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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
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異能記『女帝』

「『イヴィルストーム』!」

「『オーシャン』!」


 漆黒の闇の球体と、凄まじい水圧の波がぶつかり合う。

 その衝撃によって訓練場の壁は半壊状態となった。


 向かい合っているのは青色の髪の少年と黒髪の少女。

 少年は髪をオールバックにしていて、手には剣を構えている。

 少女はショートカットの髪で、手には何も持っていない。そして目は青色に輝いている。


「また腕を上げたな、エイルス!」


「レックスこそ!」


 二人は口元を緩め、やがて顔を引き締めた。


 そして再び訓練場に衝撃波が走る。

 当然、この破壊行為は許されない。


「ということで、私が魔導兵団長に報告したわ」


 バン!という効果音が出たかのように、ライ・ヘロウル・ゼウスが手を前に突き出して訓練場に登場した。


「げっ」


「面倒なのが来た」


「面倒とは失礼ね。管理側からするとあなたたちの方が迷惑なのよ」


 明らかに苛立ちを浮かべた表情でライが言うと、レックスとエイルスは顔を見合わせた。


「ならば!」

「逃げるのみ!」


「あ、ちょっと!」


 一瞬で『フライ』で飛んで行った二人を見て、ライは慌てて『フライ』を起動した。


 二人の行き先は決まっていない。

 ただ魔導兵から逃げ出そうとしているだけだ。


 だからそのうちライが追いつくだろう。


「ここで失敗なんてしてられないわ、私はハデスを倒すんだから」


 ライには、ハデスを倒すという目的がある。

 ハデスがいつ出てくるかわからない以上、それを倒せるだけの力はつけなければならないのだ。


 そうすることで、ライは初めて自分を肯定できる。



 ※



「迷ってしまったな」


「だー!クソ、ライよりも面倒なことになっちまった」


 エイルスとレックスは夢中で逃げているうちに、よくわからない森にたどり着いた。

 かなり広い森だったので、どこから来たのかわからなくなってしまったのだ。


「とりあえず建物探して…おわっ!?」


 罠魔法の類だろうか、空中にいた二人は地上に引き寄せられ、やがて鎖で縛られてしまった。


「『皇帝』と『女帝』だよね、この子達」


 罠魔法によって拘束された二人が連れて行かれたのは、謎の研究施設だった。

 森や洞窟でうまいこと隠されていて、外からでは気付きにくい結界まで張られている。


 そして…


「初めまして、問題児」


 全身真っ白の少年が出迎えた。


「早いところ始めよう。ヴァルタイユがエルドと接触するまであと五年ほどしかない」


「かしこまりました」


 見れば、少年の周りには数名の紳士服を着た人がいた。

 彼らは二人を強引に連れていき、やがて真っ暗な研究室にたどり着いた。


「おい待てよ、何するつもりだ」


「闇を増幅させ、それを制御する実験」


 無数のコードに繋がれた自分の体を見て、二人は顔を青ざめさせた。


「じゃあ…」


「ああ、エイルスの体に闇を流し込み、それを強制的に増幅させ、レックスに受け渡す」


 このままではまずい。


 魔法の道を歩んでいるものならわかる。

 強制的に無茶な魔力を流しこまれたら、最悪の場合死に至ると。


「エイルス、やるぞ」


「ああ」


 ここから逃げ出すには、強行突破しかない。


「「『魔力解放』———ッッッ!!!」」


 二人で編み出した必殺技。

 これを使えば、この場から抜け出せるはず。


 そう思っていた。


「それを待っていたよ」


 白い少年は口を歪め、合図した。


 魔力解放は、周囲の魔力を自分のものとして操る。

 つまり、一時的に体が外界との連絡をするために入り口が空いている状態となっている。


 だから簡単に魔力を入れる事ができる。


「さあ、始めよう」


 そして闇が二人を襲った。



 ※



 後日、ライが連れて来た魔導兵によって研究所は処理された。

 そして被害者として発見されたエイルスは、研究所での記憶を消されていた。


 だからレックスの死体を見て、エイルスは絶叫した。


 エイルスには闇属性に対する恐怖が残り、闇属性差別主義者になったのだ。


 そして…


「…ん」


 冷たい地面に横たわっていたエイルスは、ゆっくりと体を起こした。


 長い夢を見ていたような気がする。

 それでもやはりあの時の記憶はない。


 だがふと、自分の息子のことを思い出した。


 エイルスは息子を捨ててからの間、ずっと罪悪感に押しつぶされそうだった。

 ただ闇属性が怖いというだけで、彼を追い出してしまったことを。


「息子さんなら無事だぜ、俺を死に際まで追い詰めるほどにはな」


「…!…誰だ!」


 エイルスは体を起こし、周囲を見渡した。


 見たことのない場所だ。

 闇の魔力が渦巻き、その中心部には巨大な黒い球体がある。


 エイルスの恐怖をそそるような場所だ。


 そして目の前にいるのはアクトだった。


「俺前に言ったよな、俺の仲間になれって」


「…そうだったかな」


「ああ、闇の者に耳を貸すなって教え子に言ってた」


 アクトは人を馬鹿にしたような笑みを浮かべると、やがて言った。


「その時が来たぜ」


 直後、エイルスは漆黒の球体の中に放り込まれた。

《キャラクター紹介》


○エイルス・ネオプトル

クアランドに住む魔法使いの少女。

若いながらも常識を超えた戦闘能力を持つ。


○レックス

クアランドに住む魔法使いの少年。

エイルスの幼馴染で、彼女と同等の力を持つ。


○ライ・ヘロウル・ゼウス

エイルスとレックスの無茶に付き合わされている、ゼウスの家系の少女。

ハデスの討伐を目的としている。

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