第112話 弱さと向き合う
☆☆☆ジエイミのやさしさ
夕暮れ。
家から少し離れた草原でジエイミは大木に体を預けていた。
こちらに気づくと近くに来る。
「エクシリオさん……どうかしましたか?」
流石に母親の表情から良いことはなかったと察していたのだろう。
「いや、大丈夫だ」
「大丈夫そうな顔に見えないです。何かあったのですよね」
あれ、大丈夫だと思ったんだけどな。思ったより顔に出ていたか。
実家に帰省して家族から否定されるというのはダメージが大きいのだろうか。
精神世界での攻撃は対しては、作り物だと思うことで平気だった。
だけどこれは事実だ。それも生みの母親に対し拒絶される。きっと体のエクシリオの部分が耐えきれないのだろう。
自分もエクシリオを重ねてダメージを受けていたと……
「そう……なのかもしれないな。自分にとっては、大したことのないと思っていたけど。まぁ生きていればこういうことはあるものだよ」
「エクシリオさん……」
すると、自分を優しく抱きしめた。え?
「ジ、ジエイミ?」
「強がる必要はないと……言ったのはエクシリオさんです。それならば……私の前でくらい。弱音吐いてもいいのです……あの時のように」
別に泣くつもりはなかったし、感情を爆発させる気もなかった。
あの時というのは恐らくジエイミに組み伏せられたことだろう。
感情に任せてジエイミを怒鳴りつけた。大人げなかったな。
「あの時の言葉は本物でしたよね。辛かったこと。苦しかった想いが伝わってきて……私の期待がエクシリオさんを苦しめていたんだって」
ジエイミ……
「あれから少し考えて答えが出ました。例え力がなくたって私がエクシリオさんを尊敬していることには変わりはないと」
「だが、騙していたことは事実だ。それにどうしようもないくらい弱いんだぞ」
「だけど……エクシリオさんのおかげで私は強くなれました。エクシリオさんは『強い』と何度だって言います!」
「心が強いみたいないい方しなくても、出来ることをやっていただけだ。尊敬されることなんてしていない。光るだけの最弱魔法だぞ」
厳密にはもう一つ能力はあるのだが……それも戦闘に向いていないし使い勝手もゴミである。
「その最弱の光で私を導いてくれました。きっとエクシリオさんの光はみんなを正しい方向へと導いてくれるものです。そこに『力』なんていらない。戦うのではなく戦う理由をなくすことで、争いを終わらせようとしたのですから」
物は言いようだけど……そうだよな。
ここまでこれたのは自分の功績だと思っていいのか。
正直自分の行動が正しいと思ったことはないし、あくまで保身のためだった。
自分と関わった相手の運命を変えたことも事実だ。ジエイミも、メルも、その他の相手も……そして、何よりもエクシリオの運命が大きく変わった。
『エクシリオ』は最初に死んでいたはずの火種だ。何とか生き残ったことで、人間族と魔族の争いも遅らせることが出来た。
なら、少しぐらい、誇ってもいいのかな……自分は。
「ありがとう。ジエイミ……その言葉を貰えると自信が出てくるもんだな……」
「何回だって言いますよ……強いって、素敵だって、尊敬しているって」
ほんとに嬉しいものだな。
「ありがとう……ジエイミ。君に聞いてほしいことがあるんだ」
だからこそ、言おうと思った。
☆☆☆真実を伝えること
近くの草原に隣り合わせで座る。風が心地よく靡いていた。
「この場所で自分は誰よりも優れていたんだ。子供の頃から大人にだって負けないくらい凄かった。自分より上は存在しないって本気で思っていたさ」
ジエイミに語る。
「世界の真理を知る前。自分はどこへでも行けると思っていた。自分の存在が最強であると信じて疑わなかったんだよ。だから旅に出たんだ」
これはとある馬鹿の話である。
「でも、いざ世界を知ってみれば、大したことのないんだって、上には上がいるんだって現実を思い知らされた」
「周りの相手は皆輝いていて先へ進んで行き、自分だけは取り残されていく。所詮、特別にはなれないだと……どうしようもなく自分は弱いのだと気付いた」
「エクシリオさん……」
「何を言ったって自分は弱いままだ。もがいても、隠しても、騙しても、結局自分が強くなることはない。ただ知られたくなかったんだ。自分の弱さを……本当は強くなんてないことを」
「だから無理して強がって、大きな失敗をして、それで全てを失った。結局最初から、旅立たずにかつての居場所に留まっていれば、何も失わずに済んだんだ……」
ジエイミは自分の話を真剣に聞いてくれた。
「ジエイミ。君の言葉に救われた。今から荒唐無稽な話をする。信じてほしいとは思わない……君に聞いてほしいんだ」
「はい。どんな言葉でも私はエクシリオさんを信じます……」
自分は立ち上がり向き合う。だから、ジエイミに伝えようと思った。
「……俺は……いいや、自分は……《《エクシリオ・マキナじゃない》》」
自分の真実を打ち明けようと思った。
「え」




