第52話 推しとの対面です!
☆☆☆ビドちゃんパニック!
「~~~~~~!」
声に出せない悲鳴を上げている。最推しとの対面に緊張しまくっていた。
「スシデウス君もお久しぶりね。事情はなんとなくコルルナちゃんから聞いたわ」
コルルナが事情を説明してくれたようだ。助かる。
「あぁ、一応今は魔族領でいろいろやっている。アイドル作ろうとしたけど却下されたな」
「え~お姉さん達差し置いて他の子もアイドルにしようとしていたの~浮気者~」
「いやいや、却下されたって、だから別の娯楽を今やっているけど……」
「流石はスシデウス君! ところでそちらの彼女は……」
「~~~~~!」
アルシュルの興味がビドちゃんに向かう。
「あれ……確かあなたは……ビドちゃん?」
名前を知っている……あっ、確かサインの時に名前聞いてたもんな。
「あっ! ほわ! ほわわわわわわ! わ、わたし……ほわ!」
名乗ろうとしても名前すら言えてないじゃないか、コミュ障が発動してしまっている。
「いつもライブ後のサイン会に来てくれてるよね。何も言ってくれないけどお姉さんちゃんとわかってたよ! いつも来てくれてありがとね! ビドちゃん!」
え、アルシュルがファンをよく覚えているって聞いてたけど、ビドちゃんのことも分かっていたのか……それはファンにとって死ぬほど嬉しい事であり……
「きょえぇぇぇぇぇぇ!」
示現流に負けないほどの奇声を上げる。
「落ち着いて、お姉さん待ってるよ? それに、普段しているマント取るとすっごくかわいいね!」
確かにビドちゃんは贔屓なしで見れば美少女である。だけどあまりに性格と言動が終わっているので忘れていた。普通にかわいいのだよな彼女……
「アルシュル……そ、その辺にしておいてやれ。彼女を殺す気か?」
ビドちゃんは永遠に悶え続けている。
「あぁぁぁ……」
「あら? どうしたのかしら……お姉さん何かやっちゃった?」
無自覚系たらしかよ、アルシュル。
「とりあえず、ビドちゃん落ち着いてくれ……深呼吸だ。戻ってこい逝くな!」
ビドちゃんを介抱する。
(ど、どどどどど、どうしてアルシュル姉さま……わ、私を認知して……こんな近くで見たのサイン会でも……あ、めっちゃおぱいでかい……し、しかも! かわいいって! 私可愛いって言ってくれてるんだよ! やばくない? え?)
自分に対してはほんと饒舌だなこいつ。確かに推しの前で緊張する気持ちは分かる。
そういう時は伝えたいことをメモに書いておくと良いのだ。いざ対面した時に言うことが飛んでもメモさえあれば、なんとか話せる。
「はぁ……はぁ……やば……何も浮かんでこない……ア、アルシュル姉さま……お、おぱい大きいですね……げへへ、あ! 私なんてことをやばいやばい。今のなしでお願いします!」
こいつ男だったら絶対通報されてるな。
「あら、ありがとう! 胸を褒められるのは凄い嬉しい! でもあなたも立派なものを――」
「ごめんなさい。ほんっと私なんかが話しかけていいなんて、貴方たちは神様なのに……私はほんとにその、ほんとゴミで……あ……死にます。一緒に死んで」
自分の方を向く。
「だから死ぬなって……」
すると自分の後ろに隠れる。
(エシリクが喋ってよ! スシデウスなんでしょ?)
