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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
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異能記『女教皇』

 初めて魔法を見た時、エマは感激した。


 それは小さな時、父親が『ライト』を使った時だ。


「どうだエマ、これが魔法の力だ」


 満面の笑みで父親はそう言った。


 エマの父、ラウス・アルバは魔法が大好きだった。

 しかし才能がなく、志半ばで魔法学を挫折。今は妻とエマとの3人で静かに暮らしている。


「エマが魔法使いになってくれたら父さんは嬉しいんだけど、神さんは厳しいな」


 苦笑するラウスに、エマはなんだか申し訳なくなった。


 エマは魔法使いではない。

 剣型は主属性持ちではあるが、父も母も剣道を目指していたわけではないため、特に戦闘経験は全く積んでいない。普通の街娘である。


「なんで神様は、魔法使いと普通の人間に分けたの?」


「さあな、俺は神さんが考えてることなんてさっぱり分からんよ。もしかしたら、神さんなんていねえのかもな」


 その言葉が、エマの好奇心を目覚めさせた。


 神は存在するのか、それとも存在しないのか。

 エマはそれを知るために魔法に手を出した。


 そして分かったことは、現在判明している魔力の知識では神の概念を証明することができないと言うことだ。


 次にエマは、トアペトラで行われている元素の研究に入った。


 この世の全てのものは、元素と魔力で出来ている。

 ならばこの二つを学べば、神の正体を暴けるのではないか。


 エマが最終的に行き着いた答えは、神はいないというものだ。


 そしてその時にはすでに、凄まじい量の知識を身につけていた。



 ※



「魔法使いじゃなくても魔法が使える方法を思いついた?」


「はい」


 自信満々なエマの様子に、エイルスは眉を顰めた。


 エマは今、魔法学校にいる。


 魔法使いではないエマの入学を許可してくれたのは、エマの知識量が今後の魔法学界に影響をもたらす可能性があったからだそうだ。


 だからエマはこの学校で魔法の訓練をするのではなく、魔法に関する新たな発見をすることに集中している。


「しかし残念ながら、『ルーン石』というものがあってだな。もうすでにその方法は確立されてしまっている」


「…知りませんでした」


 そうして、エマは『ルーン石』の説明を受けた。


『ルーン石』は魔法使いが自分の魔力を使って作る道具で、使用すると設定された魔法を放つことができる。

 戦闘魔法のルーン石は一度使うと破壊されてしまう代わりに、少ない魔力で作成可能。

 しかし汎用魔法のルーン石は使ってもなくならない。その代わりに大量の魔力が必要だ。


「と言うことは、魔法の研究は出来ないんでしょうか?」


「ああ、先駆者の魔法のコピーに過ぎないからな」


「でしたら私の勝ちです」


 エマの言葉に、エイルスは目を見開いた。


「まさか、魔法使いでないものが魔法を研究し、それを放てる手段を編み出したと言うのか…!」


「はい」


 我が意を得たとばかりにエマは笑い、説明を始めた。


 トアペトラの機械工学を用いた手段だ。

 魔力運搬の流れを魔法と完璧に同じにした『魔力を運ぶ導線』を繋げることで、再現したい魔法を使える機械が作れる。

 そして魔法の研究と同じように機械を作れば、自作魔法が作れると言うことだ。


 あとは自分の魔力を流し込むだけで、簡単に魔法が放てる。


「しかし魔力運搬は感じて行うものだ。そうはっきりとした道筋は導線では再現できないのではないか」


「出来ます、『女教皇』なら可能です」


 それを聞いて、エイルスは納得したように頷いた。


『女教皇』の能力、それは試行錯誤の段階を飛ばすというもの。

 だから最初からどこに導線を配置すれば魔法が成るのかわかるのだ。


 これはエマだけの技術といえよう。


「それでは新たな技術として発表することは出来ないが、君も他の魔法使いと同じように魔法が使えるようになったわけだ。もう普通に魔法の訓練をするというのはどうかな」


「良いですね」


 魔法と機械を合わせた魔法使いなど前代未聞、きっと名を残す魔法使いになるはずだ。


 エマの魔法科学の研究はこうして始まった。

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