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第133話 黒幕のグリエルモ

☆☆☆グリエルモについて


さて、本筋に戻ろう。


「ところで、グリエルモは魔王城を占拠しているんだよな?」


「あぁ、あの子私が洗脳されたふりで騙されるから結構馬鹿だよ? でも、寿命すら超越するヒーラーってのは相当極めたんだろうね〜それで人間族と魔族に対し酷く憎しみを抱いているみたいだし。うぉ~怖い怖い~」


人間族と魔族に対してか……なんとなくだが、グリエルモの目的が分かってきた気がする。


メルは洗脳されたふりをして情報を引き出していたようだ。普通に怖い女だ。


どうやら人間族の洗脳は、グリエルモが数世代前の遺伝子に細工をしていたらしい。人間族の血が流れ続ける限り逃れられないものである。


勇者と魔王に戦争を起こさせそれを何世代にも渡って繰り返していった。


つまり勇者伝説の記述通り争い続けて、双方の人口を減らしていく計画だ


勇者と魔王が和解する可能性があれば、洗脳を発動させて強制的に争わせていたようだ。


過去の歴史には自分達以外にも戦いを終わらせようとしたやつがいたんだな。結局そいつらは、洗脳されて駄目だったんだが……可哀想に。


ちなみにマズマズドリンクのことをメルに聞いてみたが、なんで洗脳が解除されたのか原因不明らしい。なんなんだよあの代物は……


「つまり、グリエルモの目的は人間族と魔族の滅亡ということだな」


「そういうこと~まぁ、あの子じゃ無理だと思うけどね、だって根がすごく優しそうだし。ジエイミぐらい性格悪くないとダメだよ」


根が優しそうな黒幕か、なんか倒すに倒し辛そうだな。あと、ジエイミは性格悪くないだろ。


「メルぐらい性格悪くないとだめだと思いますよね。自分さん!」


ジエイミも負けずと言い返す。こいつら実は仲いいだろほんと。


「二人とも他人を貶すという行為はそれ以上に、自身の価値を下げることに繋がると知ってくれ」


「すいません」「ごめんねごめんね~」


メルは相変わらず反省しない。反省したらしたで、気持ち悪いからこれでいいけど。


「とにかく、人間族と魔族を滅ぼす理由は恐らく。絶滅しかけている『ヒト族』の繁栄だ」


かつて地上を支配していたのはヒト族であった。だが、人間族に追いやられたことにより、絶滅したかのように思えた。


双方の種族が存在する限り。決してヒト族が栄えることはないのだ。何て言ったって弱い。


その弱さのせいで、人間族にモブコザ村まで追いやられたのだ。


言葉で聞いただけだが、その当時はヒト族に相当の犠牲者が出たことだろう。


理不尽な暴力によってヒト族はあの村に暮らすことを余儀なくされた。


恐らくその光景をグリエルモは見てきたのだ。だからこそ、人間族と魔族を激しく憎んでいた。


大切な者を奪われていく憎しみ。そして、ヒト族を守るためにグリエルモは戦っているのだろうか?


「モブコザ村はヒト族を守るための場所だと考えていいだろう。あの村でヒト族は傷つくことはない。恐らくグリエルモがあの村全体に治癒魔法を使っている。現に自分の傷も回復した」


