第104話 マジョーナはシェフでした!
☆☆☆怒りの原因
「ひ、ひぃぃ!」
咄嗟にジエイミの後ろに隠れる。絶対に守ってくれる確信があった。
「どうしてエクシリオがこんなところにいるのですか!」
マジョーナは自分に対しキレ散らかしていた。
「それはこっちのセリフだ。バカみたいな作戦に引っかかった勇者機関様がこんなところでシェフの真似事しやがって」
煽りを加えておいた。ジエイミが守ってくれるだろう。守ってくれるよな?
「あの一件でクビになったのですよ。私は職を失ってこんなところで働いていたのに! まさかこの職場も潰そうとしているのですか!」
あ、そうか、勇者機関はドビーがぶち壊したんだった。つまりこの女も無職ということだ。
喫茶店潰してなんの徳があるんだよ。
「全部あなたが私を陥れたせいだ! 許せません!」
「元々あんたが自分を陥れようとしたんだろ。逆恨みは良くないな? 悔しいなら自分騙してみろよ、その考えなしの頭脳でな!」
「くううううう! 確かにそうですが!」
怒りに身を任せるが、目の前にはジエイミがいる。大丈夫だ。
「ど、どうした? こ、こ……攻撃してこないのか?」
めちゃ声が震えてしまう。
「食らいなさい!」
攻撃の動作に入った。やばい!
「ひぃぃ!」
側から見たら何と情けない光景だろうか。守ってくれるよな?
「いい加減にしてください! ここは食事をするところですよ二人とも!」
全くもってその通りであった。
「「すいません」」
自分もマジョーナも謝る。
☆☆☆怒られた。
このまま店にいては迷惑なので一旦外に出る。
「……で、話を遡りますがあなた達はどうしてここにいるのですか。エクシリオ・マキナ」
「ジエイミとのデートで立ち寄っただけだ。悪いか?」
「……っち、こっちは働いてんのに惚気話ですか……」
普通に舌打ちをするなよ。
「いくら勇者機関クビになったからって、エクステンドバスコをキノコの浜にかけるのは間違っているぞ」
「あなたに言われたくないですね。詳しい事情を知らないで……あの客は……私たちの店を侮辱した!」
うわ、なんか悲しい過去が始まりそうだな。めんどくせえなこいつ。どうせ迷惑客の態度が気に食わなかったとかそういうのだろう。
まあ、カスハラされてブチギレてイタズラした感じだろうな。
「あの男はシャケの皮を残したのですよ!」
「……え?」
そんだけ?
「普通シャケの皮を残すなんてありえない! どう考えてもあの男の精神状態はおかしかった! だから私は目を覚まさせるためにエクステンドバスコを使ったのです!」
別にシャケの皮残すくらいどうだっていいだろ。
「い、いや別にそれ本人の勝手――」
「――そうですね! おかしいですよ! 普通シャケの皮は食べますよね! エクシリオさんはどうですか?」
なんでジエイミ意気投合しているんだ。正直に言えば自分は残す派である。
「いや、自分は残すが」
「え、エクシリオさん……頭大丈夫ですか? シャケの皮残すなんてそんな……頭打ってませんか?」
まさかジエイミから頭大丈夫と言われる日が来るとは思われなかった。それもシャケの皮で!
「え?」
「エクシリオさん! シャケの皮にも栄養があるんですよ!」
「脂っぽくて自分は嫌だな」
「エクシリオ・マキナ。あなたがそこまで弱いのは今までシャケの皮を残してきたからですよ。食い改めなさい」
普通にヒト族だから弱いんだよ。なんだこいつ。なんでシャケの皮食わなかったら弱いんだよ。
「他人の考えが理解できないからって、自己主張を押し付けるんじゃないよ。バカみたいだろ」
「エクシリオさん! それはシャケの皮を残した言い訳ですよ! 私もシャケの皮を食べて強くなったと言っても過言じゃないです!」
どう見ても過言だよ。
ジエイミ今までで一番反発してないか?
「何故争いが起きるのか? それは他者を理解できていないからだ。譲れないものがあるから、妥協点を見つけることが出来ない」
シャケの皮で何語ってんだ自分は……
「とにかく、マジョーナ。エクステンドバスコを料理に仕込むのはやめろ」
「嫌ですね。どうしてあなたに指図されないといけないのですか。私はこれからも料理にエクステンドバスコを入れ続けます。正義のために!」
もうバイトテロだろこいつ。
「いや、普通にクビになるから、忠告しといただけだ」
「……何」
なんで気付かないんだよ。こいつ馬鹿か? いや、勇者機関で務めいたから飲食店の経験とかいないのだろう。
そもそも喫茶店の店長はどうして、マジョーナ雇ったのかそこが気になるわ!
「普通に美味しいものをかけて何がいけないのですか。あなたは他人を理解する考えが足りないからクソ雑魚なのですよ」
その言葉そっくり返したい。
あとヒト族だからクソ雑魚なんだよ。シャケの皮関係ないから!
「お前は味覚がないから確かめようがないがどう考えてもクソ辛いからな。お前の基準で物事を進めるな。考えを変えないというのなら、クビになって路頭に迷っちまえよ」
「っぐ……路頭に彷徨いたくはない。クソ……どうすれば……」
「流石にそれは自分で考えろ。自分達手は差し伸べないぞバーカ! お前は激辛料理と添い寝でもして笑われるのがお似合いだ! 少なくとも自分が笑ってやるよ、がははは!」
煽るの楽しいなこれ。これからもっと煽ってやろう。ジエイミがいる時限定だが。
「くそおおおお! ならばあなたに復讐のドンチャントル――」
マジョーナはやけくそになり自分に攻撃を仕掛ける。
「――えい!」
「っぐわぁ!」
ジエイミが高速で近づき、詠唱前に速攻で無力化させた。流石勇者……かっこいい!
「流石に暴力はいただけません。ですから暴力で片付けました。マジョーナさん暴力に頼るのはやめてください!」
結局暴力じゃん。
「流石にジエイミがいては分が悪い……クソ……あの時モブコザ村であなたを選ばなければ! 私の運命は変わってたかもしれません!」
今更後悔しても遅くないか?
「だけど、あなた達は絶対に結ばれることはない! 破局しなさい! そうだ仕込みしないと! あなた達に構っている暇なんてないのですよ!」
捨て台詞を吐き捨てマジョーナは店に戻っていく。
いや絡んできたのあんただよ……なんで勝ち逃げした気になっているんだ……
まったく! 無職の女は碌な奴がいないな。




