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第42話 作戦会議は大切です!

☆☆☆魔族について


オトザから魔族について知った。


魔族とは、角が生えていたり肌の色が違ったり、人間よりも身体能力や魔力に長けているらしい。


言わば人間の上位互換的存在というわけだ。


そして魔王とはその魔族たちを統べる存在。圧倒的な力を誇る代表。つまり人間側の勇者的存在である。


ここまでは勇者と魔王のテンプレだ。そして勇者伝説と同じように『魔王伝説』というモノが存在している。


丸々魔王と勇者の立ち位置が入れ替わってるもので、勇者が魔族領に侵略してきたことにより魔王が立ち上がり相打ちで死を迎える話だ。


誰が悪なのか、正義なのかはどうでもいい、時代や捉え方によってそんなものはいくらだって変わる。


しかし、勇者の起こした行動だけがやけに生々しく書かれていた。


勇者の子孫についてだ。よほど女癖が悪かったのか滅茶苦茶やってたらしい。隠し子が何人もいたとかいないとか……事実だとしたらむかつくな初代勇者。


まぁ、魔族サイドだから勇者のことを悪く書くのは仕方ない。あちら側にとっては英雄でもこちらにとっては悪魔でしかないのだから。


そして今の魔王軍についてだ。


魔王の名は『エボルーテ・ドロプス』いかにもラスボスっぽい名前である。人物像は意外とおおらかな性格らしいが……直接会って判断しないことには始まらない。要注意人物だ。


その魔王を守るべく存在する四天王。


『影縫のアークジャドウ』『不沈のジャークゲドウ』『時滅のラースムドウ』


この三人は戦ったことがあるため知っている。二つ名までは知らなかったけど……


そして四天王ということはもう一人いる。


『沈黙のトークビドウ』


そいつが最強の実力者であり四天王を総括している。常に無言で圧倒的な威圧感を放っているらしい。


噂によると……


『彼の被っているマントは全ての攻撃を無効化するらしい』


『彼はスクワット千回を五秒で終わらせたんだぜ?』


『彼が本気を出すと昼が逃げていくらしい』


『彼が喋ったところを見たことがない。口を開けば死が待つのみであるからだ』


話を聞いて回ると伝説が無数に出てくる。魔王の話よりもトークビドウの噂の方が多い。


正直に言えば、魔王よりも強そうなイメージがある。


沈黙のトークビドウ……侮れないな。無言を貫く姿勢のせいで明確な人物像が浮かび上がらない。自分が一番苦手とするタイプだ。


しかし、自分が魔王軍で成り上がるためには四天王との対面は回避できない。無数のパターンを想定しておく必要がある。


☆☆☆作戦会議は大喜利です!


自分は新人を速戦力に変えたことから、教官や幹部オトザのコネに評価される。


勇者パーティーの弱点を見つけた功績(既に知っていた)や、カクセイラン王国との戦闘に貢献したりした。(あくまで参謀として)


メイドさんをこちらでは『瞬殺使用人』と呼んでいるらしい。


彼女の見えざる糸による拘束魔法にかなり手こずったことが理由だ。


糸使いは強キャラであるのが鉄則。拘束攻撃って強いもんね。


「拘束しました……これであなた達は動けません」


しかし、あのメイドさんには弱点が存在する。それは……


拘束された魔王軍の兵隊にはある呪文を伝えておいた。


「布団がふっとんだ!」


「ぶっぶぶぶぶ……しまった! 逃がしてしまいました!」


そう、ギャグである。


メイドさんは一見冷徹女の様に見えるが笑いのツボが赤ん坊クラスである。


拘束から解放された魔王軍の兵隊により、瞬殺使用人はギャグに弱いという情報が魔王軍に広まる。


そこで、指揮官達はメイドさんを笑わせるべく渾身のギャグを考えることとなる。


実力者が揃う中で、この作戦会議は始るのであった……


「紅茶が凍ちゃった……というのはどうだ?」


「いいや! スパイが酸っぱいなのほうがいい!」


……なにこれ。いやほんとになんだよこの状況。


各指揮官たちが己の考えた渾身のダジャレを発表し合っている。


「お金っておっかねーな!」


「「「「「がははははは!!!!」」」」


会議は笑顔に満ちており、意外と雰囲気はいいんだけど……魔王軍の指揮官たちがこんなしょうもないギャグを考えなくたっていいのに……


この空間は狂気に満ちている……厳格そうなやつらがこんなにしょうもないギャグで笑っているのだ……


会議にはオトザも参加している。普通にギャグで爆笑しているあたりこの状況を楽しんでいるな?


