第51話 ご褒美旅行で帰省します!
☆☆☆帰還!
自分とビドちゃんはカクセイラン王国へ向かう馬車に揺られている。
「ど、どういうことなのよ! なんで、私が人間領に行かなくちゃいけないのよ……! 抜け出すの大変なんだからぁぁ。おうち帰りたい……」
「お前こっそり抜け出してちょくちょくこっち来てただろ。バレてんからな」
その間のトークビドウに関しては、『威圧感倍増装置』を置いておけばその場で機能するため、特に問題はないらしい。影武者のようなものだろう。
それを使い毎回魔王城をこっそり抜け出しライブを見に行っていたに違いない。
「え、なんで分かるの? エシリク天才?」
ユーシャイン好きなんだから分かるに決まってんだろ……サインの量見ても相当ライブに来ているし。
「……もしかして、貴方も同じライブにいたとか?」
頷く。いるも何も……その、ねぇ?
やがて馬車は目的の街へ辿り着く。ここからは徒歩で移動する。
「降りるぞ」
「え~歩かないといけないの~面倒~面倒通り越して沿道~」
ちなみに自分とビドちゃんは彼女が作った『存在感抹消装置』のマントを被っているため、街を歩いていても彼女が魔族として認識されていない。
どうやら、ユーシャインのライブに来るときは毎回この装置を使って存在感を消していたらしい。
確かに人間領に魔族がいるとなれば大問題になる。よりにもよって四天王が来るとなれば大問題だ。
そのハプニングのせいでライブが中止になったりしたら、彼女のことだ一生立ち直れないだろう。
この街に到着したのが夜なのもあり人は少ない。そして目的の場所へ着いた。
古びた屋敷がある。
「え、どこ、ここ? ま、まさか、私を連れ込んで変なことするつもりじゃないでしょうね! 変態! いくら私に勝てないからって卑怯だわ!」
顔を赤くしているのが分かる。こいつの妄想力どうなってんだよ……
「だとしても、なんでこんな回りくどい手段を取る……それに自分の力では無理なことぐらいわかるだろうが」
「だってここ幽霊いるでしょ? つまり人間族があまり立ち寄らない場所で……」
「あぁ、ここに用事があるのは確かだ。人払いという意味では幽霊いるけど」
「え、幽霊怖いんだけど。何、罰ゲーム? 無理怖い。私とエシリクじゃ絶対に負けるから無理でしょ……え~無理無理ぃ~~」
マントの中で震えている。魔族も似たようなものだと思うけど……そこらへんはこの世界の価値観なのだろう。相変わらず掴めないな……
「良いから黙ってついてこい。ここの幽霊は危害を加えないから安心しろ」
扉をノックする。
「はいはい~どちらさまですか~」
扉が開かれるとコルルナが出てくる。
「えっと……」
向かい合っても誰だか認識されていない。存在感抹消装置凄いな。自分はマントを外す。
「自分だ……」
「え、スシデウスさん!? え!」
コルルナは驚いた顔を浮かべる。
「しーーー声が大きい……」
「でもどうして急に。魔王軍に寝返ったって……聞いたような。国外追放されたって……」
え、自分国外追放されていたのか……まぁ魔王軍に入っているのだし仕方がない、ジエイミにも失望されているに違いない。
「それはエクシリオのことだろ。今の自分はスシデウスだ。それ以上でもそれ以下でもない」
完全に屁理屈であるが納得してくれたようだ。
「そうなのですか……おかえりなさい。スシデウスさん? それよりも後ろのマント被った人は……」
「あっっっぅうぅぅぅぅ……っぅぅつうううう??」
ビドちゃんは奇声を上げていた。自分を掴み耳元で囁く。
(え、ちょっと待ってエシリク……どういうことなの? え、コルルナちゃんじゃん。え、めっちゃプライベートなんだけど、クっソ可愛い。てかここ何なの? え、え?)
「とりあえずそのマント取って入るぞ……」
(え、いいの? え? え? てかさっき、スシデウスって……え、エシリクまさかあなたって……)
めっちゃ驚いているのは正直見ていて嬉しい。そういう反応を見せるためのご褒美だ。
「そう、自分がユーシャインを作った。スシデウス・ヤスモアキだ」
「えぇぇぇぇぇええええぇぇえ! あなたが神だったのぉぉぉ!」
めっちゃ驚いている。
☆☆☆推しの家
そしてビドちゃんをユーシャインの自宅に招き入れた食卓のテーブルに座る。彼女はマントを脱いでいるので顔を真っ赤にしていたのが分かる。
「ほ……ほ……ほわ……ほわわわわ……いやちょっと待ってエシリク無理なんですけど。ちょっと……え? これ夢? 泡沫の夢だったりするでしょ、ふざけないでよ! あ、神様に向かってなんてこと言っちゃったの私ぃ~~~あぁ~~」
喜ぶどころかキレだしているし……
「なんで自分を神様って呼んでるのさ」
「だって、あなたスシデウス・ヤスモアキって……ユーシャインをプロデュースした伝説の天才だし、もうそれ神様じゃん……だってあんな素晴らしいモノ作り上げるなんて……いや待ってでも……あの作品だって……」
褒められて悪い気はしない。
「まぁ、自分は天才だ。なにせ元勇者のエクシリオ・マキナでもあるのだから――ふっ」
かっこつける。
「いやいや、それは分かるよ~最初に会った時から気付いてたって~」
「え? バレてたの?」
「え……逆になんでバレてないと思ったの?」
当たり前のような反応をされている。最初からエクシリオって気付いていたのかよ……こわ。
オトザと言い、どうして自分の変装が見破られるのか……ストローク・エシリク名乗っても意味ないじゃん。気付かれてないと思ってた自分がバカみたいじゃないか!
「じゃ、じゃあなんで、自分とあんな喋ってたんだよ。一応敵って認識はあったんだよな? 元勇者なんだし」
「……それはユーシャイン好きに悪い奴はいないからというのは建前で、ユーシャインのこと話せる相手が欲しかったから……あ、これルーちゃんには内緒だよ? めっちゃ怒られるから」
それが本心か、ユーシャイン好きという共通の話題があって助かった。もし違ったら自分積んでたな……
「それよりほんとにいいの? ユーシャインのご自宅にご招待なんて……どんな得積んだらこんな……」
推しの家に来ているのでかなり縮こまっている。やはり、緊張しているのだろう。これもコネの力だ。
「……あら、お客さんなんて、珍しいわね、お姉さんびっくり!」
「……!」
ビドちゃんの顔色が変わる。そう……最推しのアルシュルが目の前に現れたのだ。




