第107話 究極マズさを求めて
☆☆☆意識を取り戻した店長に一言
「これで分かっただろ、あんなクソ不味い飲み物を作ったシェフは早くクビにするべきだ」
「い、いえ、確かにあのドリンクはクソ不味かったかもしれません。身の毛のよだつ味でした……ですが、それこそが良いのです!」
「え?」
店長どうした?
「私はあれを飲んだ瞬間! 世界の真理に辿り着いた気がするのです」
「いや、あんたは不味さのあまり意識が飛んだだけ――」
「――とにかく! 私はこのマズマズドリンクをメニューにしようと思います。喫茶店マスターもその方針で生きましょう」
えぇ……それでいいのか、こっちも口の周りが悲鳴を上げているってのに。
「シャケの皮のメニューとかどうですか。店長さん」
「ジエイミ。いったんシャケの皮から離れよう」
「ですが……あんな不味いドリンクを売ったところでお客さんが入るとは思えません!」
シャケの皮の花を出したところで客が入るとは思えない。
「どうしたら……調合はマジョーナシェフに任せるにしても。私はあの不味いドリンクに心惹かれてしまいました!」
「随分あいつのことを信頼しているんだな。店長さんは」
「あんなまずいドリンクを作れる人を信頼するのは当然事だと思いますが」
いや、当然じゃないだろう。
「とにかく私は、このマズマズドリンクをメインメニューにしようと思います。このマズマズドリンクを王国で流行らせるのです!」
もう、勝手にやって潰れてくれ。
あのドリンクが王国で流行ればもはやバイオテロの一種だろ。
しっかしあんな不味いドリンクどうやったって流行らない……
一種の罰ゲームだ……あ。
「……何故マズい事を悪いと決めつけていた……」
「どういうことですか? エクシリオさん」
「悪いと主観で判断するのは間違っていたということだ。マジョーナもクビにしなくていいし、店が潤う方法が見つかったんだよ」
「「え!」」
「こういうのはどうだろうか……」
△△△少しの時を経た喫茶店
「最近ここの喫茶店のメニューゴミなんだよな。一体どうやったらこんなゴミが出来るのか、気になる。クソマズリストとして!」
『クソマズリスト』
ありとあらゆるまずい食べ物を愛好する者のためにある言葉。
ある男が喫茶店に立ち寄った。
「いらっしゃいませ!」
そこで男は想像を絶する光景を見た。
「……な、なんだこの光景は! どうして客が全員倒れてやがる!」
店に立ち寄った客は全員倒れていた。そして机にはあるドリンクが……
「まずい~~~!」「ぐわあ……」「ダメだ勝てるわけない!」
「ほう、このドリンクを飲んで皆が倒れたというのか……!」
メニューを開くと驚きの言葉が記されてあった。
「『マズマズドリンク……最後まで飲み干せた人には金貨十枚贈呈』……なるほど、皆は賞金が目当てでこのドリンクを頼み。そして撃沈したということか……」
男の前に店長が現れる。
「オーダーはお決まりでしょうか? マズマズドリンクを見たということは……貴方も挑戦者でしょうか?」
「決まっている。マズマズドリンクを一つ」
「あの惨状を見てなお注文するとは……あなた『クソマズリスト』ですね。それも私とは違う。瞳を見ればわかりますよ」
「あぁ、そうだ。賞金なんかに興味はない。俺はここでこの珍味に巡り合うべくやってきたんだ」
「……貴方なら……もしかしたら、この不可能を超えてしまうかもしれませんね」
そうして、店長はマズマズドリンクを持ってきた。
「な、なんだこの臭い……見た目もドブのようだ……本当に飲めるものなのだよな?」
男は想像を絶するドリンクに戸惑いを見せる。
「食品しか使っていませんよ。健康面は大丈夫です。嘔吐するかもしれません。王都の店だけに」
店長は笑顔で言った。
「……いざ! 参る……!」
男はドリンクを一気に飲み干そうとする。しかし、途中で止まった。
「ま、まさか! いくらクソマズリストだとしてそれは自殺行為……!」
「ま、不味い……なんだこの不味さは……辛い。苦い。渋い。酸っぱい。脂っぽい……それでいて甘い。全てにおいて人間が不快になる味をしている……」
「ギブアップですか? 大体の人間は賞金目当てで一口で倒れた。しかしお客様はいまだ健在……いけるのでは!」
「うおおおおおおお!」
そして男はマズマズドリンクを飲み干した。
「ぐえぇぇぇぇ!」
「す、すごい……マズマズドリンクを飲み干した……! おめでとうございます! あなたがお客様です!」
「「「「うおおおおおおお!」」」」
その後、喫茶店は大いに賑わった。
男は賞金は受け取らず。その代わりマズマズドリンクを飲み放題という地獄を背負うこととなった。
エクシリオが提案した。賞金がある『マズマズドリンク』は王国で話題となり、訪れる客が増えたという。
しかし、未だに完遂した者はクスマズリストの男だけであり。その不味さで店の経営は潤った。
マジョーナもマズマズドリンクを作ることに生を尽くして、いつ頃かエクシリオへの復讐を忘れていた。
そして、マズマズドリンクはマジョーナが味見しても味覚がないため、簡単に飲み干せてしまうのだ。
「あぁ、やっぱり味がしませんね……やっぱエクステンドバスコがなくては!」
マジョーナはエクステンドバスコを一気飲みする。
「辛い! もう一本!」




