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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第七章 闇の皇帝と絶望の塔
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第四話 調整

「それで、ヴァルタイユは来ないのかな…?」


 国王の研究室内で、怒りに声を振るわせてアラスタは目の前の男に言った。

 闇の根源の情報を伝えられていなかったため、アラスタは怒っていたのだ。


「来ないね、ヴァルタイユはあんたに勝てないから」


「…それで君か」


「そ」


 軽やかに笑ってみせる男…リオは、二本の両刃剣を手に握っている。


「ヴァルタイユ曰く、あんたにはできるだけ物語に関わってほしくないらしい」


「それはやはり、彼の異能に影響するからかな?」


「そこんとこは知らね。でもお前が関わると厄介な出来事もあることは確かだ」


 とある理由があって、ヴァルタイユの異能はアラスタに通じない。

 そのため計画に支障が出る可能性があるとヴァルタイユは考えたのだろう。


「全面的にヴァルタイユの協力を受けたいんなら、まずはその加護をどうにかするこったな」


「それは不可能だ。…致し方ない、ワタシはワタシの役目を全うせねばな」


 嘆息し、アラスタは窓の外を眺めた。

 今もなお活動を続ける、3人組の姿を思い浮かべて。


「確か指定の時間に『塔』までたどり着くよう仕掛けを作る。それが役目だったね」



 ※



 エマが国王と話をつけてきてくれるというので、アレクとオーラスは大人しく馬車で待っていることにした。


 オーラスの第一印象は、目は隠れていても明るさが滲み出る、気さくで優しげな好青年だった。

 しかし彼の闇属性に対する嫌悪感をその身で感じてしまったため、今ではオーラスは少し関わりづらい人間である。


「闇属性差別主義者は…何が嫌で俺たちを嫌うんだ?」


「それは人によるね。例えば魔物が闇属性だからって理由の人もいるし、過去に闇属性に対して何らかのトラウマを負ったからという理由もある」


「…それじゃあオーラスは?まさか神の愛を受け取れないだけで差別する対象にはならないはずだ」


 オーラスは神を信仰しているということが今までの彼の態度からわかった。

 そして闇属性が神の愛を受け取れないということも、オーラス自身が言っている。


「神の愛が受け取れないってだけで、同類とはみなせないからと差別する人もいるよ。僕は違うけどね。僕は単純に、闇属性が周囲に及ぼす悪影響が凄まじいからかな」


「…例えば?」


「例えば冥王ハデス、御伽噺おとぎばなしは読んだことあるよね。クアランドを恐怖のどん底に貶めた冥王が司る属性は闇属性だった。知っているかい、彼が人の体を弄った魔法も闇属性の魔法らしい」


 おそらく闇属性が過去に起こしてきた災厄を、オーラスは他にいくつも知っているのだろう。

 データだけを見れば、確かに差別するのは仕方ないのかもしれない。


「…でも、それだけで酷い仕打ちをしていいことにはならない」


「それは僕に言わないでもらえるかな。僕は一応闇属性の人の人権については理解している方だし、君が注意すべきはウエラルドの国王とか、そこら辺だと思うよ」


 確かに、オーラスは差別的な発言をしているだけでそれを実行に移していない。

 それにエマもオーラスが差別主義者だということは知らなかった。おそらくオーラスは一度も目立った行動をしていないのだろう。


「オーラスのことはよく分かった、ありがとう」


「どういたしまして。ところで、魔法は使えるようになったのかな?」


「…一応『トーチ』と『ダーク』程度なら」


「エマが戻ってくるまでの間、僕が教えてあげようか。彼女ほど上手には教えられないだろうけどね」


 その言葉に、アレクは戸惑いを隠せなかった。


 オーラスが差別的な行為を実行に移すことはないということは、今までの彼との付き合いで分かった。

 しかしオーラスはどうにも、自分から進んでアレクに手を貸しているように感じる。


 一体彼は闇の何を嫌悪し、なぜアレクを受け入れるのだろう。


「…わ、分かった。ありがとう」


 とにかく、まずは魔法を教えてもらおう。

 オーラスのことは、過ごしていくうちにわかるはずだ。



 ※



「つまり、私たちは北の海に巣食ってしまったクラーケンを討伐しなければならないとうことです。それと引き換えに展望台を貸してくださると王は言っていました」


 はあ、と嘆息するエマの様子に、二人は眉を顰めた。


「待て、お前たちは闇の根源とやらを探すために旅に出ているんだろ。なんで国王はその調査の手伝いをしてくれないんだ」


「あくまで塔を見つけたいのはアレクであって、闇の根源の手がかりがまだ掴めていないのならば無条件に手を貸すことはできないそうです」


 その言葉に、アレクはさらに顔を顰めた。


 エマとオーラスに闇の根源の調査を命じたのはアラスタ王だ。

 ならば闇の根源を見つけ出すために最大限の手段は活用すべきだ。何故なら別に二人に試練を与えているわけではないのだから。


 アラスタ王は一体何がしたいのだろう。


「まあ、国王が展望台を貸してくれるなんて百年に一度くらいのものだからね。安いものだよ」


「百年って、何か隠されてたりでもしない限りありえないんじゃないか…」


「それほど価値のある場所なんです。世界のほぼ全てを観測できる場所ですから」


 魔法使いというものは、自分の研究に誇りを持っているとアクトは言っていた。

 もしかしたら王もその類かもしれない。


「まずはクラーケンの討伐だね。それじゃあ出発しようか」


 オーラスが再び馬車を走らせ、一行は北へ向かった。

《キャラクター紹介》


○アラスタ・グレモル・クアランド

クアランドの国王を務める、白い少年。

ヴァルタイユの組織に協力している。


○リオ

組織幹部最強の戦闘力を誇る赤髪の剣士。

2本の鈍を無理やり切りつけて戦う。

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