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鈍色の封剣士  作者: 沙菩天介
第五章 審判の偽炎
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第四話 戦闘部

 ディルセイ・テロードが殺し屋の時に誇っていた技、それは『ほぼ百発百中に近い狙撃精度』だ。

 あらゆる依頼で、ディルセイはほぼ全ての標的の脳を撃ち抜いてきた。


 しかし1人だけ撃ち抜けなかった者がいる。ほぼと表現しているのはそのためだ。


「だいぶ優秀な人材が入ってきたな。こいつ1人に任せておけばどの脱獄犯もすぐに仕留められそうだ」


 試験の結果のデータを見て、グレイは満足げに頷いた。


「改めて戦闘部へようこそ、俺はグレイ・ニヴァークだ」


「知ってるだろうが俺はディルセイ・テロード、こちらこそよろしく頼むぜ」


 やはりこれから人間関係を築いていく相手だ、正式に挨拶はしておきたい。

 ちなみにルフとはもうすでに挨拶は済ませている。


「そういえば、この仕事って日課はどんな感じなんだ?捜査部ほど仕事はねえんだろ?」


 ずっと疑問に思っていたことだ。


 大体の事件が捜査部で片付いてしまうのならば、戦闘部の仕事は少ないはず。

 それ以外の間、大して頭脳を求められてもいない戦闘部は何をしているのだろう。


「どんな感じといっても、基本は自由時間だよ」


「え、嘘だろ、嘘ついてんだろ」


「いいや、嘘じゃない。実際僕が喫茶店にいたのを見たはずだ」


 あれは昼休憩か何かだと思っていたのだが、ひょっとして毎日あんな風にぶらぶらしているのだろうか。


「さっき上層部からの連絡は、このスピーカーから流れて来ただろ?実は俺たちの携帯している通信機にもその報告が届くようになっている。だから街のどこにいようがすぐに任務に向かえる」


 グレイの話に、ディルセイは納得したように手を打った。


 確かに事件が起こる場所は不規則なので、本部にいようが外を歩いていようが現場への距離はあまり変わらない。だから別に遊んでいても問題ないのだろう。


 思えば殺し屋の時も似たような生活をしていた。

 生活習慣が変わらないのは非常にありがたい。


「ちなみに夜はどうするんだ?流石に全員帰るわけにはいかねえだろ」


「いつでも出動できる状態にしていれば、家に帰ってもここで寝ても良し…そんな感じだ」


「なるほど、じゃあいつでも全員出動できるわけだ」


 自由ではあるが、いつ任務があるかわからない。

 時間が必要な趣味は制限されそうだ。


「もちろんどの任務も1人で行うよ。何かあれば仲間に連絡って形にしているけどね」


 ルフはコーヒーを飲みながら言った。

 トアペトラにしかない飲み物なのだが、残念ながらディルセイはどうしても飲めない。

 20歳になっても苦いものの良さは分からなかった。


 どの任務も1人で行うというのは良い方法だ。

 そうすれば別の事件があったとしても対応できる。

 人数が少ないなりに工夫はしているらしい。


「じゃあ試験も終わったし、俺はまたゲーセンに行くとするよ」


 そういうとグレイはローブを翻し、本部から出て行った。


「なあ、あいつ小学生だろ?なんで働いてんだよ」


「ディルセイ、彼は25歳だよ」


 ルフの言葉に、ディルセイは口をあんぐりと開けた。


 グレイの身長は150cmに満たないほどだった。

 だが確かに声変わりはしていた。


 中にはあんな成人もいるのか。また一つ賢くなってしまった。


「それはそうとディルセイ、僕たちもどこかへ行かないかい?」


「ん?俺とデートがしたいのか?」


 冗談めかしてそう言うと、ルフは顔を顰めた。


 彼は昔からこういう冗談があまり好きではない。

 冗談で同性愛をほのめかしたり、下ネタを言い合うのを、次男とルフは気に入っていなかった。


 まあそんな2人の反応を皆で楽しんだりしたのだが。


「僕だったから良いけど、兄さんだったら本気でキレていたよ」


「馬鹿、だから面白いんだろ」


 子供らしさの消えないディルセイに苦笑し、ルフは本部から出て行った。


 思えば彼と出かけるなんて久しぶりだ。

 少しだけワクワクしながら、ディルセイはルフの後に続いた。



 ※



「そういえば、君の狙撃技術は誰に鍛えてもらったんだい?」


「あのさ、遊びに来てまでそういう話する?」


 ボウリングボールを投げようとしたディルセイは、ルフの質問に呆れ顔をした。

 もっと楽しい話があるだろうに、何故あえて戦闘の話題が出て来るのだろう。


「君は高校を卒業してからずっと殺し屋をやっていたんだろう?面白いエピソードがあるとは思えないな」


「お前さん、俺は四六時中人殺してたわけじゃねんだぞ」


「そんなことは分かっている。ただ、殺し屋がそんな面白いエピソードを持っているとは思えないって言ったのさ」


 少し棘のある言い方に、ディルセイは顔を顰めた。

 そして投げたボールがガーターレーンに入ってしまい、さらに顔を顰めた。


「クソ、悪かったな、泥仕事に足突っ込んじまってよ」


「いいや構わない。僕もこんな仕事だし、何人も殺しているからね。ただ…」


 戻ってきたディルセイからボールを受け取り、ルフは言った。


「君が殺し屋になった理由、それが聞きたかったのさ」


 一瞬足をとめたディルセイの側を通り過ぎ、ルフはストライクを決めて見せた。

 それが最後の一球だ。今回はルフの勝利でゲームが終了した。


「そういう作戦かよ」


「はは、確かに今のは良い作戦だね。それじゃあ帰ろうか」


 そう言いながら、ルフはテキパキとボールを片付け、自分とディルセイのシューズを持って受付に行った。

 ディルセイが後に続くと、もうすでに会計は終わっていた。


「ボーリング代は奢るから、回転寿司でも奢ってくれないかい?」


「ラーメンな」


 口をへの字に曲げるディルセイの言葉に、ルフは苦笑した。


 ルフは奢ってもらうときは遠慮がない。回転寿司に行けば躊躇なく高いデザートを頼むことだろう。

 流石にそんな交渉が通るはずはあるまい。


 《聞こえるか2人とも》


「うおっ!」

「おや」


 突然なった通信機にディルセイは飛び跳ね、ルフは足を止めた。

 グレイの声だ。何か任務が入ってきたのだろう。


 《お察しの通り事件だ。そこの近くの銀行で男4人による強盗があった》


「強盗…まだ絶滅していなかったのかい?」


 《頭のネジが外れたやつなんていつの時代にもいるもんだ。とにかく2人いるんなら2人で向かってくれて構わない。だが万が一途中で別の事件があったら、どっちかが向かって欲しい》


「了解だ」


 通信機を切ると、早速2人は銀行に向かった。

《キャラクター紹介》


○グレイ・ニヴァーク

戦闘部に所属している男性。

外見は小学生だが、中身は立派な25歳。

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