第126話 マジョーナとの和解
☆☆☆マズマズドリンクを求めて
どうしよう。肝心のマジョーナが出てきたのはいいけど、正直にマズマズドリンクを作れと言って、彼女が作るかどうか……
マジョーナは自分に嫌がらせをしてくるタイプだ。マズマズドリンクを望めば望むほど、彼女は作らくなるだろう。
なら、自分がチャレンジで飲むと言えば彼女は作るか?
いや、それじゃ一杯分しか作ってもらえない。全部飲むことになりそうだし。飲みきれるわけないな。
「マジョーナ殿! お願いだ! そなたの作ったマズマズドリンクをもっと作ってほしい! 頼む! この通りだ!」
アナスタシアが先に事情を説明してしまった。
「お、おい、アナスタシア! こういうのには直接頼むのは良くない! 絶対に断るに決まっている。こいつは自分にできる限り嫌がらせ――」
「――別に構いませんよ」
「ほら! 言ったことか! 断るに決まって……え?」
「私は構わないと言っているのです」
え?
「原材料は調理場に揃っています。私もこの状況が緊急事態だということぐらいの判断は出来ます。こんな時に、復讐などと拘っているほど小さい女ではないのですよ」
……なんか、策を考えていた自分がバカみたいじゃないか。
「私のマズマズドリンクが異常な市民を戻す方法だというのなら、協力しない理由はないです。市民を守るのが私の使命ですから」
市民を守るやつが自分に嫌がらせするのはどうかと思うが……この際もういいや。
「……そういうと思っていたさ! 早速作ってくれ!」
「貴方に命令されるのは嫌です。とりあえず……やりますか。マジョーナキッチンの開幕です!」
こうしてマジョーナキッチンが始まった……
正直調理中の記憶は今すぐにでも消し去りたいので、見なかったことにしておく。
よくあんな食材を飲み物にしようと思ったよ……マズマズドリンク調理現場にはモザイクかけたほうがいいな!
「完成しました! マズマズドリンクセカンドムーブメント!」
すると以前よりもさらに磨きのかかった汚染された飲み物が出てきた。
「別にそんな強化しなくてもいいのに……普通の味でも……?」
喋ってる最中にタブレットを口に放り込まれた。
すると口の中が気持ち悪くなる。まずい? 苦い? 辛い? すごい!
「ぐああああああああああああ! まずい~~~!」
「エクシリオの反応を見るに味は完璧ですね。飲ませるのが厳しい場合はこれを使ってみると、効率がさらに上がります。そんなこともあなたは考えなかったのですか? だとしたら、少々考えが甘すぎますよ」
だからいちいちマウント取ってくんなよ。まずいまずい〜〜
「げっほ! げっほ! それ自分で試す必要あった? まっず……まっず! うぇ~~~~~~まじゅい~~~~!」
マジで気持ち悪くなってきた。これ戻す一歩手前で留まってる自分を褒めて欲しいくらいだ。
「貴方の不幸な顔を見ると気分がいいので、作り甲斐が出てきます。モチベーションだって高まるのですよ……はっはっは!」
お前それでいいのかよ……あ、これがざまあ展開か!
「とりあえず、これを使えば、多くの人間達を元の状態に戻せる。早く国民に飲ませていくぞ! 皆協力してくれ!」
こうして、カクセイラン王国にマズマズドリンクが広まった
「うえ……」「まじゅい〜」「ゲロゲロ!」
先程まで行われた暴徒に襲われた悲鳴とは違う。
『まずい』という言葉の悲鳴で人々は正気を取り戻していく。いや、これは失っていくの間違いではないだろうか?
ある意味本当の地獄が待っていたのである。
この場にメイドさんがいれば『王都だけに嘔吐』というに違いない。
『王都市民』は最早『嘔吐市民』と化していた。
町中に戻したものが溢れかえっているのは最悪な状況であることに変わりはないが……
この後デート予定のやつだっていただろう。ゲロ吐いた後にキスするとか最悪だし、マズマズドリンクの口臭だって残るはずである。
☆☆☆次なる場所へ
とりあえず、王都や他の場所の暴徒達は沈静化できた。
マジョーナは寝る間も惜しんで、マズマズドリンクを作っている。
「まさか、自分への復讐心で作った飲み物が、この国を救った飲み物になるなんてな……どうだ? 今のあんたは紛れもなくこれから世界を救う勇者パーティーの一員だよ」
「……もうあなたに復讐心はないですよ。どのみち私の育った勇者機関はもうないのですから」
そういえば、ドビーにぶっ壊されたんだった。忘れていたけど勇者機関が黒幕だったんだっけ。
「そうだ。それ、なんで勇者機関は勇者と魔王の戦いを継続させているのかさっぱり分からないんだが」
「それは、初代勇者パーティーである『創設者様』の言葉です。勇者と魔王の戦いをしなければならない。それこそが『みんなを守る』方法だと」
初代勇者パーティーって相当昔じゃん。誰だよそんなバカみたいなこと吹き込んだ無能な奴は……
「みんなを守る方法? なんで戦いを続けることが守ることに繋がるのさ……真逆だろ。人間族と魔族が和解すれば死人だって出ないはずだ」
「そんなの私が知るわけないでしょうに、私はそうするように教育を受けてきたのです。だからそれが正しいと信じてきました」
まあ、そうだよな。味覚だって失ってるんだから。今更考えを変えることなんてできないか。
「でも、今思えば正しくないってのは分かっています。その結果強硬手段に出て私の居場所は無くなった。恐らくジエイミもあなたの言葉を信じているでしょうから、今更どうこうできるなんて無理ですよ」
「勇者機関は無くなったけど。ここでクッソまずいドリンクを作る。それがあんたの居場所じゃなくて何だっていうんだ」
「……」
「マジョーナは何がしたい。勇者機関の目的を果たすために行動していたのか? それとも、市民の命を守るために行動していたのか」
「それは……」
「そういうことだ。答えは自分に聞かせなくていい。居場所があってやることがあるなら、前を向いてまずいドリンクを作ってればいいんだ。その結果が国民の命を多く救っているんだから」
よし、もう王都は大丈夫だろう。次魔族領だ。あっちの状況もやばかったらこのドリンク粉末タブレットを飲ませる必要がある。
「では、自分はこれで失礼する」
恐らく今、暴走している冒険者達が進行しているはずだ。全面戦争は避けなければ!
「……あなたにだけは死んでも言わないと思っていました」
すれ違いざまに、言われる。
「サンキューです」
マジョーナは憑き物が取れたかのように笑った。
「……おう」
どうやら、これでもうマジョーナに付きまとわれることはないようだな。




