第49話 パクった漫画は好評です!
☆☆☆コミュ障発動!
漫画の完成品を見せるためオトザを呼んでいた。
「やぁ……久しぶりだな、エクシ……エシリク! どうしたんだそんな干からびて……それに」
別の相手がいるのでエクシリオではなくエシリクに戻す。普通にエシリクって呼んでくれよ。
「彼女がその、十二の刺客の……な、なんでマスク?」
当然ビドちゃんも干からびていた。めっちゃ疲労があるのは彼女だろう。いくらコツを掴んだとはいえ、漫画を描くには労力がいる。いくら本人が楽しんで描いているからと言って限度はあるのだ。
「あぁ、そうだ。名前は……アルシュ丸だ」
もういいや、ビドちゃんが名乗ってたアルシュ丸で……
ビドちゃんは素顔を魔王軍に見られたくないらしく自分と同じように覆面を被っている。会話するのが苦手なのだろう。そういう性格ということは理解している。
「よろしくお願いしますアルシュ丸様」
オトザがビドちゃんに挨拶をすると……
「……あ、あっ……よ、よよよよ……よろよろよろろろろろ!」
めっちゃきょどってるぅ! めっちゃ声裏返ってるぅ!
「あ……あぁぁっぁぁぁぁぁぁ!」
そして発狂する。やはり会話が苦手だがもはやそういうレベルじゃなかった。
魔王と自分に対しては良く喋るが他の相手だと無理だろう。典型的なコミュ障だ。
オトザと巡り合わせたのは失敗だったか?
「ど、どうしたんだ? エシリク……急に発狂して俺何か気に障ったか? だとしたら謝罪します! すいませんでした!」
……そうか、オトザは十二の刺客のアルシュ丸として接触している。つまりトークビドウの手下に失礼な態度を取ったと勘違いしてしまった。
四天王トークビドウの恐ろしさは魔王軍では絶対の物であり殺されると勘違いをするのも当然だ。そしてオトザが大きな声になるとビドちゃんもそれに比例して発狂し続ける。
「ほわ! ほわ! ほわああああああああ! ぎゃああああああ!」
「ごめんなさい! ごめんなさい! すいませんでした! だから命だけは!」
「落ち着けお前ら!」
このままではどちらかがストレスで死んでしまいそうなので止める。
「いったん自分が仕切らせてもらう。彼女は一芸に特化した芸術のアルシュ丸。あまり誰かと会話をするのが好きじゃないだけだ。失礼な態度とかは取っていないので安心してくれ。死ぬことはないのだ」
「そ、そうなのか……?」
すると、ビドちゃんはずっと自分の後ろに隠れている。どれだけ苦手なんだよ。
(怖い怖い怖い……やだ。オトザと喋りたくない。エシリクが代わりに喋って? 寿命がめちゃ縮まった……)
耳元で囁かれる。なるほど通訳してくれというわけか……
「彼女からの言葉だ。『こんにちは! 私は超絶美少女アルシュ丸だよ! オトザっちよろしく~うぇーい! テンションアゲアゲっしょ! 好きなものは私に恋する雌豚ど――』いてぇ!」
(――だぁれもそんなこと言っていないでしょうがぁぁぁ! 馬鹿なの!? ほんっといい加減にして! あ~もう!)
めっちゃ怒られました。
「すいません。自分は緊張していたこの場を和ませようと……ふざけた……」
「あ、俺は何も……見てませんし聞いていません!」
オトザは空気を読んでくれる。
「さて、話は戻るが、これがその娯楽だ」
オトザに完成した漫画を渡す。
「これが……ただの本では?」
☆☆☆パラダイムシフト
少しの間オトザは完成した漫画を読んでいた。
「……」
「「……」」
自分とビドちゃんはオトザの読む姿を眺めている……
「え、ゴムになる? ど、どう言うことなんだ?」
鬼を滅するやつとかは、鬼が魔族的な印象を与えかねないので一旦却下した。元居た世界で永遠に連載されるであろうあの人気漫画をパクっていた。
何度も言いたいが異世界に著作権はないのだ。
そしてオトザは漫画を読み終えた。
「お……おい! これ続きはないのか? 早く続きが見たい!」
よし、反応は悪くない、しかしこの場に続きを用意はしていなかった。
「いや、ないぞ、今は別のものを描いていて……」
「ふざけんなよ! おい! エシリク! なんでこんな面白いモノの続きを描かないで何を描くっていうんだよ!」
めっちゃキレられる。
「お、落ち着け他にも面白いものはある! これがダメでもまた別の物語を描くというリスク分散の観点から……!」
「んなわけないだろ! ダメになるわけがない! 早く続きを見せてくれ……めっちゃ面白いんだよこれ!」
するとビドちゃんは自分の耳で囁く。
「アルシュ丸も『あ、あ、あ……それ私も、話の続きが気になる……』だそうだ」
オトザの反応を見るにやはり漫画はこの世界で流行る。娯楽に飢えている魔族領にこの漫画をバラまくことだ。
あの何を考えているかさっぱりわからなかったオトザですら、今考えていることが分かるのだ。
そう、それは『漫画の続きが読みたい』だ。
「さて、反応は良好なようだな。ところで『漫画』というモノは魔族領で流行ると思うか?」
「俺の意見だが、絶対に流行ると思う。これは面白いに尽きる……凄い面白いんだ」
後ろでビドちゃんが得意げな顔になっている。このままいけば魔族領に漫画を流行らせることは可能であるが、さてここからどう、流行らせるか……だ。
漫画を描くことに必死でそれが抜け落ちていた。
「あぁ、ただ問題となるのはどう流行らせるかだ……」
するとビドちゃんが耳で囁く。
「『まず魔族領に出向き一般魔族を装いながら、この漫画を立ち読みさせる……もし続きが気になるのなら売ればいい』とのことだ。ところでオトザ。この続きが読めるとしたらいくら出す?」
「俺は金貨十枚なら出すぞ。それほどこの娯楽には価値がある。生活が壊れるぞこれは……」
めっちゃ高値で売れるやん。確かに手書きの漫画は希少価値的にかなり高額で取引されそうだな。しかし一冊しかないとなると、
「よし、それで行こう。だがこれは一冊しかない……それならオークションにでもかけて高額で……え?」
(その、私の発明品の中に描いたものを複製できる奴があるんだ。光転写装置なんだけど……もしコピーできれば何冊でも本にできるよ?)
なんだこいつ天才か?
「お前才能めちゃあるなぁ! 最高かよ!」
(えへへ……もっと褒めて褒めて)
ビドちゃんは褒められると喜ぶ。
「どうやら方向性は決まったみたいだな。エシリク!」
「あぁ、これから自分たちは……この漫画で魔族領に新たな娯楽革命を起こして見せる!」
こうして魔族領に漫画をバラまく算段は整った
「だがそのために……オトザや他のやつにも手伝ってもらう。製本作業を!」
「製本作業?」