「……そこに私が訪れたことにより、グリエルモにヒト族を傷つける存在と認識されたということでしょうか……私がこんな事しなければ……」


なるほど、んじゃ、帰省したのが間違いだったってことか……


「そうそう! 全部ジエイミが悪――ぎゃああああああ!」


とりあえずメルの鼻に指を突っ込んだ。話を進めよう。


「つまり、グリエルモは『ヒト族』を守りたいんだ。だから、人間族と魔族を絶滅させようとしている……正直難しい問題だよなぁ……」


そもそも、自分はこの世界の存在じゃない。ヒト族であるが、人間族や魔族に対する憎しみというモノはないし、どうしても客観的に見てしまう。


「二人なら分かると思うが、自分はヒト族でも、双方の種族を憎む気持ちはない。正直人間族とヒト族の違いもさっぱり分からんし偏見がないんだ」


ジエイミとメルは自分がこの世界の人間じゃないと知っている。理解してくれるだろう。


「だけど、他のヒト族。というよりは、ヒト族を守ろうとしているグリエルモにとっては、どうしようもなく許容できない存在なんだろうな。お前らは」


遺伝子的にヒト族は人間族や魔族を恐れている。


「だから、グリエルモは初代勇者が存在した時代から、今に至るまで黒幕として双方の争いを支配してきた。そして力をつけてきたんだ。ヒト族が繁栄する日を願って」


恐らくであるが、それがグリエルモの狙いだろう。そこでジエイミが口を開く。


「グリエルモにそんな目的があったなんて……だからと言って人間を滅ぼさせるわけにはいきません。どうにか説得を……」


そりゃそうだろ。極論すぎるもんな。


「初代勇者の時代から、人間族と魔族に対し憎しみが募っていた。恐らくヒト族の死を嫌というほど見てきたに違いない。そんな相手を簡単に説得できるとは思えない。ジエイミは今すぐにメルと和解できるか?」


「できません!」


即答されたよ!


「そ、それ以上に、グリエルモの憎しみは強いはずだ。和解は難しいだろう」


「よし、じゃあぶっ殺しちゃおっ! 遂に魔導一式の最強形態披露するときが……にひひ……!」


「自分もそう考えたけど! 彼女は不死身なんだぞ。殺せないのではないか?」


「どんなに肉体は強くても、心が死ねば生きていない。だから、目的を無くせばいいんだよ!」


「どういうことだ?」


嫌な予感がする。あのメルが思いついたことだろくなことにならないだろう。


「彼女を拘束して、自分君以外のヒト族を目の前で殺せばいんだよ。『いえ~い。グリエルモくん見てる~?』みたいな感じで、そんで、私と自分君が結婚すれば、もうヒト族の子孫は残せない! つまり、ヒト族を絶滅させることで、彼女の心をへし折れば死んでるのと同然だって! にひひ~~!」


残虐外道魔王みたいなこと考えてんなこいつ。魔王なんだけど。あとどこから突っ込んでいいのかわからねえよ!


「ダメだろ……それにどさくさに紛れて自分を結婚させるな」


「流石に私も反対です。ヒト族だって守りたいと思っています。あとそれなら私が結婚しますよ!」


ジエイミは共存の道を選ぼうとしている。最後の方は無視しよう。今は関係ない。


「はぁ……随分平和主義なんだね。そもそもグリエルモなんて存在がいなければ、私達がここまで憎しみあう必要はなかったんだよ? ジエイミの家族だって故郷だって無くならなかった。それでも仲良くできるって思えるの。さっきまで私たちが滅ぼされようとしていたのが分からない?」


「……それは」


ジエイミや他の勇者の運命を見れば、失ったものが無数にある。それも全てはグリエルモが争いを起こしていたからだ。


魔族サイドだって沢山の物を失ってきただろう。


「何も言い返せないし~ま、ジエイミもグリエルモと同じで勇者パーティーを《《追放された》》んだから、仕方ないか〜そ〜んな甘い考えじゃ全部失うよ~最後に私が自分君を貰っちゃうんだから……」


……何? え!?


「お、おい、メル今何て言った?」


「私が自分君をもらっちゃ――」


「違うそこじゃない。誰が追放されたって?」


「あぁ、グリエルモも初代勇者パーティーを追放されたってこと? そんなん当たり前じゃん~言ってなかったっけ。どうしたのそんな慌てて……」


言ってなかったよ!


「グリエルモが……初代勇者パーティーを追放された……だと……!?」


確かに、一見重要なことには思えない。だが、違う。


追放モノの世界で追放されたというのは完全に最重要事項だ。


グリエルモは『追放された側』だったということだ……


この世界は『追放モノ』だ。ならば、初代の時代から追放されたグリエルモは、いや、『追放されたヒト族』は


この世界の『人間族』と『魔族』に壮大な『ざまぁ展開』を仕掛けているということになるのではないだろうか……?


――第十章。完!

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