はお主の『姉』じゃ! 助けに来たのじゃよ。愛しき『妹』のメルよ!」
彼女は泥水で汚れていた私を嫌な顔せずに抱きしめてくれた。
「今まですまんかった……ずっと辛かったじゃろ。メル……でももう大丈夫じゃ」
そこで、私の正体について知らされた。双子の真実。魔王の娘であること。捨てられた理由も大体そういうものだという想像はしていたけど、こうやって姉であるエルの口から聞かされると堪えるものがあった。
「辛かったよぉぉぉぉ!」
私はエルちゃんの胸の中で泣いた。今までだって沢山泣いてきたけど、それ以上に泣いた。あふれ出る鼻水もエルちゃんに大量に擦り付けた。
エルちゃんは既に魔王として君臨しており、実力も両親をとうに超えていた。
まさしく誰もが思う歴代最強の魔王。エボルーテ・ドロプス。それが魔王としてのエルちゃんの名だ。
「メルよ! お主はを迎えに来たのじゃ! そして家臣になるのじゃ!」
「私じゃ無理だよ……だって何の能力もないもん」
元々の魔力量は姉どころかその辺の民にだって遠く及ばない。そんな私が魔王軍で役に立てるとは到底思えない。
なのに、エルちゃんはそんな私を魔王軍に引き入れてくれた。
「そんなことはどうだってよい。なにせ妾は最強じゃ。絶対に負けることはないのじゃ! それなら、妾の家臣には何が必要か分かるか?」
「それは……」
「支えてくれる大切な存在じゃ、家族……だから傍にいてほしい。メ
ルよ」
それが私とエルちゃんの出会いだった。




