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第24話 便利屋さんとジエイミの日常Ⅱ


〇〇〇食事場にて


それから少しの時を経て、身体も心も成長していきます。


両親の死を受け入れたとは言い難いですが、それでも少しだけ立ち直れた気もします。


それも便利屋さんが私を支えてくれたおかげです。


「便利屋さんの名前っていつ教えてくれるのですか」


便利屋さんは今日は珍しくお酒を飲み酔っています。日頃の疲れでしょうか……


「俺に名などない。いつものように便利屋と呼べばいいだろう」


「……でもずるいじゃないですか。私のことはジエイミと呼んでくれているのに、便利屋さんは便利屋さんのままだと」


「別にそれでいいだろ……」


「いーやーでーすー」


子供っぽく駄々をこねます。


「はぁ……俺は自分の名前を嫌っている」


「どうしてですか?」


「俺は望まれない生まれ方をした言わば妾の子だったんだ。だから両親は俺に『嫌な奴』の意味を持つ言葉を送った」


「嫌な奴……ですか、便利屋さんはいい人なのに、そんなのあんまりですよ!」


素直に腹が立ちました。


「すぐ両親に捨てられた。だけど……俺には戦いの才能があったみたいで、出会った時のお前よりももっと幼かったころには冒険者になった」


珍しく便利屋さんは語ってくれます。


「特例だったらしい、戦いばかりの生活を送っていた。依頼をこなし続けて、生活に必要なお金は溜まっていた」


「凄い……やっぱり便利屋さんは強いんですね」


「そのことが両親に知られた時には意地汚くすり寄ってきた」


『自分はお前の親なのだから、少しは恵んでくれたって言いだろうに』


『育ててやった恩を忘れたのか! さっさと金を出せばいいんだ!』


「当然断ったが酷い言われようだったな。勝手なやつらだった。そちらが捨てたくせに……両親は借金を抱えていたらしく、そのままどこかに行方を晦ませた。今頃は生きているかも分からないさ」


便利屋さんの表情は分かりませんが、声である程度の感情が分かるようになりました。


やはり、思うところがあるのでしょう。


「だから名前で呼ばれるのは嫌なんだ。これまでと同じように便利屋のままで……」


「だったら、私が便利屋さんに名前を送ります」


やはり名前がないのは寂しい事でしょう。私だって便利屋さんを名前で呼びたい。


自分の名前が嫌いというのなら……新しい名前を送ればいいのです。


「おい、何を勝手に」


「一緒に過ごしてきて便利屋さんのままなんて寂しいです。これからだって呼ぶんですよ。うーん……何がいいでしょうか」


「別にいい、俺は便利屋のままで……」


「『ドビー・メガデス』というのはどうでしょうか。ちょっとだけ私の名前が入っていますね。そこは一緒に過ごしてきた絆です!」


「ドビー・メガデス……?」


「はい! これから便利屋さんの名前はドビー・メガデスです……いやですか?」


「……」


なにも返事がきません。


「ドビーさん……だめでしたか?」


「……俺はこれまで通り便利屋だ。だがお前が『ドビー』と呼ぶのなら……それは自由だ。だが俺が返事をするとは限らない。大体人の名前を勝手に決めるだなんてとんだ非常識だな……全く」


「確かに非常識です。でも、名前を呼ばれるたびに嫌なこと思い出すなら、できる限り楽しい思い出が募った名前に変えれば素敵に生きられると思うんです」


「楽しい思い出?」


「魔王軍が攻めてきたあの夜。全て失った時に手を差し伸べてくれたのはドビーさんです。私は貴方がいなければあの場所で終わっていました」


両親も故郷も失いました。そして食料もなく行き倒れた時に、彼はやってきました。


「仕事だから――」


「ドビーさんと過ごした時間はとても大切なものです。厳しくても、無愛想でも、ドビーさんがいてくれたから、私は『生きよう』って決めたんです……私今笑えてるんですよ! 『楽しい』から!」


「……っな!」


「だから……今日から便利屋さんは『ドビー』さんです!」


兜は外しません。


「……もう、好きにしろ! 俺はもう寝る!」

 

するとドビーさんは、寝室へ向かいました。


ドビーさん兜の中の素顔が見てみたいな。


いつか、ドビーさんにも私の夢を語る時が来れば……その時に外してもらえるでしょうか……


『勇者パーティーに入って勇者様と結婚』……というのは子供の頃の憧れです。


でも、勇者パーティーに入ることは今も変わらない私の目標です。



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