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第115話 釣りに行こう!

☆☆☆謎の釣り人


早くに目が覚め、朝食の贖罪を探しに出かけた。


この村は自給自足ができる自然豊かな田舎だ。魚を釣ったり山菜を取ったりできる。


ジエイミは山で食料調達に、自分は魚を釣ることにした。そして互いに調達した食材で一緒に料理をしようということになっている。


釣り道具を持って自分は記憶の元に川を探す。


「えーっとここだったっけか……あ、ここだここ……やっぱ魚は自分で釣ってこそ美味いんだよなぁ~」


まぁ魚釣ったことけどさ。こういうのはなんとなく良いところいけば釣れるものだ。


「釣り釣り~お前と俺とじゃ釣りあわない~そんな真実つりぃ~……って!」


人影が見える。釣りに来ている先客がいたようだ。


誰もいないと思っていたので聞かれていたら恥ずかしい。


いや、適当な曲を歌っていたところを誰かに見られるのは恥ずかしいでしょ!


恐らくメルの妄想日記を見られるのと同等だ。


「あーあー。という曲を今度友達の前で歌うんだ~あ~~」


絶対変な奴だと思われたので誤魔化しておいた。


「……」


反応はない。


よく見ると、釣り人はジエイミと同い年ぐらいだ。


思ったより全然若かったな。木の桶を見ると未だ一匹も連れていない。


「ここ釣れる? 今から失礼するんだけど……」


一応許可を取った。


「……あまり釣れない」


やっと返事をしてくれた。声は低くも高くもない。振り返ると見た目は中性的だった。


深くかぶったキャスケットから見える薄い緑髪は男子にしては長め、女子にしては短め。どちらともとれる。性別どっちだろうか?


隣に腰を掛け、持っていた釣りを始める。


「とりあえず横。失礼する」


「ん……」


こくりと頷いた。


「……」「……」


それから少し会話のない時間が続く。


よくよく考えてみれば、こんな奴この村にいたっけ……?


エクシリオなら年が近い相手なら良くも悪くも交友関係は多かったはずだ。


だけどこの釣り人は記憶にいなかった、それかずっと家にこもっていたタイプの相手なら会うことはなかったのかもしれないな。


…………


……


しっかし、全く釣れないな。かれこれ十五分くらい経っている。


「どうしてここで釣りをしているんだ? こんなにも釣れないじゃないか」


「……僕は釣りが目的でここにきているわけじゃない」


僕っ子か。男子と思いたいが、男の娘って可能性もある。


「だから、釣れるとか釣れないとかそういうのはあまり関係なくて……」


釣りが目的じゃない……か。


「つまり、ここにいること自体が目的ってことか。なるほどなるほど」


まぁそれしかないので適当に言う。


「……!」


図星だったのだろうか。びくっとしていた。恐らく一人になりたいとかそんな気分だったのだろう。となれば、自分がここにいるのは良くないか……


「ま、お邪魔なようだし、ここで魚は釣れないと分かったから立ち去るよ」


「い、いや……違くて……その……ウキが……」


すると、釣り人のウキがとても振動していた。つまり獲物が掛かったということだ。


☆☆☆大物を釣れ!


「ど、どうしよう」


「何を焦る必要がある。普通に上げればいいだろ」


「その……今まで釣りしてきて獲物がかかったの今日が初めてで……!」


そんなことあるかよ……正直自分もガキの頃にザリガニしか釣ったことない。


本格的ではないにしろ、一応ザリガニ釣りで鍛えた。知識はある……


「とりあえず竿を上げるんだ。そうすれば魚は出てくる」


「……わわわわ!」


しかしぎこちない。


「もういい! 貸せ!」


釣り人から竿を奪い取り思い切り引っ張るが、びくともしない。かなりの大物かもしれないな。


……他のヒト族ならもしかしたら引きずり込まれていたかもしれない。普通の魚やザリガニでは考えられない踏ん張り具合だ。


「っぐ……この全く動じない力強さと冷静さ、もしかしたらこいつはここにきた釣り人達の餌を食べて進化し続けた『川のヌシ』かもしれない。相当の獲物だぞ!」


「か、川のヌシ?」


「そうだ。恐らく何人の釣り人を葬ってきたことだろう……っぐ!」


違うかもしれないけど……


「確か……聞いたことがある。この川には結構……かなり? 昔に巨大な魚が住み着いているって……まさか、その存在が……『川のヌシ』だと……」


その説明からしてほんとに川のヌシかもしれないな……なら……


「そういうことだ……っぐ!」


恐らく村の生物は弱いはずだ。そうでなければヒト族は確実に、その生物たちに殺されている。


ならこの異常な踏ん張り具合は何だというのだ? くそ! ゲームなら一瞬で釣れるのに! 自分の知識はザリガニ釣りだけだ。


それなのにこんな力の強い魚をどう釣れば!


思い出せ……ザリガニだ……割りばしに糸を撒いてアタリメを餌に釣る。


思い出せ……自分はかつてザリガニの名手。沢山ザリガニを釣り上げ、地元の大会で優勝した……ザリガニ王の名を……


「うおおおおおおお!」


最大の力を振り絞り大きな物体が飛び上がる。綺麗な円弧を描いていた。


「おお~」


そしてその物体は地面に落ちる……一体どんな獲物が……


「「え?」」


そこに落ちていたのは、捨てられた椅子であった。


魚でもザリガニでもなかった。ただ家具が引っかかってそれを釣り上げただけである。


「……」


釣り人は自分を見ていた。


川のヌシとか言ってたのが今になって恥ずかしくなってきた。


あんなこと言っておいて釣り上げたのが、椅子って……それはないでしょう。


正直に言うと死ぬほど気まずいこの状況。

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