第39話 勇者のサインは伏線でした!
☆☆☆生き残るための嘘
さて、なぜ自分が魔王軍の面接を受けているか疑問に思う方もいるだろう。
事はジエイミを救出した翌日まで遡る。みんながお祝いムードの中で、自分はユーシャインとジエイミのライブに向けて準備をしていた。
「エクシリオ」
人気のいないところを待ち伏せられている。
「――マジョーナ」
やばい……ジエイミの救出に気を取られ彼女が自分の命を狙っていたことが完全に抜け落ちていた。
頼みの綱のドビーも療養中であり、ジエイミも目を覚まさない。
そうなると彼女の実力は真勇者パーティーの中で一番高いこととなる。アナスタシアやメイドさんでは敵わないだろう。
あくまで勇者機関はジエイミの救出のために共闘をしていたにすぎないのだ。勇者計画を滅茶苦茶にしている自分の存在はどうあっても消したいはず。
「お命を貰いに来ました……残念ですが」
「――これで自分の裏をかいたつもりか?」
「どういうことですか、貴方は今完全に油断していた。ドビーもジエイミも助けに来ない。そうなれば、私は貴方を簡単に消すことが出来る。主導権を握っているのはこちらなのですよ?」
やはりそうだったか。最初から彼女はこの機会を狙っていたのだ。
「ジエイミの説得が終わった今、自分は用済みだ。そんなことはとうに分かっていたよ。さて……本当に誘い込まれたのはどちらの方か」
「何が……?」
彼女は今までの出来事を思い返している。何か抜け落ちたパズルのピースが存在しないか、それも今までの自分がなしてきた功績あってのものだ。
ジエイミの救出や四天王の撃退……まぁ偶然の産物なんだけど。
状況はそれでも変わらない。明らかに雑魚な自分が彼女から逃れる方法。
それは何か……考えろ……彼女の顔面を蒼白とさせるような意表を突く一言だ!
「さて、君はペルペッコ・モンタージュについて覚えているか?」
「貴方が私達を追放した後に名乗っていた商人ですね……確かエクシリオのサインを売って資金を調達して……孤児院で……」
彼女から語らせ、考えさせることだ。この行動が大事である。
「――そのサイン。本当に金儲けのためだけだと思っていたのか?」
「……何を」
「一緒に旅をしていて自分が今までサインを描いていたことに疑問を想わなかったのか? それも何の字もない、意味を持たないもの……」
そう、自分のサインは適当な絵かき歌のキャラだ。マジョーナも見ていたはず。
「確かに……ですが、それは……いいえ」
戸惑っているのが分かる。正直サインは何の意味もない。ただの前の世界では誰もが知るキャラクターだ。しかしこちらの世界でその常識は通用しない。
だからこそ疑問が溢れてくる。
「ではマジョーナ……サインを描いてみろ」
近くにあった棒を渡すと受け取る。
「私にそのようなものは……何の意味もないものです……」
「まん丸まるまる~まんまる~♪」
自分は歌うと、マジョーナはサインを描き上げた。
「ど、どうして私にエクシリオのサインが……」
戸惑いを隠せていない。それもそのはずだ……そこに自分が明確な答えを出す。
「――そもそもこれはサインではない《《魔法陣》》だ」
「な……!」
驚嘆するマジョーナ。
「君は無意識の中で操られていたのだ。だから魔法陣を書き上げることが出来たのだろう?」
何度も言うがただの絵かき歌である。決して洗脳効果はない。だけど、異世界人にはその常識は通用しない。それに賭ける!
「……あり得ません! 仮にこれが魔法陣だとして、魔力が込められていない! そもそも魔法陣には四代属性を形成する必要があり……それ相応の(以下略)」
流石魔法担当なだけあって騙されないか、魔法のことは専門外なので何言っているのかさっぱり分からない。
「ではなぜ君は、あの魔法陣を書くことが出来た?」
「それはあなたの歌が……っは! まさかその歌に魔力が込められていた?」
「――そう、あの詠唱をすることにより、誰でもこの魔法陣を書くことが出来てしまう。その魔法陣は沢山人間にエクシリオのサインとして納められている……そう最初からそれが目的だったのだよ」
全てが作り話である。本当に金が目的だったのです。
でもこういえば、今までサインを書いていたことに説得力が持たせられる。
「まさか……いや! そんなはずは!」
「孤児院の子供にもその歌を教えていた。だったら、この国には一体いくつのサインが散らばっているだろうな? 遊びのように歌って描いている物が魔法陣とも知らずに、今も増え続けているさ……」
流石に苦しいか? それでも……自分はこういう方法でしか生き残ることはできない。
「街にバラまいて……何が目的で……答えなさいエクシリオ・マキナ! この魔法陣は一体何なのですか!」
一番効果的なことを言うしかない。恐らく彼女も薄々気づいている。
恐らく、存在しないはずの生物であることに(本当はアニメのキャラクターです)
「――自分がトリガーを弾けば、その《《怪物》》が魔法陣から具現化する」
「……!」
どうだ……行けたか……?
