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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第六章 寂寞の虚界
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第七話 冥王のパーティ

「作戦を説明する」


 寂寞の虚界への門がある祠、その内部で、ライが戦いに参加する者全員に作戦を説明していた。


 参加するのは、リーフ、ルイネ、マレン、マーカス、エイルスの学校組5人と、ライを含めた合計20人の先鋭魔導兵、そしてソートだ。

 ナリムは研究室にこもっているので、戦いには参加しないらしい。


「ハデスの館にたどり着き、生徒と魔導兵は館を取り囲みハデスを包囲。館に魔力を付着させ、準備が整ったら全員で一斉に上級魔法を放つ。煙で見えなくなると作戦に影響が出るので、炎属性魔法は放たないように。そしてハデスが出てきたら、後衛が全員に『シールドオーラ』を継続的に張り、前衛は中級魔法と上級魔法を使い分けてハデスに集中砲火。その間に私がチャージを完了し、魔力解放をしたエイルスと化身化したソート・オグレイと共に近接戦闘を挑む。最後の手段として、リーフを爆弾代わりに使わせてもらう。以上だ」


『シールドオーラ』を味方に張るという行為は一見無駄に思えるが、ハデスの魔法を防ぐことができる。

 実際に以前ハデスと対峙した時、ソートが大怪我を負ったのは魔法のせいだ。


 しかし最後の発言は聞き捨てならない。

 リーフを爆弾代わりに使うと言うことは、つまりリーフを置いて撤退すると言うことだ。


 リーフが『魔法強化【千意】』を発動すれば、間違いなくハデスを足止めできる。

 そうすれば被害を最小限に抑え、リーフとの戦闘で消耗したハデスを再び叩けるというわけだ。


 腕組みをするエイルスは今にも歯軋りしそうな表情でライを睨みつけているが、現在の指揮官はライだ。

 ここは言うことを聞いておくべきだろう。


「それではソート・オグレイ、案内してくれ」



 ※



 腰をかがめて作業するハデスは、体を揺らして鼻歌を歌っていた。

 彼が屋敷に描いているのは、何かの魔法陣だ。


「俺が丹精込めて作ったサプライズ、喜んでくれるかな」


 やがて作業を終えたのか、ハデスは館に入って行った。


 そして…


「囲え!」


 ライの叫び声と共に、魔法使い達が突入した。


 魔導兵と生徒達が館を囲み、エイルスとソートは変身、ライは何やら力を溜め始めた。

 そして7人の魔法使いが中級魔法で屋敷にそれぞれ、火属性以外の魔力を付着した。


 直後…




 カッッッ




 眩い光とともに、先鋭魔導兵たちが灰となって消え去った。


「え…?」


 視力が回復した目を凝らし、リーフは周囲の様子を確認した。

 20人近くいたはずの先鋭魔導兵達が、一瞬で消えたからだ。


「ドッキリ大成功〜!」


 館の屋根の上では、ハデスが両手を上げて飛び上がっている。


「『トーチ』の回路をいじって強烈な光を放つ魔法を作って、壁に貼り付けといたんだ。あとは『フライ』で飛んでみんなを斬っただけ。簡単なのにインパクトがすごい!罠魔法初心者にも優しい!」


 呑気にはしゃぐハデスを見て、その場の全員が唖然としていた。


 まさか光が放たれて消える間に、20人の魔導兵を殺されるとは思うまい。


「『海荒儀アルディーヴァ』———ッッッ!!!」


「遅いね」


 耐えかね、魔力解放で魔法を放つエイルスの背後を、ハデスは一瞬でとった。


「君は厄介だ。まずは俺と共に世界の果てまで飛んでいこうじゃないか!『ワープ』!」


「先生!」


 ハデスに腕を掴まれ、エイルスの姿は消えた。

 その残像に手を伸ばしていると…


「『滅剣エクシティウム』———ッッッ!!!」


「伏せろ!」


 屋敷の内部から声が聞こえ、ソートが叫んだ直後凄まじい剣気が全員を襲った。


 エイルスを遥か遠くの地まで運び、再び『ワープ』で戻ってきたハデスによるものだ。


「パーティの時間だ」


 軽快に笑い、ハデスはマーカスの懐に潜り込んだ。


「エクシ——


「『チェイン』!」


 すかさず放ったマーカスの鎖の魔法が、一瞬ハデスの動きを止めた。

 そしてその隙を、生徒達は逃さない。


「『エレメンタル』!『暴風儀クアランド』!」

「『炎滅儀ウエラルド』!」


 ルイネがオリジナル魔法『エレメンタル』で全ての属性の魔力をその場にいる全員に付着し、風属性の上位魔法を放った。

 そしてマレンはそれに合わせるように炎属性の上位魔法を放った。


 竜巻ハリケーンと噴火が同時にハデスに襲いかかる。


「無駄だ!」


 しかしそれすらも、『滅剣』の前では無力だった。


 全ての魔法を灰にする。これでは打つ手なしだ。


「『鏖雷【獄】』」


 しかし不意に聞こえてきた言葉とともに、初めてハデスの体に魔法が直撃した。


 慌てて魔法が飛んできた方向を見てみると、そこにいたのはライだった。

 チャージが完了したのだ。


「逆転の時間よ」


 拳を前に突き出すライの周りには、見たこともないような魔力が漂っている。

 密度の高い、それでいて大規模な雷属性の魔力だ。


「現代のゼウス…少しはやるようじゃないか…」


 血に染まった右肩を『リカバリー』で治し、ハデスは引き攣った笑みを浮かべた。


 あのハデスの体に、『リカバリー』を使わなければ治らない傷を負わせた。

 そしてあれだけ強大な魔力量があれば、その技を連続で放つことも可能のはず。


「勝機が見えてきた…!」


 ライとソートの火力、そして生徒達の援護があれば、勝てない相手ではない。

 流石のハデスも、少し焦っているように見える。


「お前の時代を終わらせるッ!」


 そう叫び、ライはハデスに向かって駆け出した。

 ソートもそれに合わせるように殴りかかる。


 ハデスの『滅剣』を簡単に交わし、二人は着実に間合いを詰めていった。

 そして———


「『鏖雷【獄】』!」

「『王拳キングブロウ』———ッッッ!!!」


『滅剣』の攻撃に合わせて同時に放たれた攻撃が、ハデスの体に直撃した。

 ハデスはそのまま吹き飛び、洞窟の壁に激突した。


「やった!」


 骨や内臓が潰れる音がした。

 ハデスは間違いなく大ダメージを食らっただろう。


 それを修復する『リカバリー』の魔力消費量は大きい。

 何度もこれを続けていけば、いずれハデスは力尽きる。


「…よし」


 深呼吸をし、ライはハデスの場所を見据えた。

 だが次の瞬間…


「『ワープ』」


「ライ!そこはワープポイントだ!」


 リーフが叫ぶのも間に合わず、ライの背後に瞬間移動したハデスによって、『滅剣エクシティウム』が振られた。


 そして気づけば、リーフの足元のライの上半身が転がっていた。


 あまりにも唐突な出来事に、ライ自身も困惑した表情だ。

 だがそんなライのことなど知らずに、『滅剣』の魔力はライの体を無情に蝕んでいく。


「…なんで…」


 震える唇を必死に動かし、ライはつぶやいた。


「私はなんのために…みんなを…殺して…」


 直後、ライの姿は灰色に消え去った。

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