さっき自分のことを神だと崇めてただろうに……薄情な奴め……
「お前、アルシュルと会話できる機会一生ないかもしれないんだぞ? それなのに自分が喋っていいのか? もったいないと思わないのかよ」
(でもでも……あの胸を前にして正気保っていられなくて、だって凄いでかいし……)
お前の胸も相当でかいと思うけどな? 仕方がない……
「彼女からの伝言だ『アルシュル姉さま~マジ最高でめちゃかわいい。天使だしその胸どうなってるんですか~ハグしてください』だってさ」
「いいよ! おいで~」
(だぁ~れもそんなこと言ってないでしょうが……)
「え、え? マジですか? え、いいんですか? ハグしてもらって」
「スシデウス君の頼みだし、それにすっごくかわいいから。ぎゅ~ってしちゃうよ♪ お姉さんハグ!」
すると、アルシュルはビドちゃんを優しくハグする。胸と胸が潰し合ったいた。
「おぉ……これは」
感嘆の声をつい漏らしてしまう。
「あっあっあっ……やばい。めちゃいい匂いするんですけど……天国……めちゃ柔らかい……ぁぁっ!」
そして一度、ビドちゃんは死亡する。しかし、アルシュルの胸により蘇生した。
「どう? 落ち着いた?」
「あ……はい、今、死にましたけど生き返りました……最近枯渇していた姉さま成分が補充できた気がします……やばい、ずっとファンでいます。大好きですアルシュル姉さま……」
「ありがとね! これからも応援よろしく!」
アルシュルは最高のファンサービスをしてくれた。ビドちゃんもきっと満足してくれたはずだ。
☆☆☆彼女の秘密
その後は入ってきたイルミルに一言二言文句を垂れるが、雑な説得をして潜り抜ける。
何はともあれ自分が王国に長く滞在するのは不味いので、魔族領に戻ることにした。
「え……もう帰るの……やだやだおうち帰りたくない。あ、でもここが私の家なら帰りたいかも……」
駄々をこねるなよ……
「お前この家いたら死ぬだろ。アルシュルとずっと一緒なんだぞ? あの短時間でも死にかけたってのに」
「確かに……で、でも、まさかユーシャインの家に行くなんて思ってもなくて! 心構えさえあればまだ辛うじて……でも、あぁ! クッソ可愛かった……同じ空間にいるだけで幸せ……」
本人は喜んでくれる。
「まぁ、これで、満足してくれたか? ちゃんとご褒美になっただろ?」
「それは……うん。ありがと……エシリク」
ビドちゃんは笑顔を見せる。
そこで、お見送りに来たのはアルシュルだった。
「あ……あ……」
ビドちゃんはまさか送りに来てくれるとは思わずに硬直している。
「どうしたんだ。アルシュル」
「ちょっとね、スシデウス君に伝えたいことがあって」
するとアルシュルは自分の耳元で囁く……
「《《彼女は胸に大きな秘密を抱えているよ》》気を付けてね」
「……え」
「それだけ! スシデウス君もそっちで頑張ってね!」
それだけ言うとアルシュルは家に戻っていく。
……え? ビドちゃんが大きな秘密を抱えている……?
「え、何話していたの? 教えてよ。聞いてるのエシリク!」
考え事をしながら馬車に乗る。
「……」
秘密……全く心当たりが、いや、待てよ。
こいつは秘密を無茶苦茶抱えていた。トークビドウの正体であり、ユーシャインのファン。そして妄想を本に書き綴っている変な奴。
だからたとえこれ以上の秘密があったとしても自分は驚かないだろう。
「あぁ~~~疲れたぁ~~~楽しかったぁ~~~まじ最高の時間! お姉さん成分めちゃ補給できた〜〜」
ビドちゃんは身体を伸ばしている。やはりこいつ胸がでかいな……自然と目がいってしまう。やはりこいつの見た目は自分好みである。今にも服がはちきれ……
「あっ!」
バチン! と音がした。そして着ていた服の胸元が破け露出する……あれ?
自分は目をこする。え?
「やべ、あ……さっきアルシュル姉さまにハグされたから……壊れちゃった……」
そう、ビドちゃんの胸に本来あるべきものがないのだ、下には大量に詰められていた肉片らしきものがあった。スライムか? これは……
つまりは、胸を盛ってやがったなこいつ……所謂パッドだ。
彼女の胸は壁であり貧乳だった。