「君は自分を追い詰めていたと思っていたようだが、本当に追い詰められていたのはどちらだったか……ふははは!」
「ちぃ……あなたはジエイミを迎え入れた時から何も考えていない馬鹿のはずでした! 勇者の捨て駒役に下半身に脳がついているクソ男を選んだはずだった! なのにどうしてこうなっているのですか! ふざけないでください! これでは……勇者計画が頓挫してしまう!」
転生前のエクシリオどんな奴だったんだよ……会話から推察するに勇者と祭り上げられて調子に乗った男だろうな。
可哀想だとは思わないぞ……こちらとて必死なのだから。
「人を貶めようとするからそういう目に合うのだ。さて、トリガーはこちらが握っている。大人しく自分を……」
「まさかあなたが……《《魔王軍サイド》》だったなんて!」
☆☆☆最悪の勘違い
え?
「え? いや別にそんなことは一言も――」
なんで自分が魔王軍サイドになっているの!? ちょっと考えが飛躍しすぎているぞ!
「事を遡れば全てがおかしいのです! ステータス最弱の村人を選んだはずでした。そんな相手に四天王が逃げ出すなんてありえない! それなら最初からグルだったと考えるのが自然です」
「い、いや、それは自分の作戦が、別に魔王軍に――」
「――いいえ! 他の連中は欺けたとしても引っかかりませんよ! エクシリオ・マキナは魔王軍と繋がっていた! それは勇者機関よりも最も親密に……孤児院にジャークゲドウを向かわせたのも、武道大会にラースムドウを呼んでいたのも……」
う、う~ん? 追い詰めすぎたか? マジョーナが暴走しているぞ!
「そうです……そうだとすれば全てが土妻が合う。エクシリオ・マキナがジエイミ・メダデスの信頼を勝ち取ったことの意味。あの子の心は決して強くない。そして彼女が一番信頼している人物は誰がどう見てもあなたです……」
確かにジエイミには信頼されていると自負している。説得にも応じてくれた。
「貴方の目的は《《勇者の心を完全にへし折ること》》。そのために勇者信仰を背けるアイドル。ユーシャインを作り上げていた……完全にしてやられた!」
そ ん な わ け な い だ ろ !
なんなんだよこいつもう! めんどくさいなぁ!
でもそうなれば……彼女の勘違いを全力で利用させてもらう!
ジエイミを裏切ることはかなり心に来るが……これも生き残るために仕方がない。
「バレてしまったら仕方がないか……君の推察通り。自分は魔王軍の幹部であり、《《魔王補佐官》》だ。この情報を上に報告しなくて良いのか? これは君だけで判断できる問題ではないはずだ。」
「……ちぃ!」
頼む! 退いてくれ……マジで頼むから!
「例えばここで自分が死ねば、あの怪物が町中に溢れかえり沢山の人間を襲うだろう……それを君が望むか? 罪もない人間が死んでいくのだぞ? どうだ?」
「そ、それは……」
「そしてその責任は君に押し付けられる。もはやジエイミやドビーたちと協力するしかないのだ……早くしないとトリガーを弾くぞ? 3! 2!」
心理を煽る。トリガーなんてものはもちろん存在していないはったりだ。
「わ、分かりました! ですからトリガーを弾くのはやめてください!」
よし! 何とかなるぞこれは!
「だとしたら早く下がるのだな、あぁ、ジエイミに言っておいてくれ……本当の勇者として待っていると」
「っクソ……覚えていなさい……エクシリオ・マキナ!」
マジョーナは下がっていった。
こうして自分はカクセイラン王国にいられなくなり、逃げるように魔王軍サイドに寝返ったわけだ。




