第118話 遭遇しました。
〇〇〇帰りにて
正直状況を上手く理解できていません。
自分さんが別の世界から来たと言っていますが、その世界が想像すらできません。
しかしメルはその答えに一人で辿り着いた。
少し悔しいです。自分さんと一緒にいた時間は私だってあるのに、言われてみれば、この世界の常識とは少し違った感性を持っています。
自分さんの行動にヒントがあったのに、気付けなかった事実が悔しかったのです。
何度も、『エクシリオさん』と呼んでいた時に、怒りをぶつけられたのもそういうことだったと、一人で納得しています。
自分さんが元居た世界とはどのような場所なのか……この世界よりも平和なのでしょうか……
漫画やアイドルというモノが存在していることから、娯楽はこの世界よりもあると考えて良いでしょう。
それでいて自分さんはどんな職業についていて、名前は一体何だったのか……
考えれば考えるほど分からなくなります……ダメです。分かりません。ジエイミ。ダメデス。
今は山に行き食材を調達した帰りです。モブコザ村の食材はどれもすごくおいしそうで調理のし甲斐があります!
あれ、何か歌が聞こえます……
「釣り釣り~君と僕とでは釣りあわない~そんな真実つりぃ~」
釣りの帰りでしょうか……深く帽子を被り釣り竿を持った人が私の前を通り過ぎます。
しかし、その……なんてひどい歌でしょうか……こんな歌考えた人いるんですね。
「……君」
すると、私の存在に気付くと、強くこちらを睨みました。
「《《人間》》?」
人間……その言葉に寒気が走ります。彼からはもの凄い殺気が……
それと同時に自分さんの言葉を思い出しました。
~~~
『ジエイミ。もし人間だとバレそうになった時。誤魔化せるか』
『いいえ、得意ではないです。嘘というのは……誰かを騙すというのは良くないことですから……』
『ならば、自分が演じているアレの真似をするといい。馬鹿っぽく振舞うんだ。そうすれば相手に馬鹿だと思われる。そうなれば、話していても時間の無駄だと思ってくれるだろう』
『分かりました! 馬鹿になります!』
~~~
馬鹿だと思われる……自分さんが演じている時の真似……
自分さんの真似をするというのは何ともおこがましいですが……
自分さんの真似……自分さんの真似……うぇーい……うぇーい……
バカバカバカバカ……おバカ……馬鹿にならないと。馬鹿に!
「――っふ、君は何を言っているのかさっぱり分からないな」
あ……
ああああぁぁあぁ! 間違えましたぁぁ!
これ勇者モードの自分さんですよおおおお!
「え、え、え?」
「――先ほど私のことを鋭く見つめていたようだが、一体何の用があって」
「だから人間――」
そして、自分さんは相手にペースを握らせません。
常にこちらが先導して会話を進めています。そうすれば、例え間違っていたとしても疑うのがワンテンポ遅れる。つまり、それで普段誤魔化していたわけです。
「――ニンゲン? それは食べ物か、今私はとてもお腹空いているのだ。もしよかったら、分けてもらえないだろうか? ご飯凄い食べたい……食べたい!」
「ごめん。人違い……(思ったより馬鹿だったなこの人。人間なわけないか……)」
小声でも聞こえていますよ……でも、馬鹿だと思ってくれてよかった……
何とか人間とバレずに済みました。
「――っふ、気にする必要はない。――っふ、私は心が広いんだ。そして強い。いちいち気にしてるやつは弱い奴がすることだ……――っふ! ――っふ! ――っ!」
こんな感じでしょうか……いや、全然かっこよくないです。本当の自分さんならもっとかっこよくて素敵で……
「――っふ!」
片手で目を覆いながらかっこつけます。
駄目です……全然かっこよくない。私では自分さんの魅力は表現出来ません……
ほんと真似をするのもおこがましいです。
「あ、勘違いだった。さようなら」
そのまま、帽子の人は消えていきました。
「釣り釣り~君と僕とでは釣りあわない~そんな真実つりぃ~」
危なかった……私が人間族とバレてしまえば大変なことになってしまいます。
しかし、今の人から感じた殺気は一体なんだったのでしょうか……
凄い変な歌です……なんでしょうかあれは……




