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第122話 村での死闘

〇〇〇新たな敵


自分さんと二手に別れると、真っ先に私は衝撃の方へ駆けつけます。


広場にはボボボボア数体が暴れまわり村人を襲っています。


「助けてくれー」「うわぁぁぁ!」


「はぁぁ!」


一瞬で片付けました。人間族にとっては脅威ではない相手。しかし、ヒト族はこのモンスターにすら逃げることしかできないのですね。


しかし、最近戦闘していないせいか、腕が少し訛った気がします。以前ならもう数秒早く仕留められたものを……


というのも、自分さんが戦わなくていい世界を作ろうとしているからであるのですが……


とりあえず、この場所はもう大丈夫でしょう。早く自分さんの元へ、


あの言葉が強がりってことぐらい。私にだって分かります。すぐに駆け付けないと……ボボボボア一体でもきっと勝てないから。私が守らないと……


――あれ?


何か痛みが……ナイフで刺されたかのように、腕から血が溢れます。


「――!」


攻撃を受けた方向を見ると、そこには先ほど出会った釣り人の女性がナイフを持っていました。


やはり、彼女には何かがあるのです……自分さんの言う通り警戒しなければ。


気配に気付けなかった……?


「おかしい。もっと深く抉ったはずなのに。表面しか切れていない……」


彼女は帽子を深く被り直しながら言います。


「……あなたは何ですか」


血は流れ続けます……一体。


「……君。本当に人間族だったんだ」


今度は確信を持って聞かれます。彼女は私の傷口をずっと見つめていました。


「だとして、どうしてナイフを向ける必要があるのですか……?」


「……この村に人間族がいたらダメなんだよ……先程の動きもとてもヒト族にできるものじゃない。だから、試させてもらった。あの子たちを使ってね」


「では、あなたが、この村にボボボボアを迎え入れたというのですか!」


「そうだとしたら……?」


彼女は不敵に笑います。


「村人が襲われる危険を考えていないのですか!」


「君にだけは言われたくないよ人間族……ヒト族の村に土足で踏み入れて……!」


明らかに相手は私に敵意……いや、これは殺意を向けています。何かものすごく不覚に眠る憎悪が溢れ出すように……


気配が消える。しかし動きはもう見切っています。


「ごめんなさい……!」


手加減をして、死角からの攻撃に対応し、軽く突き飛ばします……


「……っぐ!」


彼女はかなりの距離を飛ばされ木に衝突し動かなくなります。


……やりすぎてしまいましたか。自分さんでも恐らく耐えられるかどうかの一撃でした。もしかしたら殺してしまったかもしれません……


「だ、大丈夫ですか――」


「――貰ったよ」


――フェイントですか! 至近距離で回避は間に合いません。


「っぐ!」


恐らく彼女はヒト族です。だから攻撃を躱すことは容易なはず……


なのに、何かがおかしい。


「はぁぁぁ!」


力を込めた、一撃を彼女の腹に打ち込みます。


「っぐ! なんて……」


腕を何カ所も刺されています。先ほどから何かがおかしいと気付きました。


なぜ、彼女は何度も攻撃を食らっているのにびくともしないのでしょうか。


いや、それどころか、明らかに先程よりも動きが上がっています。


「……っく!」


先程の攻撃の痛みが出てきます。でもこれぐらいなんてことないはずなのに……


「ヒール……え……ヒール!」


治癒魔法を使いますがうまくいきません。


「――回復は封じさせてもらったよ……」


彼女は先ほどとは比べ物にならないくらいの速度が出てきます。


これは……仕方がありません。


「ごめんなさい。もう……手加減は出来ません!」


腰に掛けてあった剣を抜き、斬りかかります……恐らく。全力でやらないと彼女は倒れない。


「今までが本気でなかった。君は随分と余裕があったんだ……!」


攻撃の打ち合いになります。


「はぁぁぁぁあ!」


何回も斬り合いになるも、彼女には傷一つ付けられていません。


