表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第五章 審判の偽炎
74/198

第十二話 脅威

 北の塔に辿り着き、ルフは奇妙な感覚に襲われていた。

 何か不気味だ。人の気配というものをまるで感じない。


「脱獄犯はここにいないのか…?」


 しかしもしいたら困るので、念のため探すことにしよう。


 それにしても本当に暗い。

 戦うのなら、せめて電気くらいはつけて欲しいものだ。


「…」


 ふと、ルフは足を止めた。


 目の前に二つの死体が転がっていたからだ。


「…なんだ…これは…」


「絶望だよ」


 直後、白と黒の斬撃がルフの視界に映った。

 咄嗟に交わし、その斬撃の方向を見ると、そこには桃色の髪の15歳くらいの少年が佇んでいた。


「よう、初めましてって言えばいいのか?」


「君は何者だい?脱獄犯には見えないけど」


「俺はアクト・バロピサ。訳あって、数週間前からとある活動をしている者だ」


 とある活動とやらが人殺しなら、この少年も牢獄に入れなくてはならない。

 まずは捕まえて情報を吐かせよう。


 だが、脅威はそれだけではなかった。


「こんにちはあああああああああああああ———ッッッ!!!」


 奇妙な掛け声とともに、また一つ人影が舞い降りたのだ。


 赤い髪、紳士服、そして中折れ帽が特徴の少年だ。

 少年と言っても、アクトとは違って18はありそうだが。


「お前がヴァルタイユか」


「ちげーよ、俺はリオ。ヴァルタイユの剣みたいなもんだ」


 困惑するルフの前で、2人の少年は会話していた。


「お前を殺しておかないと後々ヤバいらしいから、覚悟しとけや」


 軽快に笑うと、リオは両刃剣を二本引き抜いて斬りかかった。

 赤い斬撃だ。これほどまでに色濃い赤は初めて見た。


 対してアクトは、白い剣を振りかざして白と黒が入り混じったような魔力の剣技を放っている。


 そしてそのどちらもが、ルフが今まで直面したどんな敵よりも強いのだ。

 素早さ、攻撃の重み、魔力濃度、その全てが強力だ。


 だが、アクトは遠くリオに及ばない。

 先程から攻撃が掠ってもいないのだ。


「弱すぎるぜええええええええええ!?」


「ち——」


 煽りながら攻撃するリオに、アクトは忌々しげに舌打ちをした。


 リオの攻撃はまさしく()だった。

 絶対に崩れない強固な壁が、だんだん押し寄せてくるような感覚。


 このままいけば、アクトはリオに殺されてしまうだろう。


「…」


 そこまで考えて、ルフは疑問に思った。


 確かに彼らはルフの戦場で戦っているが、肝心なルフのターゲットは存在しない。

 このままここにとどまる必要はあるのだろうか。


 彼らの目的が互いを潰し合うことだとすれば、ルフはここを放棄して仲間の加勢に行くべきだ。


「とんだ無駄足になってしまったよ」


 自嘲気味に笑うと、ルフはその場を去っていった。



 ※



「ヴァルタイユは理由教えてくれなかったんだけどさ、お前を放置しておくと何が危険なんだ?」


「…知るか」


 壁に寄りかかるアクトに、リオは呑気な声で聞いた。


「俺は『塔』のエドワードの意思を受け継いでるだけだ。おそらく過去にエドワードと何かあったんだろ」


「はは、そうか。まあいいや…どちらにせよ俺はあいつの命令を聞くだけだ」


 自分で聞いたにも関わらず、リオはどうでも良さそうに口笛を吹いている。

 はっきりとした回答が欲しかったのだろう。


「なあ、ヴァルタイユは何で世界を滅ぼそうとしてるんだ?」


 ふと、疑問に思ったことをアクトは口にした。


 ヴァルタイユの行動はどれも謎が多いことばかりだ。

 まだ一度もあったことはないが、至る所に彼の痕跡は残されている。


 どれも意味不明だ。

 殺人、人助け、そして勧誘。


 組織の人間は口を揃えて「理想の世界のため」と豪語するが、肝心なヴァルタイユは何を望むのだろうか。


「あいつが魔王の配下の生まれ変わりってことは知ってるよな?」


「ああ、俺のように、配下の意思を受け継いでるんだろ?」


「違うね、あいつは記憶すらも継いでいる」


 その発言に、アクトは硬直した。


 アクトは配下の日記を読んだ。

 彼の意思を受け継ぎ、ヴァルタイユを討つことにした。


 もしヴァルタイユが記憶を継いでいるならば、『塔』のエドワードがヴァルタイユを討たんとしている理由がわからなくなってしまう。


「あいつの目的は魔王の復活だ。忠誠を誓う魔王様を何が何でも復活させたいって話」


 そう、だとすれば『塔』とヴァルタイユの目的は同じはずなのだ。

 一体アクトは何のために戦っているというのか。


「まあもう死ぬお前には関係ないね。じゃ———あ?何だこれ」


 にんまりと笑って剣を振り下ろすリオの手には、うねる炎が絡みついていた。

 そんな炎を使う人間など1人しかいない。


「僕の街で、私欲による殺人を起こすことは許さない」


 ルフがライターから伸びる炎を操り、リオの腕に巻きつけたのだ。


「テメエ…どっか行ったんじゃないのかよ」


「さっきは僕もどうかしていた。そこに転がっている脱獄犯達は死ぬべくして死んだ。その少年を見殺しにする理由などない。少年、立てるかい?」


 思わぬ手が伸びたことに、アクトは驚いた。


 この男は、アクトを助けてくれたのだ。

 一体どこまで甘く、愚かなのだろう。


「その甘さに助けられる俺も俺だな」


「少年、2人で赤髪を撃退するんだ」


「分かってる。倒せるほど敵は弱くねえ」


 撃退できるほど弱くもないが、やるしかない。

 でなければ2人とも死に、ヴァルタイユに手が届かずに終わってしまう。


「『ジャッジメントフレア』———ッッッ!!!」

「『シャドウライト』———ッッッ!!!」


 先手必勝、2人は同時にリオに向けて技を放った。

 しかしリオは嘲るように笑い、()()()()技を弾いた。


「死ねやあああああああああああッッッ!!!」


 奇声をあげて、リオが突進してくる。

 短めのはずの両刃剣が、赤いオーラで長く見える。


(やっぱり勝てねえか…!)


 リオの強さは異次元だ。

 それこそ、アクトが生まれ育ったクアランドの魔導兵団長でも、たまに遠征に来ていたウエラルド王国騎士団長も、勝つことはできない。


 まさに天性の力だ。


「負けてたまるかよおおおおおおおッッッ!!!」


 それでも、アクトは剣を構えた。

 隣にいるルフがまだ炎を構えていたから。


 そして直後、目の前でリオの剣が静止した。


「!?」


 その場の全員が硬直し、リオの背後に現れた影を見た。


「リオ、もういいよ。目的は果たされたし、アクトも十分焚き付けることが出来た」


 口に嗤いを浮かべた青年は、ゆっくりとルフに歩み寄った。


「ルフ・ウィアン・マンセル、君にとって悪い知らせだ」


「…?」


「セルヴィアが博物館に、ローダが廃マンションに向かっている。君はどちらに加勢するんだい?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