第30話 最強の勇者VS最弱の勇者
〇〇〇エクシリオとの対面
目の前にいるのはエクシリオさんで間違いありません……
「エクシリオさん……今まで何をして! 生きていたのなら、言ってくれれば!」
死んだはず……だって、あの時エクシリオさんは私を庇って……
死んだ人間は蘇らない。それは自然の摂理です。だとすればどうして!
「――全く……君は俺のことを信用していないみたいだな」
エクシリオさんはため息を吐きました……
「――大体俺が、あの程度の雪で死ぬと思っているのか? あれは魔王軍が仕込んだ罠だ。転移魔法によって魔王軍の領地へ移動させられた。それから死闘を繰り広げていた……何度も死にかけたが無事生還したんだ。そうしたら俺が死亡していたことになっているみたいだな」
そうですか、エクシリオさんは消息を絶っただけで、今も戦っていた……それも私より過酷な状況で……
「――だから今ここに、勇者エクシリオ・マキナは蘇った!」
後光を放ち、エクシリオさんは叫びます。その魔力一つ一つがもはや芸術の域に達しています……美しく神々しい光。
「エクシリオさん……」
私の目標としていた人が今目の前に……あれ、力が抜けていきます。先ほどのドビーさんに魔力を使いすぎて……倒れるわけにはいかないのに……
「――俺が本当の勇者だ! ジエイミ。君はあくまで俺がいない間の代わりに過ぎないのだ……だから肩の力を抜いていいんだ」
ですが……疑問があります。エクシリオさんはブモコザ村出身と申しておりました……なら、彼に勇者の血は流れていないのでは?
「一つ聞きたいことがあります……ブモコザ村出身です……そうとなれば、勇者の血は流れていないはずです」
「(げ)……誰が何と言おうと俺は勇者エクシリオ・マキナだ。確かに俺は初代勇者の血を引いていないただの村人だ。いわば村人Aなのだよ」
「やはり……ではエクシリオさんはただの村人で――」
「――だが、初代勇者は誰の血を引いていた? 彼だって魔王が現れる前は村人Aに過ぎない……言っただろ『生まれながらの勇者など存在しないと、踏み出したその先の結果が『勇者』という事実を作りあげるのだ!』と」
忘れたことがありません。あの時の言葉は今も私の胸に残っています……あの言葉を胸にいたいていたからここまで頑張れました。
「――初代勇者は、世界を救ったことにより勇者として語り継がれた。それならば血筋は関係ない。村人Aなら、村人Xになる努力をすればいい。俺はその事実を積み重ねてきて勇者になったに過ぎない。それは君と違って《《本当の勇者》》ではないか?」
確かに……エクシリオさんの言っていることに納得は行きます……
「――確かに君は最強の勇者であるのだろう。でもこの世界じゃ二番目だ。今俺という最強が帰ってきたのだからな……」
そういい、私に近づいてきます。
「――よく頑張ったな。ジエイミ……俺がいるんだ。強がる必要なんてない」
私は頭を撫でられます。
「ですが! 私は……勇者で!」
もう何も浮かんできません。意識だって朦朧としています。
「――人間一人に勇者という記号はあまりに重すぎる。ジエイミ、俺も先代の勇者達も皆、仲間を引き連れていた。その意味をもう一度考えろ」
仲間……エクシリオさんの言いたいことはなんとなくわかります。
「――いいか? 俺と君の間にある決定的な差は仲間を頼ることだ。自分にできることを優先して突き詰めていけば当然手の届かない部分が出てきてしまう。そこを誰が保管するか……」
「それが、仲間ですか……」
「――確かに信じることは容易ではない、仲間を危険に晒す心配だってある。だが君は仲間を遠ざけたのではない。信頼することから逃げているだけだ」
確信をつかれます。
「――俺は元勇者パーティーのメンバーを高く買っていた。ドビーはタンクとして優秀だし、マジョーナも魔法に長けている」
「そして、これから成長していくジエイミだって俺は評価していた。だから勇者パーティーに迎えたのだ」
つまりエクシリオさんは最初から私を認めてくれていた……?
なのにどうして……こんな勝手なことを……
「―――そして俺がいない間に無理をさせてしまったみたいだな……悪いな、ジエイミ」
すると体から力が抜けます。
「エクシリオさん!」
もう泣かないと決めていました。でも、エクシリオさんが生きていたのなら……
「もう……いいんですかね、立ち止まっても」
「――迷わず信じろ! 信じればわかるさ!」
エクシリオさんが微笑みかけたのがトリガーになりました。
そして私は彼の胸の中で泣き続けます。
「ずっと我慢してました! ずっとずっと! 怖かった! 辛かった! 痛かった! 」
「だから! エクシリオさんが生きていて本当に良かったです! エクシリオさん! エクシリオさん!」
何回も叫びます。そして涙を流し続けました。
ああ、やっぱり……そうです。これが本当の勇者なんだと知りました。
そうしていたら、意識がだんだん遠のいていきました……
あぁ、眠ってしまいそうです……
「エクシリオさん……」