「はぁ……はぁ……」


「その程度……人間族は大したことがない……!」


失望の眼差し。


「私は勇者ジエイミ・メダデス……! あなたに……負けるわけが!」


あれ……なぜでしょう。やはり、以前よりも腕が落ちているのは明らかです。でもこれほど急に弱くなるとは考えられません。


何度も交戦を続けていますが、一向に彼女優位の戦闘を抜け出すことが出来ません。


「勇者……? 君がかい? それはおかしい……勇者は人間族の象徴だろうに」


「何がおかしいのですか!」


「まさか……今の勇者が、これほどまでに弱いなんて……」


「何を!」


攻撃は躱されます……どうして……彼女はヒト族なのに……


相手は強敵です。恐らく、私が以前想定した魔王。いや、それ以上の相手……


まさか……それこそ、自分さんが言ったことが、真実だったということです。


「……あなたが、勇者と魔王の戦いを影から操り、全ての事態を引き起こしていた黒幕ということですか……!」


その言葉に顔色が険しく変わる。図星だったのでしょうか……


「そこまで気付いていたなんて……いや、だからこそ、この村で僕を探していたというわけか、一体誰が……その真実に辿り着いたというんだい……?」


「じぶ……エクシリオさんです!」


危うく、自分さんと言い掛けました。


「エクシリオ・マキナ……あぁ、そうか、そういうことだったんだ。勇者機関を潰したのも……魔王と勇者の争いを終わらせようとしたのも……やっぱり全部彼だったんだね……余計なことをしてくれる」


やはり、彼女こそが、この世界に争いをもたらした本当の黒幕……


つまり、彼女を倒すことが出来れば……戦いは終わるのです。


「よそ見をしている場合かい」


「っく!」


猛攻は止まりません。このままでは有効打もなく負けてしまいます。


全力で……普段の力以上の実力を発揮しないと。彼女は倒せない!


「――オーバークロック!」


――加速魔法。更なる加速……


「何……? 加速魔法!? っぐ!」


連撃で斬り裂き。最後に斬り上げ彼女を空へ浮かします


回りに誰もいない。周囲を確認完了!


剣に魔力を集中させます。


「――ライトニング・アブソリューション!」


――最大出力の一撃を彼女に向かって放つ


「はぁぁぁぁぁぁああああああああ!」


大空は光に包まれ、雲すら突破します。


「はぁ……はぁ……」


久々の最大出力ライトニング・アブソリューションに疲労が訪れます……


「――《《ヒール》》」


彼女の言葉が聞こえます。嘘だ……あの一撃を耐えた?


「嘘……」


しかも、彼女には傷一つついていない。宙に浮かび私を見下ろします。


先ほど聞いた言葉は間違いありません……少し分かった気がしました。


『ヒール』


つまり、彼女のジョブはヒーラーです。それも、命を奪いかねない最強の一撃を一瞬で回復してしまうほどの実力者。


そんなヒーラーはこの世界で聞いたことがないです……


「貴方は……一体何者ですか?」


恐らくこの世界に存在し得る全てのヒーラーの頂点に立つ存在。


一体彼女は何者なのでしょうか……


「君は勇者なんだよね……だったら聞いたことはない?」


そして彼女は帽子を取ります。緑色の髪が太陽の後光で彼女を輝かせました。


「――勇者パーティーにいた治癒師を」


「何を……!」


いえ、私は知っています……勇者伝説には、初代勇者の仲間の記述があります。


素晴らしいカリスマ性を誇る勇者の『エグネイト』


素晴らしい魔力を持つ魔法使いの『メルクリア』


素晴らしい防御力誇るタンク役の『ドビル』


そして……


「……回復役の『グリエルモ』……?」


確かに、初代勇者パーティーには、役に立っていなかったヒーラーが存在していました……


「正解……やっぱり、勇者の末裔には伝わっていたんだ」


嘘……なら、彼女が……初代勇者パーティーのヒーラーだというのですか?


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