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第41話 的当ては思い切りやれ!

☆☆☆特訓合宿


かくして新入り四人に合宿を開いた。適当な訓練場を使っている。


「君達の魔法は先ほど見せてもらったよ、どれも技術がなっていないね、君達にはあの的を壊すまでみっちり鍛えさせてもらうから」


「「「「……」」」」


四人は誰も返事をしない。


「――おい、自分が何か言ったらイエッサーだろ? 舐めてんの自分のこと? はい、復唱!」


やはり特訓は高圧的な態度をとる必要がある。恐らく元の世界でやったらパワハラで訴えられるがこちらの世界ではないだろう。


自分を圧倒的な力の持つ者だと思い込ませているので、そこを利用させてもらう。鬼軍曹になるのだ!


「「「「サーイエッサー!」」」」


「まず、君達には精神力が足りたいない。精神力も技術のうちだ」


「「「「サーイエッサー!」」」」


「それではまずスクワット……千回から」


四人は自分の命令に従って体を鍛える。魔法を得意とするのに果たして筋トレの意味があるのだろうか……そんなことはどうでもいい。


もちろん最初からスクワット千回できる人はいないしそんな回数をやるのは膝が悪くなるのでやめておこう。


息が切れ始めた百回超えたあたりで止める。


「じゃあ君、彼に魔法を放って?」


「で、ですが……」


「言ったでしょ。精神力が足りていないって、君達は思い切りやれていないだけなんだよ。思い切りやらないとさ、君は魔法で防いでね、これも技術のうちだから」


「ファイアーボール!」「ウォーターバリア!」


魔法は些か威力が低いものだった。彼に届くことはない。


「もっと思い切り放ってみ」


「ファイアーボール!」


しかし一向に手加減している。それも仲間に放つことというためらいがあるからだ。


「君、自分がさ、思い切り放てって言ったんだから、思い切りやんないと……舐めてんのか? 自分を」


「舐めてないです」


「これが思い切りか? 彼を殺す気やれよ殺すぞ」


理不尽すぎる恫喝で恐怖に怯える中、彼はファイアーボールを打ちづけた。


自分がやられたら速攻で逃げ出すだろうなこんなこと……


そんな彼等は本当に心が強いと痛感した。


「ファイアーボール!!!!」


そしてその恐怖が彼の潜在意識に呼びかけウォーターバリアを貫く。


「やった!」


成功だ。このまま自分は指導を告げる。


「さて次だ!」


新人には地獄の特訓だっただろう。


彼らは着々と実力をつけていく。


☆☆☆そして翌日の的当て


こうして地獄特訓を終えた四人を教官の元に連れてくる。


「よし、集まったな! それでは昨日の的を……」


「殺す殺す……」「死死死死……」「壊す壊す壊す……」「終わり終わり……」


彼らは、目が血走り物騒な言葉をつぶやいて歩いている。


「どうした……雰囲気が変わってるのだが……」


そう、彼らには互いに互いを追い詰め合い極限状態にすることで、一時的に異常な精神力を身に着けた。


恐らく、そこらの魔王軍兵隊よりも凶暴さは上だ。思い切りやれと命じれば例えそれがどんな雑魚スライムであっても、オーバーキルする。


獰猛な新入りの出来上がりだ。そして彼らに仕上げの言葉を送る。


「これで君達の特訓は終わり。後は君達の自由だ……思い切り的を破壊しろ!」


「「「「サーイエッサー!」」」」


その言葉と共に、彼らは各自の魔法を展開する。


「ヴォルケーノ・ノヴァ!」「オーシャンズ・ブルー!」


「ハイ・テンペスト!」「ストーン・ブラスト!」


暴虐の限りを尽くす魔法を放つ。


「落ち着けお前ら! それではここ一体が崩れてしまう! 落ち着けぇぇ! がぁ!」


教官は魔法の余波で吹き飛ばされた。


「ひゃっはー!」


自分も遠くから見ているが明らかにオーバーキルであることが分かる。


「死ね死ね死ね死ね死ねぇ!」


各地で爆発が起こり、その場を教官は逃げ出した。他愛ない……


そして何発も何発も魔法を放ち砂煙が舞う。


「壊れていない……?」


それでも、的は壊れなかった……


☆☆☆絆の力


全力で放ち過ぎた魔力と徹夜で仕込んだ精神力も、目的を果たせなければ全てが無意味であった。


「ど、どうなっている……俺の努力は……あの特訓を経ても壊れなかったのか……おかしいおかしい。ありえない!」


