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キャットピープルについて

僕はナスターシャ・キンスキーがとても好きだった。

中でも「キャット・ピープル」は僕の神経を逆撫でした。


キャット・ピープル。猫族。サファイア・ブルーの瞳。豹。黒豹。

彼女は男と抱き合った後、黒豹に変身する。

そして、相手の男を食い殺す。そして、人間に戻る。

人間に戻る為には彼を食い殺さなければならないのだ。

黒豹。捕食者。暗闇の中、獲物を求めてさまよう。

しなやかで淫靡な曲線。なだらかな背中。優雅な獣。

彼はそれを知ってしまう。彼女を愛さずにいられなくなる。

そうだ。この女と抱き合えば、必ず食い殺されるのだ。

それは分かっている。それは分かっているのだ。

だが、いや、だからこそ、彼女を抱かずにはいられない。

死の官能。

ベッドへ。ベッドへ。

ベッドのある、その部屋へ。

抱き合う為に、ベッドへ。

昂ぶりつつある官能。

失われてゆく理性と純潔。

知ってしまった血の味。

崩れゆく意識。さらに昂ぶる官能。

その中で彼女は思う。この後、私はただ一匹の獣、黒豹になり、

この愛しい男を食い殺す。

羞恥心も罪悪感も愛情も全て忘れ、

ただ獣の本能のまま、獲物を食い殺す。

私は、獣に戻る。そして本能のまま、あなたを食い殺す。

ひとかけらの罪悪感もなしに。

なら、その前に私を・・・。

猫族がかつて憧れていた人間としての意識。

その部分から、洩れる、声。「殺して」・・。

彼は拒否する。

俺はお前が欲しいんだ、たとえ、食い殺されても。

彼はナスターシャの手と、足を、ベッドに縛りつける。

自ら身を投げ出し、従うナスターシャ。

手首を行き交う縄の音。

首輪をつけ、鉄のベッドに端を結わえる。

素直に従うナスターシャ。四肢を広げ、無防備の、黒豹。

あらわになる、一糸纏わぬしなやかな曲線。

もう、大丈夫だ。黒豹に、なってくれ。達すると同じに。

夜明け前の、張り詰めた空間。

重なる身体。


相手を食い殺さなかった猫族は、人間の姿に戻れない。

動物園の檻の中、サファイア・ブルーの瞳。

飢えた漆黒の豹の咆哮。

彼が檻越しに生肉を与える。血のしたたるごちそう。

満足げにナスターシャはのどを鳴らす。

愛されているペットが主人だけに見せる、あの、従順な眼で彼を見上げながら。

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