第29話 宿命の対決! ジエイミVSドビー
〇〇〇ドビーの答え合わせ
「ドビーさん……どうしてここに」
「……俺はヤィーナでもある」
ドビーさんがヤィーナさん?
「……ど、どういうことですか」
流石に手が止まってしまいます。なぜ……あのドビーさんがヤィーナという名を偽って同じパーティーにいたのか……
「『勇者と魔王の戦いに巻き込まないでくれ』それがお前の父親が残した言葉だ」
「父が……? そんなわけ!」
「父が最期に残した言葉を覚えているだろう。お前は『幸せ』なのか?」
『生きて幸せになってくれ』これが父が残した言葉……そうでした。
「それは……」
「両親はお前が勇者になることを望んでいなかった。だから力を抑制する魔法をかけていたのだ」
そうでした……確かに父は私に力を抑制する魔法をかけていました。そのせいでいくら努力しても意味がなくて……
「確かに勇者の条件をお前は満たしている……だから遠ざけようとしていたんだ。だが運命はどうしてもお前を勇者に仕立て上げようとする」
勇者の条件?
「ブイレブ村は初代勇者の故郷だ。初代勇者はメルクリアとの間に子を宿し、英雄の血は受け継がれていった。別の時代で魔王が目覚めるとその血も目覚め、戦いに身を落とすことになる……そしてその誰もが安らかな眠りに辿り着くことはなかった。魔王との戦いにより凄惨な死を迎えるのだ」
先代の勇者たちも魔王と戦い死ぬ。私も死ぬことは覚悟しているつもりです。
「そしてお前には勇者の血が流れている。生まれながらにして勇者なんだよ。だからあいつはお前を勇者から遠ざけた。世界を救うことよりも、娘の幸せを願っていたのだよ」
ドビーさんの話は嘘だと疑いたくなりますが納得がいきます。
勇者とは自らの命と引き換えにして魔王から世界を救う存在。
魔王を倒すにはその命を捧げることでしか不可能ということです。父も母も……私が勇者だと知っていたからこそ、止めていた。
でもそんな両親の願いを裏切るように私は勇者と関わろうとした。
「……私は最初から……勇者だったんですね……」
「そうだ。だから俺はお前が勇者パーティーに入ったことを知り《《嫌な奴》》を演じていたんだ。酷く当たってしまって正直すまんかった」
それが、本当の名前だったんですね。
そういうことですか、ヤィーナさんが私をパーティーメンバーから追放した理由も納得がいきます。二度と勇者に関わらせないため。今思い返せばあれも全部……私を思っての行動だったのでしょうか……
つまり、ドビーさんも私を助けるために行動してくれていた。
だけど……それでも
「才能で生きる方法を選んでも必ず幸せになれるとは限らない。だからジエイミ……勇者をやめるんだ。そして……どこか遠い場所で暮らすんだ……」
「ドビーさんの優しさも両親の願いも痛いくらい伝わりました。でも……もう、私は『勇者』なんです。勇者であるから、その願いも優しさも、幸せになることだってもうずっと遠くに置いてきました。だから……あの人の分も……私は戦うんです!」
エクシリオさんならきっと。誰にも頼らないで、一人で皆を救いきるはずです。
「……分からず屋が……お前は何故……誰にも頼らないんだ」
「それが『勇者』だからです……」
〇〇〇決戦
「そうか……なら力尽くで止めるまでだ」
もう、会話は必要ありません……ドビーさんも私を全力で止めようとするはず。でも私だってあの頃の自分じゃない。譲れないものが出来ました……
勇者としての責任を果たすこと。それが今私にできる唯一の罪滅ぼしだから。
「グラビティ・ホール!」
魔法の詠唱。その一瞬で身体が異常に重く感じます。
恐らく重力魔法。ドビーさんはこんな魔法を隠し持っていた? タンク役ではなかったというのでしょうか。
だけど、魔力を込めればある程度動くことは可能です。ですが私の加速魔法とは相性が悪く得意の敏捷性が奪われます
そのままドビーさんは私に剣を振るいます。
「っちぃ!」
同じく迎撃しますが、剣の技術ではドビーさんが格段に優れていました。
天光のポンチさんの様に圧倒的な実力差を痛感します。
