第108話 デートの続き。そして
☆☆☆喫茶店を出て
高額な賞金で客を釣るという大食い店で使うあの手法を利用した。
食べきれたら無料の豪華版だ。恐らくあの不味さなら飲みきれる奴はごくわずかだ。報酬金貨十枚だとしても、お釣りがくるだろう
「エクシリオさんはすごいです。まさか、そんな方法を思いつくなんて……ですが、本当にいいんですか。マジョーナさんのこと」
「何がだ?」
「マジョーナさんはエクシリオさんの命を狙っていたのですよね。最初から生け贄として連れてこられた勇者とお伺いしています」
ああ、ジエイミもそのこと知っていたのか。
「う~ん。別に復讐したいとかそういうのは考えてないな。その時間を自分はもっと有意義に使いたいもんだよ」
嫌がらせはするかもしれないが。
「あっちは自分のこと死ぬほど恨んでるみたいだし、それで復讐の釣り合いは取れるってもんだ」
「心がとても広いのですね……流石エクシリオさん」
「弱いからいちいち気にしてられないだけだよ。別に自分が辛い思いしているわけではないんだし」
最弱だからな。
「それに歴代最強の勇者が惚れた相手なんだ。たかが命を狙われただけでキレ散らかすなんてかっこ悪い事できないだろ。惚れられた側にだって責任はあるんだ。かっこつけさせてもらっている」
やべ、言った自分が恥ずかしくなってきた……
「……かっこつけてるんじゃないです。かっこいいんですエクシリオさんは」
ジエイミは笑っていた。
☆☆☆ジエイミの提案
さて、雑に解決した。一日で店の経営を変えることなんて不可能なので、デートを続けよう。
二人で王都を歩いているがデートプランは完全に崩壊している。
「もしかして、予定がなくなってしまいましたか? 私がわがまま言ったばかりに」
「自分が予定がなくなることを想定していないとでも思ったか? 織り込み済みだ」
前回の占いで想定はしていた。なんかろくなことにならないなと。
「流石はエクシリオさん……」
しかし、どこかがっかりした表情を……これは?
「ジエイミは何か提案があるのか?」
「い、いえ、別にそんなことは……それに」
恐らく相手を立ててあげたいから、提案を避けているのだ。
『占い師が言っていたから』そう考えているに違いない。だから自分の意見を出せないのだ。
「話してくれ。ジエイミはどこか行きたいところがあるのだろ?」
「ですが……」
「自分がそうしたいんだ。ジエイミの意見を知りたい。先ほどの話の続きだ。互いが互いを補完し合うには、相手を理解することが不可欠だ。だから、聞かせてくれないだろうか?」
理解してくれたようだ。
「その……差し出がましいのですが……エクシリオさんの故郷に行ってみたくて」
……え? 自分の故郷……あ、エクシリオの故郷か。確か……
「『モブコザ村』か、クソ田舎で何もないぞ?」
そもそもどこにあるか分からないし……記憶だとマジョーナと一緒に出て行ったことしか覚えてない。
「いいえ、エクシリオさんがどういうところで育ったのか知りたくて……」
別にモブコザ村で育ったわけじゃない。自分は……
「そ、そうか……自分のことを知りたいのか、だが今からだと遅くならないか?」
「その問題は大丈夫です! ワンワンモフルン丸がいますから!」
「ワン!」
わんわんモフルン丸がどこからもなく現れた。
もはやタクシーになりつつあるな。
「善は急げです! 行きましょう!」
ジエイミに手を引っ張られる。
「ちょっと、王都からの向かい方分からないぞ!」
「わんわんモフルン丸の嗅覚を侮ってもらっては困ります! 臭いでその人の地元を当てることが出来るのですよ!」
追放勇者の成り上がれはすげぇ力だ!
まぁいいか、一度はモブコザ村に訪れなければいけないと思った。
だけど……一つ不安があった。
自分はエクシリオ・マキナではない。そしてエクシリオ・マキナの地元に訪れるということは……
あのパリピキャラを演じなければいけなくなるのではないだろうか……?
――第八章。完!




