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第１話
「京子ちゃん、飲んじゃダメ、絶対飲んじゃダメ！」
京子に向かって叫ぶトミ子は、両手で喉をかきむしっている。
彼女の目は充血して真っ赤になり、両手の爪が首の皮膚を激しく傷つけたため血が流れ、さらには、口から唾液が泡となってあふれている。
「ガァーー！！」
「ギギギギギ！！」
人間とは思えない顔、獣が苦しむような声。
血だらけになりながら床を転げまわり、壁や机に何度もぶつかりもがき苦しんでいたのだが、しばらくすると両眼がスーっと白くなり、トミ子は動かなくなった。
その傍らで、京子は震える両手で湯呑を握り締めていた。
ほかにも８人の女が、トミ子と同じように断末魔の叫びをあげ、床を転げまわり、苦悶の表情を顔に残したまま息絶えていった。
苦しんだのであろう。
爪が剥がれている者、
嘔吐した者、
喉だけではない、顔をかきむしったため血だらけの顔をした者、
果ては脱糞している者までいる。
ここには安らかに死んだ者など一人としていない。
崇高な姿などどこにもなく、地獄の苦しみと無念だけが京子のいるこの部屋を満たしていた。
「ヤダー！！」
京子はそう叫んで、持っていた湯呑を床に投げつけた。
湯呑が割れ、飛び散った液体がトミ子の顔を濡らした。
未だ見開いているトミ子の両眼が京子を睨みつけているようだ。
蒼白い顔をした京子は、部屋の隅に座り込みガタガタと震えながら、息絶えた９人の姿を見ていた。
「怖い、私にはできない…」
「トミちゃん、みんな、ごめん、許して…」
「許してーーーー！！」