このままいけばこちらが不利です。
一気に火力をぶつけなければ……しかし隙を与えられずに攻め込まれます。
「しまった!」
剣がぽきりと折れます……それほどまでにドビーさんの一撃、一撃が重かったということでしょうか……
「貰った!」
「セラフィック・サーベル!」
すぐに魔力を込め剣を光に変え防ぎます。
「あいつが死に魔力の抑制が消え去った今。そうか……これほどの実力があったのか……だが!」
父が抑制したいたものはもう私にはない。
「俺はお前を連れ戻す……俺に本当の名を与えてくれたのはジエイミ……お前だ!」
「何を言っているのですか! あなたの本当の名は……あ」
ヤィーナ・イッツ。この名前を嫌っていることは知っています。
「お前と旅をする前の俺はただ死んでいないだけだ! 意味もなく生きているだけの人形だったんだよ!」
「お前があの時ケーキをくれたから、あの時に名を与えてくれたから、初めて自分自身がしたいって思えることが見つかったんだよ」
便利屋さんとの思い出が流れていきます。ケーキの件も名前を送ったことも全部、ドビーさんにとっての大切なものだと……
「ジエイミ! お前の幸せを見届けることだ。例えそのためなら俺はなんだってする!」
私は密かにドビーさんを父代わりに思ったことがありました。厳しくて無愛想でそれでも優しくて……本当に父のような……存在です。
でもあの時にほっといてと言いました。それはドビーさんを拒絶したことに変わりありません。最低です……こんなにも私を思ってくれているのに!
「ドビーさんの気持ちは痛いほど分かりました。それほど私のことを考えてくれていたのですね……それでも! 私は勇者。ジエイミ・メダデスは立ち止まりません!」
攻撃がさらに激しくなります。
「この分からず屋がぁ!」
「この……便利屋さんがぁ!」
全力で剣を振るいます。
「ライトニング・アブソリューション!」
私の持つ最大の一撃を放ちました。
「グラビティ――」
凄まじい魔力が周囲を包み込みます。この魔法ならきっと……
「その程度か」
しかし、ドビーさんはまだ立っています。巨大な盾で防いだのでしょうか。
「俺の本職はタンクだ……お前の魔法ぐらい耐えられて当然だ……」
嘘です。ライトニング・アブソリューションを受けて無傷なんてことはあり得ない。
それでもドビーさんは倒れないのです。
「……ならばもう一度ライトニング・アブソリューション!」
何発も何発も放ちますが……ドビーさんは倒れません。
「いい加減……倒れてください!」
流石に撃ちすぎたせいか、身体に疲労を感じます……
「はぁ……はぁ……」
息が上がります。
「どうした……もう終わりか? 基礎体力がなっていないな……俺が出したトレーニングは続けていたのか?」
「毎晩やっていますよ……そんなものが余裕になるぐらい今なら千回だって余裕です」
恐らく立っているのがやっと……でも、ドビーさんは倒れません。いい加減に倒れてくれないと……私は
「本当に……強くなったなジエイミ……」
「だから、もう心配ないんです……ドビーさん。私は最強の勇者ですから、誰にも頼る必要はないんです……弱くて無能なジエイミはお終いです」
兜が割れドビーさんの素顔が見えます。その表情は勝ち誇った顔をしていました。
何故……完全に私の勝利のはずです。もう誰もいないはず……
それなのにトビーさんは笑っていました。
「……だとよ、お前の出番だぜ……行けよ、究極の他力本願勇者」
そこにもう一人気配が感じます……凄まじい魔力を放ち、警戒心が異常に高くなります。なぜ今までこれほどの魔力が探知に引っかからなかったのでしょうか……
ドビーさんは膝をつくとその人は現れます。
「――ずいぶんと、強くなったみたいだなジエイミ」
その声は……いいえ、その人は……嘘ですそんなはずは……だってこの人は、あの時私のせいで……ありえません……!
だけどその装備もその顔もその勇敢さも……以前と変わらないそれどころか強くなっているのが分かります……この人は……
「エクシリオさん……」
私の憧れた勇者である。エクシリオ・マキナでした。




