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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
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幕間 接触

「『魔力解放』だと…」


 顔を強張らせてアクトは呟いた。

 かつて脅威としてアクトの前に立ちはだかったエイルス・ネオプトル、彼女の力をアレクも有していたのだ。


「『死灰儀ゲヘナ』」


『魔力解放』の能力は二つある。


 まずは、空気中の魔力を使うため、魔法を無制限に使うことができるというもの。

 そしてもう一つは、上級魔法の準備段階を飛ばせるというものだ。


 つまりアレクは、『死灰儀ゲヘナ』を連発できるということになる。


「くっ」


 流石にまずい。

 エイルスほど脅威ではないが、そもそもこの技自体が脅威なのだ。

 だからエイルス相手にアクトは撤退を選んだ。


「…いや、まだ間に合う。今のうちにこいつを殺しておけばこれ以上成長することはねえ…!」


 そう言って、アクトは剣を抜いた。


 アクトの剣型は『混沌』、光と闇が主属性の剣型だ。

 超スピードで様々な形に姿を変える『混沌』の剣技は、今までほとんど全ての敵を翻弄してきた。

 今回もそうすればいいだけのこと。


「『シャドウライト』———ッッッ!!!」


 出来るだけ一撃でアレクに重傷を与えたい。

 だからアクトは、最大出力で剣技を放った。


 いや、放とうとした。


「…あ?」


 アクトの剣先から放出されたのは、ただの小さな光の魔力。

 闇の魔力と混ぜることで作られた剣技は、光だけになれば大した殺傷能力はない。


「…お前」


「『皇帝』だよ。闇属性は俺に効かない」


 アレクはすでに、『皇帝』の操作範囲を絞れるほどにまで成長していた。

 それもそのはず、異能を学ぶにあたって、エマという教師と2週間という時間は十分すぎた。


「ふ、『フライ』ッ!」


 勝ち目はない、アクトはそう判断した。


 アレクはアクトの想像を遥かに上回る成長を遂げていた。

 ここは撤退を選択するべきだろう。


 だがアクトは勘違いしていた。

 そもそも撤退などできるはずがない。


 勝てないと判断した相手に背を向けることなど、なんとも愚かな行為ではないか。


「『死灰儀ゲヘナ』—ッ!」


 漆黒の闇に飲まれ、アクトはそこで消滅した。



 ※



「それでその後エルドさんが来て…俺たちは『闇の根源』の手がかりを探すためにここへきた」


 異能士団本部の談話室にて、ようやくアレクの話が終わった。


「待ってください、なんで『闇の根源』を探すのにここに来る必要があったんですか」


 クロス以外のメンバーも不思議そうな顔をしている。

 またアレクの時と同じように、魔窟を探すついでとでも言うのだろうか。


「団長自ら『闇の根源』を探してくれるらしくてね。だから代わりに僕らはここで己を磨き、魔窟の攻略に力を貸すことになったのさ」


 オーラスの答えに、全員納得したように頷いた。


 一見3人で旅をした方が効率が良さそうに思えるが、その分食料の補充などに無駄な時間をかける。

 エルドの馬がウエラルドで一番早いと言うこともあって、エルドに捜索を頼むのが最良の選択肢だ。


「ま、こんなところだ。みんな仲良くなー」


「はーい」


 一部の男団員が元気よく手をあげ、その場は解散となった。



 ※



「はっ…、はっ…、くそ…」


 完全に罠にはまった。

 騎士団員を置いてキャンプ地を離れ、紳士服の女を追ったのが間違いだったのだ。


 ルシファーが戻った時にはすでにキャンプ地は破壊されていた。

 だがまだ仲間の死体は見つかっていない。おそらくどこかに連れて行かれたのだろう。


「やはり俺を誘い出すのが目的か…?」


 ルシファーの前から姿を消す直前、金髪の紳士服の女は言った。

「お前に合わせたい男がいる」と。


 しばらく走ると、道端に血痕がついていた。

 おそらく抵抗した団員を無力化した痕だろう。


 すぐに向かわなければ、ルシファーがついた時にはすでに全滅なんてこともあるかもしれない。


 それに紳士服の女が来ていると言うことは、最悪のケースもありうる。

 そうなれば、こちら側に勝ち目はない。


「お前達、無事————」


 そこで最悪の光景を目にし、ルシファーは絶句した。


 ルシファーが率いていた騎士団員がもれなく全員、原型をとどめぬ肉片と化していた。

 そして肉片を踏むようにして、5人の人影があった。


 間違いない、報告にあった死体通りだ。

 この惨劇を生み出した男は一人しかいない。


「ルシファー・メルティア、話がしたい」


 爽やかな()()を浮かべて、ヴァルタイユが歩み寄った。


「僕の仲間にならないかい?」

《キャラクター紹介》


○ルシファー・メルティア

ウエラルド王国騎士団副団長。

フィクスを弟のように思っている。

剣型は『薄灯』(主属性:闇、副属性:炎)

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