第54話 エクシリオ・マキナの過去
☆☆☆目が覚めると
……目を覚ます。あれ、死んだのか……確か自分は魔王に対面して意識を失ったはず。
でも自分がいる場所はいかにも田舎臭い村だった。明らかに先ほどまでこんなとこにいた記憶がない。
もしかして魔王に追放されたのか? 『お主は魔王軍に相応しくない』とか……でも、それなら意識ある時に言われるよな……
それになんだこの体の違和感。何か背丈が小さく……あれ、身体が思い通りに動かない……
「よっしゃぁ! 今日も俺は最強! うぇいうぇい!」
鏡に幼少期のエクシリオ・マキナが映される。
そこで大体の事情は察する。ここは恐らく精神世界もしくは夢の世界だろう。先ほどの記憶から考えれば、魔王による攻撃を受けたと捉えるのが妥当だろう。
そして自分はエクシリオ・マキナに乗り移る前の記憶を体感している。
果たしでどうすれば抜け出せるのか……そこを考える必要があるのだ。
「あら、エクシリオ」
そこに母親と思しき女性が現れる。
「あーかーさんだー! 俺は最強の勇者になるぜ!」
エクシリオ・マキナはブイレブ村で生まれ、飛び切りの光魔法を使う少年だ。この村では魔法を使える者は希少らしく百年に一人の天才としても称された。
年の近い子供からは凄い凄いと持て囃され、地元じゃ負け知らずだった。
「エクシリオは凄い! この村でも一番強い最強の戦士だ!」
子供でありながら、大人と戦って余裕で勝てるほど強い。
これこそ転生主人公の本来あるべき姿だと思うくらいにエクシリオは最強だった。
だけど……
恐らく勇者機関がそう仕向けたのだろう。エクシリオを最強の勇者だと思わせること、こんな無力な奴に何の力があるというのだ。
光魔法だって威力のないモノだし、自分の様にうまく使いこなしているわけでもないのに勝ち続けている。
「フラッシュ!」
「うわぁあぁ!」
村最強と言われた剣士ですらエクシリオに敵わなかった。恐らく手を抜いて負けてくれたのだろうが……
「やっぱ俺は最強っしょ! ウェーイ! これで女子にモテモテだ!」
どこのパリピだよ……エクシリオは普通の俗物であり、女子にモテたいという目標があった。
「ミルコちゃん~付き合おうぜ~ウェーイ」
「ごめんなさい。エクシリオ君にはもっといい相手がいるから!」
しかし、エクシリオが気になる女子に告白してもフラれている。
「まぁいいか、じゃあ、次、トルミちゃん! 付き合おうぜ~ウェーイ!」
切り替え早いな! エクシリオ! 正直そんな告白しまくるパリピな奴はモテないだろう。いくら強くたって……
「全く、どうしてみんな俺という最強の魅力に気付かないんだろうなぁ……この村の連中見る目なさすぎだろ? 俺最強なんだぜ? 勇者になる男だぜ?」
普通にうざいんだけどエクシリオ。
エクシリオも成長すればするほど、そのうざさが増していき、今と変わらない姿になる頃には完全なバカとなっていた。
モブコザ村の連中からは痛い奴だと思われていた。いくら強くても人間性がまともじゃなければ引かれるのも当然だ。
同い年の女子たちは皆結婚していき、自分だけが取り残されていく、それでもエクシリオは強さを求め続けた。
強くならないと、モテない。そんな信念に囚われて。
☆☆☆マジョーナとの出会い
そんな時に、モブコザ村にある女性が訪れる。
「初めまして、貴方がこの村で唯一の魔法を使うことが出来るエクシリオ・マキナですね。私はマジョーナと申します」
マジョーナだ。最初に会った時と同じように年魔女である。
「え、おばさんだれ? もしかして俺に惚れちゃった?」「いや違いま――」
「――あぁ皆まで言うな……俺はかっこいいからね、まぁ、貴方が惚れるのも納得がいく。見る目があるってやつだよ。ウェーイ!」
ハイタッチを申し込むの、マジョーナは拒否をする。
「っち」
めっちゃ舌打ちしている。恐らく彼女が勇者の捨て駒として彼を選んだのは正直死んでも誰も悲しまないような奴だからだろう。
「おめでとうございます。貴方は勇者に選ばれました。私達と共に魔王から世界を救いましょう!」
「あぁ、知っている。俺も勇者だと思ってたんだよね、ところでさ、マジョーナの知り合いにかわいい子いる?」
「え……?」
「俺ってこの村でも最強だしさ、誰も負けたことないんだよね~うぇ~い! 可愛い子勇者パーティーに入れないんだよね!」
え、出会い目的で勇者やろうとしてんのエクシリオ……うそぉ?
「あ、えーっと、はい。いますよ。私の元パーティーにはかなり胸が大きい子がいましたね。もし勇者になってくれたら紹介しますよ?」
目を反らしながら言っているあたり絶対嘘だろう。こいつの性格からして女友達少なそうだし、美人と思えるメイドさんとも仲は良くなかっただろう。
「分かった。入ろう、魔王も倒してやるぜ」
簡単に騙されるエクシリオであった。
そしてエクシリオはモブコザ村を飛び出し、冒険を始める。
その後王都を訪れ、目の入った好みの女に声をかけまくるも撃沈し続ける。
そんな中ギルドで一人迷っている少女がいた。それがジエイミであり、勇者の名前を出すとすぐに仲間になった。
「よろしくお願いします! エクシリオさん!」
(こいつ絶対ちょろい……こいつなら……)
下卑た笑みを見せていた……こいつは死んでいいんじゃないかな。
それが自分がエクシリオに乗り移る前の記憶だった。




