第128話 黒幕は実在しました!
☆☆☆鼻がきつい
相当な魔力の放出。メイドさんとアナスタシアに守ってもらわなければ自分も吹き飛ばされていた。やはり……これはただ事ではない。
「あっ……ま……ま……まずいです~~~~~~」
「「「え?」」」
その後のジエイミはとても可哀想だった。あんなクソ不味いもん鼻から入れられたら臭いが広がりもう最悪だろう。
何度も咳き込んで、でも自分の前だからか戻すことを必死にこらえて居た。
いや、別に戻しても自分は引いたりしないし、涙ぐんでるのを見ているとほんと申し訳ない気分になる。
地面に転がり続け悶えていた。何度も土に頭を打ち付けてそのたびに震度3ほどの地震が起きていた。
どれだけ力強いんだよジエイミは……
メイドさんとアナスタシアはその後も、冒険者達にマズマズタブレットを与えていた。ジエイミと同じようなまずさの悲鳴が溢れていた。
「わ、私は……」
少しの時間がおいて、ジエイミはようやく正気を取り戻した。今の状況を理解したのだろう。
恐らくジエイミの性格からして、真っ先に自分を責めるはずだ。
「申し訳ございません……皆さん! げっほ! げほげほ! 私今まで何をやって……っぐ……げっほげっほ……気持ち悪い……うえ……」
「ジエイミが無事で何よりだ。謝罪は後でいくらでも受け入れる。大事なのはこれからのことだ」
ジエイミの今の状態を無事と言っていいのかは分からないけど。とにかく大きな怪我はないようだ。背中を擦ると落ち着きを取り戻していく。
「自分さんに背中擦ってもらっているのに……嬉しさよりも、気持ち悪さが勝ってしまいます……うえぇ……気持ち悪いです……」
やはり鼻から物を入れるべきじゃなかったな。素直に可哀想だ。
☆☆☆黒幕について
さて、ジエイミは落ち着きを取り戻した。そろそろ聞いてもいいだろう。
「単刀直入に聞く。あの村で何があったんだ? 覚えている限りでいい。話してほしい」
「はい……食事の時に話していた。私を人間族と疑った者がいましたよね」
「ああ、大体の見当はついている。そいつと戦闘になったのだろう? しかし、ジエイミは負けた」
「それは……急に意識が途切れてしまいまして。ごめんなさい勇者でありながら何という失態を」
王都の市民と条件は同じか……恐らく、そいつの持つ能力だろうか、皆の意識を奪ったというのは……つまりそいつの能力は『洗脳』ということか。
ジエイミを洗脳したのち、王都の冒険者達を集め魔族領に進行した。
「自分さんは……『グリエルモ』という人物を知っていますか?」
グリエルモ……聞いたことがない。
「……知っているか、いないかでいったら、分からない……だが、そいつがジエイミと戦った相手というのは分かる」
威厳は保っておく。
「それもそのはずです。私の家系に伝わる勇者伝説にて記述されていた名前です」
確かジエイミは初代勇者直営の血筋だ。それならば、勇者伝説も一般に普及しているものよりも詳しく書かれていたということか。
「勇者伝説……ということは、それがどういう意味を持つのか分かっているか?」
「はい……グリエルモは『初代勇者パーティー』の一員です」
「いやいや、今はいつだよ。初代勇者パーティーって相当昔なんだろ?」
元の世界でなら聖徳太子の話をしている感じだろう。メイドさんやアナスタシアも驚いていた。
「……これは私の考えなのですが、初代勇者パーティーで『ヒーラー』だったことが原因だと思います。恐らくこの世界で最も優れた……不老不死と言っても過言ではないほどの」
ヒーラー……あれ。回復役……治癒師……これは。つまり、ヒールで寿命すら超越したというのか?
「私の攻撃は効いてはいましたが瞬時に回復して……」
モブコザ村にいた時ヒト族の傷が治療されている……なるほど。
「グリエルモはヒト族だ。ジエイミ。グリエルモに血を見られたことはあったか?」
ジエイミは思い当たる節があったようで驚いていた。
「どうしてそれが……傷口を見られて人間と突き止められました」
「恐らくモブコザ村はヒト族に対し永続的に治癒魔法が働いている状況だ。自分が怪我しても、瞬時に回復した。だけど、人間族であるジエイミは怪我をしても治癒されない……そこを突かれたということだ」
「やられました……やはり自分さんの言っていた『黒幕』は用意周到でした。勇者機関の設立にも関わっていることから……」
「え?」
あ、そうか……あ、そうやあ、黒幕のことジエイミに話していたな。
正直、適当にでっち上げていたのに、本当に存在するとは思わなかった。
初代勇者パーティーのヒーラーが黒幕なんて……ねぇ……?
しかも、勇者機関の生みの親とか属性モリモリやん……
この世界を裏で管理してきたラスボスが表舞台に出た原因は、恐らくジエイミがモブコザ村に訪れたことだ。
あの村に行ったことは想定外の出来事だったというわけだ。
「大体のことは理解した。ジエイミはグリエルモの狙いが分かるか?」
「それは――! 自分さん下がってください!」
ジエイミは自分を庇うように後ろに回る。
岩のようなものが走ってくるようだ。
「これは? ゴーレム……?」
正体はゴーレムであり、自分達の近くに来ると溶けてなくなる。
その中から一人の魔族が出てきた。
「オトザ……?」
オトザは傷だらけであり、今にも倒れそうだった。
「大変だ……エクシリオ……魔王城が……魔王城が!」
△△△魔王城にて
魔族城の玉座にグリエルモは座る。
「勇者の洗脳が解除されている。他の人間族も正気に戻っていく……どういうことだ?」
グリエルモは、ジエイミの洗脳が解除されたことに気付く。エクシリオに計画を邪魔されている状況だ。
アークジャドウ。ジャークゲドウ。ラースムドウの四天王達はグリエルモの前に倒れていた。
「想定外のことが起きているみたいですね、グリエルモ様。恐らくそれはエクシリオ・マキナの仕業と考えられます」
そこに魔王の格好をしたメルが四天王達を踏みつけ出てきた。メルの目は死んでいる。
「やはり、エクシリオか……彼は本当に優秀だよ。だが、どうやってあの洗脳を解除したと……」
メルはグリエルモに対して頭を下げていた。
「だが、魔王を洗脳することが出来た。これならば、どうにかなる……みんなの悲願を果たすことが出来る……人間と魔族の滅亡が……」
「はい。未だグリエルモ様の目的には何一つ欠陥が見当たりません。このままでも人間族を滅ぼすことに支障はないです」
すると、グリエルモはメルに命令を下した。
「魔王エボルーテ・ドロプス。これまでの伝説通りに勇者を殺してほしい。君の持つ《《新たな力》》でね」
「はい……グリエルモ様。必ず……私が勇者を殺します……ジエイミを……っふ……あっはっはっは!」
メルは高らかに笑う。そうして、魔族領と人間領の境界線へ向かった。
「ついでに、逃げたゴミの始末もしてきます……はっはっは!」
「この時代の魔王はよく笑う奴なんだね、すごく珍しい。正直苦手タイプだ……圧が強い……洗脳してここまで喋る奴は初めてだよ……はぁ……」
グリエルモは一人になるとため息を吐いた。




