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ひそやかに

 同期の友人を会議室に招き入れて、メイはくつろいだ心地で談笑する。


「今日はお菓子とか用意できないけど……レイナも無事で、よかった」

「けどローニンなあ……ローニンの言うこと聞いてれば、いつでもバッチェなのになぁ」

「そっか……いいリーダーだったのね」

「ね! 今回だってそうじゃん、ローニンに付いてったらフツーに助かったんだし」


 そうか、スローニン前課長のお陰でレイナは生き残れた……わけか。

 今度会ったら、お礼言っておきたいな。個人的な話だし、こっそり伝えたほうが良さそうだけど。



 ……と、二人の歓談のさなかに……


「ふむ、これは……ワタシは一度、外しましょうかナ……?」

 気まずそうな低い声が割り込んだ。


「あ、すみません仕事中でしたね……」

 公私混同してしまっていた、反省しなければ。

 メイは何となく視線を落とす。


「構いませんゾ、代行どのと言えども休憩は必要でしょうからナ。ついでなので睡眠装置をアップデートしておきますゾ」

 恐らくメイたちに気を使ってくれたのだろう。ペドロは睡眠装置の操作を理由にして、メイへ手を振りながら会議室から出ていった。


 メイはペドロの態度に感謝しつつ、レイナとの雑談を続ける。


「ところで、レイナ最近小隊の指揮とか、銃兵への指示とか……してた?」

「うん、たまにローニンがやれって言ったかんね。けどみんな下手だからさあ、しょーじきやりたくなかったってか……自分で全部撃ったほうが早いし」

「ま、レイナと比べたらそりゃね……」

「おおぜいで面狙いとか時間差とかやりたいときはしょうがないけど、基本さっさと撃ち倒せばよかったから……いちいち人のこと考えるのめんどくってさ」


 人への指示はめんどくさい、か。レイナらしいといえばらしい。

 ただ、スローニン前課長が指示していたなら、おそらく彼も……レイナなら射兵の指揮や指導をこなせる、そういう素養がありそうだと考えていたのだろう。

 場合によっては、各課の射手を再編してレイナに任せるってやり方も……あるのかもしれない。本人は嫌がるだろうけど。

 状況が状況だし、これまでと同じ指揮系統、編成に拘る必要はない。それに、使えるものはなるべく使っていかないと……

 レイナにしても、スローニン前課長にしても。


「ほらあたしアタマ悪いし、説明とかムリムリよ」

「頭を使うことばかりが説明じゃないでしょ? 実演して見せてもいいし、文章なんかは他の人に任せたり……レイナなら、私にだって色々なことを教えられるじゃない」

「そりゃさ、メイやんくらい上手けりゃ教えがいもあるけどさ……がんばって教えてもできてないの見てるとつらたんでさあ」

 辛い、と言ったところでレイナの横髪がしおれて……直後、それがピクリと跳ねた。


「ってかさ、メイやんちょい待ち……」

「どうしたの?」

「待って、なんかさ……ウチら以外の声聞こえない?」

 メイは一旦口を(つぐ)み、耳を澄ましてみる。


「女の人?」

 すると確かに、メイにも声のような何かが聞こえた。


「そこわかんないけど、やっぱ聞こえるよね!?」

 またその音は少なくとも、大人の男声ではないように思える。

 であれば、ペドロ課長の独り言ではない……タムが睡眠装置を壊して起きてしまったか、それとも……侵入者か?


 メイは急ぎ、各所の監視カメラを起動させることにした。


「カメラ……こうだっけ? えっと……」

 メイは中空に左手をかざし、続々と浮かぶパネル画像に順次触れていく。


「すごっ、ちゃんと使いこなしてるし……なんかもうメイやんカンペキここのヌシじゃん?」

「やめてよレイナ、私はただの代行……あ、これかな?」


 メイたちがいる会議室を含めた司令部内の各部屋、その他正門前や勝手口など主要な地点の様子が映し出された。


 室内、建物の周囲……どこの映像を見ても、侵入者らしき者は見当たらない。

 侵入者がわざわざ声を立てる必要などないはずだから、当然といえば当然だが。


「カメラに映ってる人は、ペドロ課長くらいか」

「つかあの頭って、どうやってまんまるテカテカにしてんだろね」

「ん、興味あるの? じゃああとで聞いてみよっか? 赤毛の可愛い女の子が興味津々だって」

 軽口に軽口を返したところで、メイは光学迷彩の存在を思い出した。

 もし侵入者が光学迷彩を使っていれば、カメラには映らず目にも見えない。ただしその場合は、近くで人為的な光波長への干渉が起こっているはず……

 と考えて、メイは司令部周辺の光波長を調べようとしたが……パネルに手を伸ばしたところで、映し出された画像の一つに『光学迷彩使用の形跡なし』と表示されているのに気付いた。


「光学迷彩の使用もない、か……ならペドロ課長の他には誰もいないはず」

 それならば、と……メイは睡眠装置を置いた部屋の音声を拾わせてみることにした。

 パネル操作ののち、なにやら話し声らしき音が聞こえたが……その内容までは聞き取れない。


「音ちっさ、ビミョー……」

「緊急時じゃないから、プライバシー保護機能が働いてるとか? それなら解除方法とか……」

 と、再度パネルへ手を伸ばすまでもなく……メイの口は止まっていた。


 辛うじて拾えている室内の音……それが普段のペドロとは明らかに異なる、女声だと確信して。


 どういうことだろうか。

 睡眠装置はペドロの頭で少し隠れているが、メイがタムを寝かせたときと同じように稼働しているのが見える。

 タムの姿自体、他のどのカメラにも映っていないことも考えると……タムは朝と変わらず装置の中で眠っているはずだ。

 であれば、他に誰かが……いや、よほど身体の小さな侵入者がペドロの陰に隠れている可能性くらいしか予想できない、が……

 それならそれで、ペドロらしき声が聞こえないのはなぜだろうか?

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