「あはは……アーシア……君の元へ行くのはもうそろそろだよ」


「勇者殺す……殺して……」


「あーーーー! 壊したい! 壊したい!」


発狂するもの、後悔するもの、亡き者を想うもの、憎しみ合うものがいる。


どういうことだ……ここまでしても壊れない的があるのだろうか……


そもそも普通の的なら壊れているはず。


彼らはこちらを見た……何か言い訳が欲しいのだろうが、なんていえばいいのか、これでは自分の立場が危うくなる……


「――これで分かっただろう? 自分一人の力ではどうしようもないことが、いくら努力をしても無駄なことは無駄なのだと」


泣き出しそうになる者もいた。悔しがっている者もいる。


「くそぉ! 俺の夢はここで終わりなのかよ! 実力がなければ……くそぉ!」


「――だが、君達にはいるじゃないか……隣にいてずっと努力をしてきた仲間が! お前たちは一人か? いいや、違う! あの特訓は決して一人では乗り越えられなかっただろ? 思い出せ!」


「そうだ……そうか、このことをエシリクさんは最初から分かって……でも俺達はあまりに情けないから……エシリクさん!」


四人は立ち上がる。


「俺はずっと……甘えていたんだ。思い切りの意味……全てを出し切った先にこそ……本当の強さがある」


「あぁ! 私達ならできる! 例え壊れることのない的でも……絶対に壊して見せる」


「そうだ! それぞれ四大属性で互いの欠点を補える……そうか……」


「俺達は……一人じゃない! 仲間がいるんだ!」


そして四人は一つの的に向かって全力の一撃を放つ。


「力を合わせよう! 行くぞ皆!」


「「「「スクエア・エレメント・バースト!!!!」」」」


凄まじい合体魔法の衝撃が周囲を轟かせる。


「「「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇえ!」」」」


そして的はついに……破壊した。


「「「「やったあぁぁぁぁ!!!!」」」」


四人は手を取り合い喜んでいる……


「これで、俺達は正式に魔王軍になれる!」


四人が万歳を上げている中で自分は思った。


……なんかボス戦で仲間が団結する流れみたいになっていたけど……これただの的だよね。


これで、自分が的を破壊することが回避できた。それに、四人も自信がついたのではないだろうか?


☆☆☆


適正テストは無事全員合格。これで一仕事を終え、自室へ戻る。


ベッドしかないが野宿するよりはましだ。


おや? そこには先客がいた。


「いやぁ……的が壊れるなんて思わなかったよ。これは驚いた」


協力関係にあるオトザだ。


「何が言いたい?」


「あの的って俺が極限まで鍛え上げたゴーレムの防壁なんだけどさ……」


お前の仕業かよ……恐らくは自分を試していたのだな。


「本来なら、君が全力で魔法を放ったと同時にゴーレムを解除する予定だったんだ。そしたらエクシリオの実力が凄いってなるだろ?」


え、本当に協力してくれたのかよ……だったら先に伝えておいてくれよ……あんな馬鹿な真似して損しただろ。


「でも、エクシリオはあえて自分では壊さず別の相手に壊させた……全く想定外だったよ……」


こっちも想定外だよ……全く。食えない奴だ。こいつの目的は何なんだ?


「お前の想定を超えていなければ意味がない。自分が使えると判断してもらわなければ困るのはこちらだ」


「いいや、面白い……本当に面白いなエクシリオは、まさかあの新人達を一晩で実戦投入可能に仕立て上げるなんて……!」


オトザはやはり信用できない……そもそもどうしてゴーレムを的にしたのか、いくら能力チェックのためだからってやりすぎではないだろうか?


いくら何でも自分を褒め過ぎである。何か悪い話に乗せようとするものだろうが……


「君なら本当に、魔王軍を変えることができるかもしれない……」


「はい?」


何言ってんだこいつ。


「だからエクシリオ……君は魔王軍で成り上がれ。そして……魔王軍を自分の手に収めるんだ」


……え? 


「そうしなければ、俺が君を殺す」


なんだよその無茶振り……


魔王軍を乗っ取ることがオトザの目的なのか?


そもそもなんでこんな自分を高く買ってるのか……


「俺の安定した生活のために君が上にいてもらった方が良いと判断したのだよ」

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