第125話 暴徒と化した王都の市民
☆☆☆王都に着いて
わんわんモフルン丸で移動して王都に着いたのは翌日。やはり嫌な予感は的中していた。
王都の建物から炎が吹き荒れ、まさしく地獄絵図のような現場となっていた。
街では悲鳴が聞こえており、皆が逃げ惑っている。
そこには暴徒と化した人間同士が争っていた。
いや、なんだこの状況。いくら王都の連中が頭おかしいからと言って、ここまで、頭がおかしいとは聞いていない。
いくらなんでも限度があるだろう。
「殺す!」「殺す!」「殺す!」
しまった。ここで治癒魔法の効果がない。捕まれば終わりだ……! 逃げなければ!
「はぁぁ! サイクロンブースト!」
風魔法で暴徒と化した人間は吹き飛ばされる。確かこの魔法は……
「ペルペッ……エクシリオ殿! ここは危険だ! すぐに逃げないと!」
そこには、かつてお世話になったアナスタシアがいた。
「アナスタシア……」
兎にも角にも警護してもらいながら、クソ不味いドリンクを売り出そうとしている喫茶店に逃げこむ。
どうやらこの場所は未だ安全らしいが……どうにも建物の中が安全だとは思えないのはゾンビ映画を見たことがあるからだろうか?
「あ、マスター! マズマズドリンク開発中です!」
あの頭の可笑しい店長は暴徒と化していないのか……もうすでに暴徒みたいなものだしな。
とりあえず一息つくため、椅子に座った。この店の飲み物は口にしたくない。変な物しか入ってなさそうだし。
「今王都に着いたんだ。状況を説明してほしい。アナスタシア」
「分かった。今王都は……」
アナスタシアからこの王都の現状を聞かされた。
突如。住民の意識が途切れ、倒れると暴徒と化し攻撃的になる。
どうやら、王も暴徒と化したようで、魔族との全面戦争をする話が進んでいるそうだ。
つまり、これから人間領と魔族領は戦場となるらしい。
アナスタシアたちは何の前触れもなく暴徒と化した市民を無力化しているらしい。
「だから。エクシリオ殿も避難した方がいい。王都は危険……っぐ!」
アナスタシアは頭を押さえた。
「うわぁぁぁぁ!」
アナスタシアはもがき苦しむ。
「どうしたアナスタシア! 急に頭を押さえて……まさか、お前も暴徒と化してしまうのか!」
「逃げるんだエクシリオ殿……必死に抗っているが……こいつはきつい! もう抗うことはできない……っく!」
逃げろと言われたって、どこに逃げるんだよ。この喫茶店が安全だって聞いたから避難してきたのに……
なんかゾンビ映画でも見ている気分だ。ほんとに。
「くっ殺せ! 私が誰かを殺す前に殺せぇ!」
あっ、やっと言った。くっ殺! でもこのままだと本当に死にそうだ。流石にそれはダメだ。
「いやいや! 命は大事にしようよ! そんなとこで諦めんな! お前たち彼女を抑え込むんだ」
自分でやるのは不可能なので。
「「「っぐおおおおおお!」」」
彼女は暴れ出し剣を抜こうとするが、喫茶店に避難している男達が抑え込んだ。
「何か縛るものを持ってこい! 無力化すれば……」
しかし、アナスタシアも勇者パーティーの一員だ。押さえ込んでいた男達は簡単に振り払われる。
「「「うわあああああ」」」
だが、大丈夫だ。この店には彼女がいる。取り押さえることなど容易だろう。
「店長! マジョーナはどこに行った?」
「あ、マジョーナシェフなら、エクステンドバスコの買い出しに行っています」
「嘘だろぉ! こんな非常事態に何してんだよ!」
「なんでもこんな時だからこそ辛いものが食べたいと」
この状況を諦めてんじゃねえかあの女。最後の晩餐でも食べる気か?
「ぐおおおおおおお! っく! 殺せ殺せ殺せぇ!」
再び男たちに抑えられる。恐らく長くはもたないだろう……何かないのか……
調理場には異様な色と臭いを放つドリンクが……クソ不味そうだな。あ、そうだ。
何もしないよりはマシだろう。すぐにマズマズドリンクをアナスタシアに飲ませた。
「っぐ! うわぁぁぁぁあ!」
吐き出すが更に流し込む。そして、アナスタシアはマズマズドリンクを飲み干した。
この不味さなら意識を失うだろう。その隙に縛り上げれば……
「……ま、まずい~~~~~~~~! うえ~~~~~!」
咳き込み続ける。
「……あれ、私は……何を……! くっ! 殺せ!」
え……元に戻った? 嘘だろ?
まさか、マズマズドリンクに……そんな効果があったのか?
「すまないエクシリオ殿! 皆を危険に晒してしまった! 責任を取って死ぬつもりだ! 殺せ……」
「頼むから生きてくれ、あんたのミスじゃないんだから、いちいち死のうとするな!」
暴走を止めるほど不味いドリンク。もしかしたらこれは……
「起きたことをいちいち悩むな、そんなのいつでもできる。それよりも次のことを考えるんだ。だからアナスタシア協力してくれるか?」
「分かったぞ!」
それから、検証のため外にいる暴徒達にマズマズドリンクを飲ませると、あまりの不味さに意識を取り戻していく。
「まずい~~~」「まずい~~~」「まずい~~~」
なるほど、あの喫茶店にいた人たちが暴徒と化さなかったのは、マズマズドリンクを予め飲んでいたからに違いない!
いや、どういうことだよ……
「流石はエクシリオ殿! ゴミの様に不味いがアレを飲ませれば良いと気づくなんて!」
いやそれに関してはほんと偶然だよ。何入ってんのアレ……絶対飲みたくない。
「安心するのはまだ早い。アナスタシア。早くマジョーナにあのドリンクを作らせなければ間に合わなくなる。彼女を見つけることが先決だ」
数に限りがあるのだ。
「……私を呼びましたか? エクシリオ」
すると後ろにはマジョーナがいた。
「マジョーナ……」
店での再開以来だった。