「あれ? エシリクは何も発してはないな……この作戦の発案者なのだろ? 凄く強烈なのがあると聞いていたのだが……」


ムチャぶりが来る。オトザはここでも自分を試しているのか……? すげぇニヤリとしている……


「エシリク卿のギャグはあの笑わないと噂のアークジャドウ様ですら、吹き上げたと聞き及んでいます! まさか、機会をうかがっていただけですよ!」


自分の言ったギャグそこまで広まってんのかよ……アークジャドウって、いつぞやの別荘事件で罪擦り付けて以来だな。あの人も笑うんだ。


全員が自分に期待をしている。この状況で滑れば確実に終わる……いや、なんでギャグにまでここまでプレッシャーがあるんだよ!


「そんなものはない。とりあえず真面目に考えるのだ」


そんなものはない。全員ががっかりしていく中で……


「ところで話は変わるが《《四天王について知ってんの?》》」


「「「「……」」」」


ダメだったか……?


「「「「ぎゃははははははは!」」」」


「四天王について知ってんの……お前……何言って。知ってんのう? がはははは!」


オトザも爆笑していた。こいつただお笑い好きなだけなんじゃないのか?


こんなしょうもないギャグで受けるなんて異世界人は終わっているな。こいつらもメイドさんと笑いのツボが変わらないのでは?


「よし! 『次は四天王について、知ってんの』を使うことに決定した。これで瞬殺使用人も爆笑使用人になって笑い倒すことができるだろう! 解散!」


ほんとに何だったのコレ……


こうして作戦会議は爆笑の中終わりを迎えたのである。


いちいち会議にした意味があったのかは分からない。


音沙汰なく終わる……あ、オトザに音沙汰って言ったら爆笑するだろうか?


☆☆☆計画の方向性が決まりました。


会議が終わり自室に入ると相変わらずオトザがいる。


「いや、本当にすごいよ、エクシリオは! 流石は期待以上の功績をあげているだけあるな……しかし四天王しってんのって……がはは!」


割と自分のギャグで誰かが笑ってくれるのは悪い気がしない。しかしこいつよく話しかけてくんな。


「なんでこの会議をやる必要があったのか、自分には理解できない」


「そんなのさ、面白いからだよ。エクシリオはここに入ったばかりで気付いていないけど、魔王軍はもっと重苦しい場所だったんだ……だけどこの会議はどうだ? みんなが笑いに満ちていた。確かに内容はゴミ以下の何の生産性のないモノだけどさ」


しれっと会議を全否定しているんだけどこの人……


「良く真面目な奴ほど無駄という言葉を否定しているけどさ、俺は気に入っている。なにせ、無駄を突き詰めていけば仕事尽くしで何の楽しみのない生き方になってしまうだろ?」


それはそうである。無駄という言葉は好きであるが……彼のことが少し理解できたかもしれない。


「勇者達と殺し合うよりさ、もっと楽しいことをやりたいんだよ。それこそギャグを考える会議だったり、くだらないことをしたい。俺はさ、笑って馬鹿がやりたいんだよ」


平和主義か、確かにいいことである……いや、待てよ? もしそうだとすれば……


「オトザ。聞いていいか?」


その言葉にオトザはにやりと笑う。


「……魔族領の娯楽について教えてほしいんだ。できるだけ詳しく」


そう、自分にできることは現代知識の娯楽をパクることだけだ。


何度だって言おう。異世界に著作権は存在しない!

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