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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
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異能記『教皇』

 神を信じるものは、現代にそう多くはない。

 すでに覇王イグリダが天下統一をした時点で、神への信仰は薄れていた。


 それがオーラスは気に食わなかった。


 神がいるからこそ人類は存在できる、とオーラスは考えている。

 動物を殺めても、自然の恵みを貪っても、神が許してくれるから人類は生きられる。


 だからオーラスは、神に祈りを捧げ続けた。

 いつか自分が死にかけても、神が助けてくれることを願って。


「父さん、母さん、僕は二人のようにはならないよ」


 神を最後まで恨み続けた両親の遺影を軽蔑するように見て、オーラスは言った。



 ※



「神は存在しません」


 魔法学校で、エマは何食わぬ顔でそう言った。


「…その根拠を聞いてもいいかな?」


「神は人間が作り出した抽象的な概念です。そのため神を構成している物質も、魔力もわかっていません。であれば、そもそも存在しないと考えるのが妥当です」


 やはりだ、両親も同じことを言っていた。


「じゃあ君は、肉や魚を食べるときに誰に許しを乞うんだい?」


「許しは乞いません。ただ自然の恵みに感謝をすればいいだけです」


「自然の恵みは神が作ったものだ」


「だからその考え方は人間が作ったと言っているでしょう。全く…」


 話にならんと言わんばかりに、エマはリビングを去っていった。


 エマの言うことは確かに一理ある。

 むしろ根拠を説明するべきは信徒の方なのだ。


「でも私はいいと思いますけどねー」


 チョコレートをバクバク口の中に放り込みながら、マレンは言った。


「ほら、言うじゃないですか。女の子好きになるのに理由なんていらねえ!って」


「はは、それは少し違うような気がするね…」


 呑気な声でそういうマレンに、オーラスは苦笑した。


 エマの理屈で行けば、神を信じると言うのは妄想の類だ。

 恋愛とは訳が違う。


 エイルスは先ほどから難しい顔をしていたが、やがて口を開いた。


「オーラス、確かに神を信仰するのは良いことだ。そのおかげで多くの人が救われている。ただ『闇属性差別主義』を続けるのならば、神は君に残酷な運命を見せることになる」


「…神の愛は闇の者に向けられないはずでは?」


「ああ、だから残酷なのだ」


 エイルスの言葉に、オーラスは首を傾げるしかなかった。



 ※



「神の祝福に!」


 魔導兵遊撃兵団の面々3人は、そう言って酒を掲げた。


 外道魔法使いの研究所を潰したパーティーだ。

 毎度任務を遂行した時、必ず酒を掲げるのがオーラスの部隊のルールである。


 戦いに勝てたのは神のおかげ。

 そして神に祈れば、また次の戦いでも助けてもらえる。そんな考えだ。


 しかしその場の誰もが、オーラスのことを夢中で話している。

 それもそのはず、任務の主力となったのはオーラスなのだ。


 誰も、神に感謝していない。

 酒を掲げるのは、単にルールだからだ。


(僕の信仰心は間違っているのか…?)


 たびたびオーラスはそんなことを考える。

 しかしその度に、オーラスは自分に言い聞かせた。


 神を疑ってはならないと。


 自分の信仰心は正しい。

 神に祈れば、全てが救われると。

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